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ETERNAL COUNTRY - 君達の求めたモノ -  作者: サマンサ田中
死に染まる世界の人形劇 編
3/8

死呪の悪夢と禁断魔法

 『そなたが、死神王を討ち取ったという


かの魔法剣士・マイン スランバート殿とな?』


モヒカン(ギラン)から紹介されたマインの姿を見て 少し驚いてみせるのは


アレンキア国・大臣「ウィク レオン」


大臣という要職にありながら半年前の決戦では


アレンキア国軍の総指揮を任せられる程のキレ者であり


その実力は、国王も認める アレンキアにおいて王族に次ぐ権力を持つ男。



 『あんたらが取るはずだった死神王の首・・・


オレみたいな若造が取ったなんて信じられねぇってかい?』



 『いやいや・・・そうではないのだ ただ・・・』そう言いかけたところで


大臣は、言葉をいったん飲み込んで


 『いや・・・続きは 王の御前で致しましょう。』と


そのまま王の間へと マインを伴い 足早に歩を進めた。



        ※        ※        ※



 『王様、マイン殿をお連れ致しました』


 『うむ』


 装飾が、ふんだんに施された赤いジャケット


キラキラの王冠に 偉そうにしか見えない白いヒゲ


玉座に 腰掛けているにも関わらず


右手には アレンキア王家のものと思われるエムブレムがデザインされた錫杖(しゃくじょう)


どこからどう見ても文句の付けようの無い「王様」の姿が そこにはあった。



 『さて・・・何から話したら良いものかのぅ・・・』


 白いヒゲを ゆっくりと上から下へ数度さすりながら


アレンキア王は 芝居臭さを、そのまま残した口調で言った。


そんな王に進言するのは 大臣のウィク レオン


すぐさま王の耳元で ボソボソ何かを呟いたかと思うと


 『マイン殿 実は、今回 我が国へお招きしている方々は


貴殿以外にも、5名存在するのです』と打ち明けた。



 『5人?』



 『そう、貴殿を含む、死神封じの立役者6名を招いた次第で・・・。』


そう言いつつ、大臣は 名簿のようなものを懐から出し


マイン以外のメンバーの紹介をはじめようとした、が それよりも先に


 『立役者っつったってアレだろ?あそこ(神封じの大穴)には


世界中から腕っぷしの強い奴らが 大集結してただろ?


それによ、バルザー以外にも


あの決戦では、相当ゴツいモンスターも うじゃうじゃ いたはずだ


そういう奴らを討伐してた連中だって 立役者じゃねぇの?』と


招待されたメンバーを確認するよりも前に マインは、大臣に噛み付いた。


 しかし、そんなマインの言葉を


 『重き理由が御座います。まずは耳を傾けては頂けませんかな?』と


あっさり一蹴し 大臣は、名簿を読み上げはじめた。


 


 『死神王の鎌を奪い取り 穴の底へと捨て去った「ディオン スレイダー」


死神王の瞳を ボウガンで射抜ぬきし弓使い「シャロン ティスレーン」


穴から出ようとする死神王を その剛力で叩き落した「ルーメル バロン」


情報屋という特性を生かし、現地の情報伝達に 一役買った「ジル フラッド」


かの大穴に、神封じの結界を張りし破邪魔法の巫女「フィルビス フレアジーナ」


そして


死神王に、トドメの一撃となる魔法剣を見舞った貴殿「マイン スランバート」


以上、6名を招待致しましたが・・・


腑に落ちませんかな、マイン殿?』名簿を静かに閉じながらの大臣からの問いに


 『腑に落ちるとか 落ちねー、とかじゃないんだよ


あの戦いは あそこにいたメンバー全員


誰も欠かす事ができねぇくらいに 各自やるべき事をこなしてたはずだ


なのによ・・・もっかい聞くぜ?なんでオレ達だけしか


招待されなかったんだ?』とマインは返す。


そのやり取りに『ふむ・・・』と眉間にシワを寄せ


アレンキア王が重い表情を覗かせる、が


大臣がズイと一歩前に、(たい)を寄せることでマインの視界から遮断し


 『簡潔に言わせてもらえるとすれば・・・・


そなたを含む6名・・・いや7名には


死の呪いが掛けられておるやも知れぬからですな』と


その場を凍てつかせる一言で以って 大臣が返答した。



 『死の呪い・・・?』


 突然 聞かされた 予想もしていなかった返答に


動揺し聞き返すマイン。そんな彼に大臣は、さらに言葉を続ける。



 『死神王バルザー・・・あやつが不死身である事


幾度 滅ぼそうとも復活してしまう事は 知っていよう?』



 『・・・ああ。』



 『死神王(あやつ)は、およそ百年に一度、復活し


世界を死で埋め尽くそうと暴れ出す・・・が、しかし


その都度 英雄たちの手により、封印、もしくは討伐され


死神王(あやつ)の野望は阻止されてきたわけですな。』



 『でも、倒しても百年かそこらで復活するし


封印を試しても死神王(アイツ)の魔力がデカ過ぎて


そんなに長く閉じ込めておけないんだよな?』



 『張った結界の強度や死神王の状態にもよるのでしょうが


文献によると封印期間の最長記録は、12年の様ですな。』



 『だから今回は、きっちりトドメを刺し


さらに穴の入り口に結界を張ったんだろ?』



 『今、考えられる最良で最長の時間を、確保できる手段


我々が辿り着いた 現在考え得る最高の方法であったのは偽りなき事実


これはアレンキアのみならず他国の代表者様方とも


共同で練り上げられた作戦にして 最大の成功例を歴史に示した偉業と


胸を張って良いものであったと確信しております』



 そう言い放った後、大臣はマインの表情をジっと見定め


そのまま小さく頷くと 玉座の隅へと身を移しつつ


アレンキア王に 一瞥(いちべつ)を以って場を委ねた。



 『この世界の(ことわり)についてのおさらいじゃ』


手にした錫杖(しゃくじょう)を大臣に預け、アレンキア王が語り出す。



  『マイン(おぬし)も知っていよう、この世界に在る「魔法」


その力の根源が「神の力」であるということを・・・


風の里・ライネイルに在りし風の神


その力の御許(みもと)で育ったことで


マイン(おぬし)には,風の魔法が備わっておろう?


我らは 神と共に生きることで その力を授かっておるわけじゃが・・・


それは どうやらあやつ(死神王)からも例外ではないらしいのじゃ』



 『死神王の力をベースにした魔法もあるってことか?』



 『あるいは・・・まだ存在するやも知れんのぅ


しかしな、知るべきは そこではないのじゃ


さっき大臣(レオン)が申した通り おぬしら数名は


「死の呪い」というカタチで 死神王の力の影響を受けた可能性がある』



 『それはわかったよ、で、死の呪いってなんなんだ?


オレは死んでなんていねーぜ?』少し苛立ちを覗かせつつマインが言った。



 そんなマインに アレンキア王は


一呼吸置いた後 目を閉じ静かに続きを語る。



 『・・・古の時代、死神王の持つ魔力を宿した者たちがいたそうじゃ


彼らは死神王から授かった力で「死神魔法」と呼ばれる禁忌の術を操り


自分たちに仇成(あだな)す者を 呪い殺したという・・・


死神魔法・・・その殺戮(さつりく)のためだけに存在した魔法は


あまりに恐ろしい力を秘めておったというが


その魔法を扱う者は 総じて短命であったという。


 ・・・死の呪い、死神王の力の影響を受けた者に降りかかる災いの名を


古の時代の民は そう呼んで恐れたという。


そして、死の連鎖の元凶となる死神王を討伐し


さらに「死神魔法」の存在そのものを歴史の闇へと葬り去ったのだそうじゃ』



 ここまでアレンキ王が 話し終えたところで


謁見の間に、新たに 科学者風の男が入ってきた


 そして男は アレンキア王と大臣に 軽い挨拶を済ませた後



 『私は アレンキア国 科学技術室 室長「ハデス ドルガーサ」


以後よろしく。』とマインに握手を求めつつ自己紹介した。


そんな二人を取り持つかの様に 大臣が間に割って入り話はじめる



 『この半年 我々は 世界から消えることの無い


死神王の残り香・・・微かな死の魔力について調査しておったのです


その調査の過程で この者、ドルガーサ室長が探知機を開発し


結果、先に触れた方々より 死の魔力・・・


すなわち死神王の力が発生しておることを突き止めた次第なのですよ』



 そこまで大臣が 手短に説明し スっと一歩下がり


科学者風の男・・・ハデス ドルガーサに 目で合図を送り


今後のプランについての説明がはじまった。



  『死の呪い・・・平たく言えば 死神王の力に感染した状態・・・


放っておけば まず命はないでしょうが


貴殿を含む6名をお呼びした以上 まずは希望がある事 保障しましょう。 


とはいえ このミッションは 制限時間がどれほど残されているのか


今ひとつ掴めないミッションでもある為


速やかな行動が要求されます旨 ご理解頂きたい。』



 『ああ・・・わかってる で、どうすりゃいいんだ?』



 『この世から 死神王の残り香 その全てを消し去ってしまうのです』



 『ん? どういうことだ?』



 『我々の開発した探知機によれば


現在 死神王の魔力を発しているのは (くだん)の6名のみ


神封じの大穴 や 他の戦闘参加者からは 魔力の発生を感知しませんでした


つまり(くだん)の6名・・・いや、私を含めた7名全員から


魔力を抜き取る事さえできれば 死の呪いから開放されるのです』



 『抜き取るって・・・・そんな事できるのか?』



 『もちろん。


ただし、個々に抜き取るのではなく


全員から一括で抜き取る必要がありますがね』



『なぜ?』



 『死の呪いに犯された者は 死の魔力に過敏に反応するらしく


ごく微量しか発していないはずの死の魔力からでさえ


再感染してしまうのです・・・』



 『そうなのか・・・ま、でも全員揃うのは、もう時間の問題なんだよな?


あんたらが召集かけてんだろ?』



 『貴殿と私をはじめ5名は、連絡が取れているのですが


フィルビス様とルーメル様、この2名の消息が途絶えてしまっており


現在、既に連絡が取れているディオン様 シャロン様 ジル様の協力も仰ぎ


探索してはおるものの、未だ発見には至っていない、という現状で・・・』



 少しバツが悪そうに報告するドルガーサに


マインは『そっか わかった』と親指を立てて応じ


アレンキア王に向き直って


 『話・・・これで終わりでいいよな?もう行くぜ?』と謁見の終了を促した。



 『行くって・・・何処にかね?』ドルガーサが咄嗟に質問する。



 『わかんねーよ・・・連絡が取れねぇ二人探しに行くんだからよ』



 ドルガーサの質問に、振り向きもせず後姿のまま応答し 


マインは 謁見の間を後にした。



 マインがいなくなった室内


()かせるまでもなかったのぅ』とアレンキア王。


その言葉に『それでも尚 時間には限りがございます


我々も事を急がねばなりますまい』と大臣。



 こうして いつ果てるとも知れない 命のタイムリミットを控え


マイン達の物語は 幕を上げるのだった。

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