蒼髪の剣士と眼帯モヒカンのエリート兵士
神封じの大穴での決戦から半年後・・・
王城へ続く、その広大な平原を、蒼髪の剣士が行く。
死神王バルザーに、トドメの一撃を下した 彼の戦果は
あまりに大きく、各国首脳も既知するところとなっていた。
それは世界の中心に位置する大国「アレンキア」
かの国の王が、直々に勅書で以って
彼を王城へ招待している事からも明らかだった。
※ ※ ※
『面倒事は ゴメンだぜ?』
アレンキア王の勅書を持って現れた兵士に
無愛想を絵に描いた様な、しかめっ面で、挑むのは
蒼髪の剣士こと「マイン スランバート」
細過ぎはしないまでも
どちらかと言えば華奢な様にも見える風貌ながら
その実、戦斧紛いの大剣を軽々と使いこなし
オマケに逃げ足も相当なもので
現に、アレンキア王の使いで遣された彼を
既に4度、撒いている実績もある。
そんな彼に、めげずに5度アタックし
ようやく勅書を手渡せた事で 安堵の笑みを零すのは
アレンキア王直下の兵団員「ギラン ウォーカー」
とても一国の王直下の兵士とは思えない
モヒカン 眼帯 装備が斧という
いわゆる「デフォルトのザコキャラ」を絵に描いた様な大男。
『・・・・で、どうなんの?オレ、行かなきゃダメなの?』
王の勅書に一通り目を通し
どうやらアレンキア王が、自分を城に呼んでいる、という事を理解し
ますます愛想の無い表情になるマインに
ギランは コクリと頷いて応えたかと思うと
すぐさま後ろを振り向き『おーい』と何かを呼びつけた。
「ガラララララ・・・・・」
ギランの合図で 登場したのは
空を飛ぶ馬車・・・としか表現のできない乗り物だった。
『アレンキア王秘蔵の客船 空馬車と申します』
世界でも珍しい アレンキア地方にしか生息していないという
天高く舞い上がる魔法に長けた馬「ペガサス」
その力を利用した乗り物が この「空馬車」だという。
初めて見る その荘厳でいて 興味を惹かれる空馬車の姿に
マインの気持ちは揺らぐ・・・
そう彼は 中2臭いものが大好きな
「中ニ病を患いし者」だったのであった・・・・
※ ※ ※
『すっげーのな! すっげーのなっ!!』
天を行く空馬車から身を乗り出し 大興奮のマイン。
そんな彼の様子を見つつ
ペガサスの手綱を案外器用に操るモヒカン男。
風の里と呼ばれ、風とともに生きる民族として知られる
風の里ライネイル出身のマインであっても
空を飛ぶ、ということは 初めての経験だった
いや、普通に考えれば よほどの大魔法使いでもなければ
空を飛ぶなんてできるはずがない。
それは魔法という概念が存在する ファンタジー世界でも
そういうモノだったりする。
・・・ともかく空を飛ぶということは 凄い事であり
そんな凄い事を「自分」は 体験している。
空馬車に乗り はしゃぐ剣士と天馬の手綱を握りウットリするモヒカン
二人の思考が、そんなカタチで リンクしつつある事を
当の本人たちは気付いていないまま
空馬車は「アレンキア平原」を飛び越えて
目的地「アレンキア城」上空に到着するのだった。