画面舞踏会
『本日はA家主催の画面舞踏会に参加頂き誠に~~』
主催の紳士はビシッとスーツを身に纏い、キリリとした表情でWebカメラの前に立つ。
スーツの下は青と白の立縞パンツ。すね毛ぼーぼーに裸足ではちょいと寒いのだが支障ない。
「今日の日を私は楽しみにしていましたわ」
「あら。みなさんお若いですこと」
参加者の女たちはこぞって若い頃の動画を再生している。
ぼんきゅーぼん。
ボンキュッボンじゃない。
ボンキューキューボンキューキューでバリバリにCG加工済みである。お前ら誰だ。
男たちもまた色とりどりの貸衣装をここぞとばかりに身にまとい、今日の舞踏会に臨む。
画面の前の淑女に手を伸ばして三畳間の後ろに城のスクリーン。
こけおどしにもほどがある。
淑女達も負けておらず、ゴキブリがラーメンの汁を吸っている汚部屋の真ん中だけを気合入れて掃除してピカピカにしている。
「今宵は楽しみましょう。姫君」
「ええ。見知らぬ殿方」
画面の上では豪華なワインが開かれ、乾杯の音頭が取られる。
主催者の持つ盃の中身は赤玉スイートワインだが人によっては食紅だったりファンタだったり。
というか赤玉だって大正浪漫な世界なら高級品だが今では普通の嗜好品だ。
豪華な食事の動画を見ながらカップラーメンを啜り、肉の無い焼肉のたれで炒めたモヤシを頬張る。
「キミともっと踊っていたい」
優雅に上半身は動いている男の片手は何故か股間の方向に向かっているのだがナニを、もとい何をしているのか問うのは無粋だ。
「わたくしも。今日が永遠ならいいのに」
明日までに口座に振り込まないとカードをとめられてしまう。
「家に居ながらにして舞踏会。実に素敵な時代だな」
「ですね」
「キミのような素敵な女性とこうして踊っていられるなんて夢のようだ」
「私も」
こちら。実は寝転がりながら尻を掻いている。女も女だ。
月が各々の家を照らす夜、
画面舞踏会はますます静かに、そして熱く。
画面に現実を隠して盛り上がっていくのだ。




