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短編集。『五分間の奇跡』  作者: 鴉野 兄貴


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ひっつきむし

 ひっつきむし。


 私の周辺でそのように呼ばれていたそれは成長してインターネットを使って調べることができるようになった今、オナモミ属に所属する植物であると解る。

 しかし当時の子供だった私たちにはインターネットは周囲に無かったし、読書好きが高じて無駄に色々読んでいる私ですら知らないことが多かった。

『虫と言うからには動くに違いない』

 それをオナモミと知らない私はいつか動くと信じ、じっとそのとげだらけの果実を眺めていた。


 オナモミに限らず粘着質の表面でくっつくもの。

 オナモミのようにかぎ状の棘を持ってセーターにくっつくモノ。

 Wikipediaを見てみると『くっつきむし』には可也の種類があるようだ。私の周辺では現在ではオナモミと解る植物がそう呼ばれていたが、普通に草原を遊び歩けばこういうものがいっぱいセーターについていた。


 分類するとこうなる。Wikipediaの転載だが。

 かぎを持つのがオナモミ(キク科)、ヤブジラミ(セリ科)キンミズヒキ(バラ科)、ハエドクソウ、クリノイガ(イネ科)

 結構多い。あまり記憶にないが指先を痛めたものは恐らくクリノイガだろう。


 細かい鉤が密生するものもある。

 種子の端や表面にごく小さな鉤が並んでいてマジックテープのように張りつく。マメの仲間やアカネの仲間にあるらしい。



 他にも逆さ棘があったり、すぐに折れまがって寝ている針があったり、粘液が出る代物まであるそうで生命とは神秘の塊だ。特に粘液と繊毛の複合でくっつくタイプは母が凄く迷惑そうにしていたのを覚えている。

 子供の時分にはこれらを投げ合ったり、バッジと称して誇らしげにセーターに飾ったり、苛めに使ったり反撃に使ったりと大活躍していた。

 ボロボロになり、すっかり茶色くなったひっつきむしは子供の机に忘れ去られたりした。


 今思えば道を歩くだけで『ひっつきむし』がつく事は無い。山道を歩いていてもくっつくことは稀だ。大抵人の手が入っている。

 引っかかってくっついて、命を運んで、子供に捕まってといろいろ大変なあの『虫』は今頃何処を旅しているのだろうか。


 たまには私のセーターにやってきて。

 ふとその手間を思い出し、やっぱり要らないと思いなおす。


 大人になった私にはひっつきむしで遊べる寛容さはないようだ。

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