プレゼント
弟は真っ白い卵焼きを作る。
正確にはちゃんと黄色いのだが彼が作ると焦げ目の無い卵焼きばかり出てくる。ある意味几帳面なのかも知れない。いや、真っ黒焦げより断然いいのだが。
当然、汁気の多いしっとりとした卵焼きに仕上がるわけだが、素早い手つきでフライ返しを操る彼は子供が新しい玩具を手に入れたかのような真剣な表情である。手首の返しで作らないのかと問うたところそれはオムレツだと言われた。区別がつかない。
「卵焼きはこうクルクル回して作るんだよ。オムレツと違う」
解らん。
「あにきは料理全然ダメだな」
「チャーハンぐらいなら作れる」
弟は盛大なため息をついた。
「あにきは取り敢えずホワイトシチューでも作っておけ。ああ。ホワイトソースはマーガリンじゃなくてバターを使えよ」
「了解」
卵焼きもチャーハンも弟の及第点を貰えない俺だが、それよりずっと難しいホワイトソースの作り方は得意だ。親父に言わせれば俺たちの得意料理は極めて偏っているらしい。その親父はパスタを茹でている。
俺たちは母親が帰ってくるまでに各々の得意料理を作る。母の誕生日ではあるがこれといったプレゼントは無い。
「しまった! 風呂が沸騰している!」
「親父何してやがる?!」
しかし母に我々が贈る気持ちはとても暖かいモノでありたい。
「どれだけ散らかしたら気が済むの!? みんな揃って?! お父さんもお父さんよ!」
正座して説教を聞いている俺たちに母のため息。
「もう。良いわよ。ありがとう」
母の頬はちょっとだけ赤かった。




