前へ目次 次へ 73/390 編み針(200文字) 指先を動かし、小さな輪を繋げていく。つるりと滑る編み針に苦笑い。 ストーブにかけた薬缶が白い湯気を放ち私の鼻を。喉を潤す。 冷たい冬の空気は私の指先を時として狂わせる。手を擦って息を掌に。 肩掛けを自らにかけなおし窓の外を眺める。 凍った窓越しに浮かぶ月。あの子の微笑みが見えるよう。 さあできた。指先を優しく包む毛糸の手袋。 おそろいのセーターで出かけよう。 冷たい風を切って二人で手を繋ぎ、一杯お話をしようね。