魔法少女つるつるッ! ~ アイドルは恋愛禁止ッ?! ~
魔法少女は恋愛の責任を取ってハゲになった。
今、彼女の額が光り、新たな奇跡の伝説が始まるッ!
……かもしれない。俺は猫だから寝ておく。
『童貞は三十路を過ぎると魔法が使える』
女が寄り付かない精神バリヤー。子供が怯えるロリコン結界などなど。そんな話はまぁどうでもよい。
昨今世間を騒がしている魔法少女たちに比べれば。
魔法少女。
さまざまな魔法を駆使し、人々の幸せを手伝う夢の存在。
恋愛はしない。
人々の願いを適えることが喜びだから。
困難に屈しない。
オタどもの握手だってニコニコだ。
彼女たちはミニスカートで掃除機や円盤状のロボット掃除機や箒などにまたがって空を舞い、今日も世界中を駆け巡っている。人々の笑顔のために。
「で。なんでこうなるのだろう」
俺、彼女たちのプロデューサー。もとい使い魔だ。
俺は三十歳で近所の小学生の笑顔にマジ惚れし、彼女に告白しようとしてトラックに轢かれた。
死んだと思ったら何故か生きていた。しかも猫になっていた。なぜに猫。
「はい。プロデューサーさん。猫じゃらしなのなのです」
俺の目の前でふよふよする物体。
ふよふよ。ふよふよ。
俺はすばやく両手を繰り出す。
その動きより早くねこじゃらしは飛び去った。
ぐぬぬ。
「うはは。動きが未熟なのなのです」
ヤツはヒョイヒョイと猫じゃらしを動かす。
耳を立て、背の毛を逆立てて威嚇する私を彼女はニコニコと笑いながら受け流した。
「チャージチャージ♪」
嫌だ。もう嫌だッ 俺は幼女が好きなんだッ ババアには興味がないっ?!
「失礼な。ぼくは十二だ」
「変身したら十八だろうがッ?!」
憤慨する少女に意地を通すぼく。
解説しよう。
チャージ。
なんというか、これは人間体になった私が全裸で彼女に抱きつく事で発動する魔法である。
「恋愛禁止だぞっ?! ファンがみたらどう思うと思うんだッ?」
「重複表現なのなのです」
あっという間に猫の身体は組み伏せられて、六歳くらいのショタ少年の人間体にされてしまう。
「もふもふ~♪ もっふもふ~~!」
羨ましいと思うヤツは表に出ろッ!
つるぺた以外に俺は興味がないッ?!
精神は十二の餓鬼なのに、身体は……からだは……。
むねがっ? ぐあああああああっ?!
バスト八十八センチ砲ッ 否応なく反応ッ?! 地獄だぁああっ?!
ピキーン!
謎の効果音とともに覚醒を果たす小娘。
「ガンメ・センターン!!
エネルギーチャージ完了!」
全国のキモオタエネルギーが集約。
俺の不幸体質から彼女のパワーに流れ落ちる。
ロリコンのッ ロリコンのプライドがッああアあっ?!
「チャージ完了! また任務に向かうであります」
フラフラだ。
精神的にこれは屈辱だ。
精魂つきた俺は猫の姿に戻って倒れこんだ。
魔法少女。
さまざまな魔法を駆使し、人々の幸せを手伝う夢の存在。
恋愛はしない。
人々の願いを適えることが喜びだから。
困難に屈しない。
オタどもの握手だってニコニコだ。
彼女たちはミニスカートで掃除機や円盤状のロボット掃除機や箒にまたがって空を舞い、今日も世界中を駆け巡っている。人々の笑顔のために。
「大変ですッ プロデューサーさんっ?!」
惰眠をむさぼる俺にうるさく話しかけてくる。うるさい。猫は夜行性だ。
「……」
すっと差し出されるカリカリの……キャットフードか。そんなもので釣られるわけがないだろう。愚かなニンゲンめ。
ぱりぽり。ぽりぱり。
「もっといるかね」
「みゅ~(このばか野郎。無理やり食わすな)」
落ち着いた私に彼女は涙を流しながら訴えた。
「たいへんなのなのです。チャージが出来なくなるのですう」
チャージは人々の喜びや良い願いを俺の不幸体質が吸収して、彼女たちに分け与える能力だが。
『魔法少女。ショタ疑惑』
抱き合う人間体の俺と彼女のショット。ああ。やられた。あと、人間体の俺が彼女の胸を持っているショットは児童ポルノに該当する。
「私自身は児童ポルノにならないの?!」
見た目は十八歳の痩せ巨乳だからであろう。
「どうしましょう。このままでは反動で私はおばあちゃんに」
「魔法おばあちゃん。これは流行る」
「無理です」
協議の結果謝罪会見となった。
チャージの秘密を一般に流布するわけには行かない。
彼女はどこぞのアイドルよろしく頭を禿げにして謝罪会見に臨んだ。いや、もうアイドルなどという商売は魔法少女に取って代わられているのだが。
なんせ口パクなしで世界中に届く美しく感動的な歌声を放てるのだ。動画とかナニソレ? である。
しかし、髪は女の、魔法少女の命だ。
それを切るなど、本人のみならずファンたちもまた涙を禁じ得ない試練となった。
魔法が使えなくなった彼女はテレビカメラの前で謝罪を続ける。嗚咽が波のように広がり、会場を包んでいく。
「これからは、これからは心を入れ替えて」
きっと瞳を向けた彼女は叫んだ。
「皆さんの心を輝かせる魔法少女から、自分が輝くハゲになります」
へ?!
彼女は両手を広げ、二本の指を突き出す。翼のように。
「ダブルピースッ! リフトオフッ!」
彼女の尻に新たに装備された飛行メカは銀の輝きと噴煙を上げて空に飛び立った。
二〇三〇年。八月。
この世から戦乱は消滅した。
俺は知った。魔法は尻から出る。
女はもともと奇跡という魔法が使える。
魔法少女。
さまざまな魔法を駆使し、人々の幸せを手伝う夢の存在。
恋愛はしない。
人々の願いを適えることが喜びだから。
困難に屈しない。
オタどもの握手だってニコニコだ。
彼女たちはミニスカートで掃除機や円盤状のロボット掃除機や箒にまたがって空を舞い、今日も世界中を駆け巡っている。人々の笑顔のために。
そして彼女と俺は。
「ほらほら。背伸びたでしょ」
「そうか」
「最近元気ないわね」
「猫は寿命が短い」
ああ。だるい。動けない。
しつこく鼻先でうごめく猫じゃらしも今はうっとおしい。それでも何か話そうとしつこい彼女。
「ねね。私が結婚するって言ったら祝福してくれる?」
「来年まで私が生きていたらな」
彼女はニコリと笑って呟いた。
「私が今から18歳になるから。式を挙げましょう」
彼女の髪はまた伸びていた。俺は大人の身体になっていた。
「お前戸籍上は十六歳だろう」
「魔法で何とかする。アンタは四二歳ね」
おい。
「トラックから身を守ってくれてありがとうね」
その話は秘密のつもりであったのだが。
まぁ。いまさら歳もないか。
私は彼女の手を取り、乾いた人間の唇でくちづけをした。
人間体なら確かにもう少し長生きできそうだ。それはそれで楽しいのかもしれない。




