コンビニde放射能廃棄物引き取りはじめました
いらっしゃいませ。
赤ちゃんのオムツから死後の斎場サービスまで。
当コンビニエンスストアは地域住民の皆様に密着。まごころ込めたサービスを提供します。
3Dホログラム映像のヴォーカロイドは短期ながら絶大な人気を博したアイドル『桃井美玖』をモデルとしたもので、我がコンビニチェーン名物。
彼女一人で送金やら銀行業務やら配送からと電子業務をなんでもこなす。そんな世の中でもコンビニは朝から晩まで24時間対応である。
いらっしゃいませ。こんにちは。
当店にようこそお越しくださいました。
「渋谷君。これを持ってくれないか」
唐突にハゲ。もとい会長が変なことを抜かす。
なにこれ? 箱? なんか密封されているけど。
渋谷です。お久しぶり。
某コンビニチェーン店長兼幹部に昇進しました。
意味不明だよな。俺も意味不明だ。
取敢えず一店舗の店長のまま会社幹部になってしまった。
普通、コンビニにおいて『店長』というのはフランチャイズ契約をして本社が搾取するために存在する。
おっと、『お客様』というべきなのかもしれない。
『コンビニのお客様は消費者にあらず。店長という名前に憧れるおバカさん』
業界ではまことしやかにささやかれる話であり。
そんなことはさておき、ホログラム映像の美少女、美玖がなんかあわふたしている。
こいつプログラムの癖に情緒不安定だよなぁ。どこかバグでもあるのかな。
「シブヤサン! ダメ! ダメ! ダメ――!?」
「で。ハゲ。もとい会長」
「なんだね」
会長は相変わらず売り物のケーキを手に、コーヒーサーバーからコーヒーを無断で抽出しており。
ちなみにこの店だけ会長用の超高級豆である。
コーヒー好きには地味に名物である。
「なんすかこの箱」
「イエローケーキ」
ふうん。でも密閉されていて全然ひらかな……。
「シブヤサーン! ダメ―?!」
「美玖。煩いぞ」
黄色い箱をつつく俺。平然とケーキを食うハゲ。
「ソレ!!! シブヤサンキケン!!! 放射線ノいえろーけーきダヨ!!」
がぶ。珈琲を手にそれを食おうと無駄な努力を続けていた俺はその『ケーキ』を会長の禿に投げつけたが罪はない。
「禿ろ! ハゲ! 剥げて死ね!!」
「まぁまぁ渋谷君。それは安全だから」
本気で殴りあう俺と会長。
そして3D映像ゆえ手も足も出せない美玖。
「ヤメテ!! ヤメテ!! ふたりともヤメテ!!」
やがて美玖は強硬手段に出た。
ぷっしゃーー。
どこぞの梨の妖精じゃない。
スプリンクラーと消火装置が起動したのだ。
俺と会長は泣きながら掃除をする羽目になった。
コンピュータが一切人間を手伝わない事態では人力は極めて有効である。
「で、どういうつもりですかハゲ」
「うむ。何処から話せばいいかの」
2015年。
斎場不足に悩む自治体を救うべく駅前コンビニ斎場サービスを実施したわが社は。
「放射能廃棄物引き取り業務を代行することにした」
「死ねッ?!」
首を絞める俺。平然と視線を逸らすハゲ。
「安全です」
「死ね!!!!」
「シブヤサンやめて!」
「人類は地球上に存在するわずかな炭素分子の化合物を求めて相争う生き物だ」
その数地球上でわずか0.08%。
それは食料にも燃料にも嗜好品にもなる。
その元素的特徴によりプラスチックにも繊維にも素材にもなる。
それに依存しないエネルギー源が原子力であると説明するハゲ。
「しかし、近い将来。炭素とリンの欠乏、および水不足は必ず来る」
よくわからんが、昔窒素不足で人類に食糧危機が起きると言われたとき、窒素をアンモニアとして抽出して肥料や火薬を作る技術を確立したとかなんとか説明する会長。
「そのため、資源のない我が国は国策として原子力を推進してきたのだが」
「あ、はいはい。東日本大震災でほとんど稼働していませんね」
「渋谷君」
「はい」
「一日八時間しか電気を使えない人生か、二十四時間原子力発電から抽出した電気かを選べと言われたらなんと答える」
「原子力」
まぁ、美玖のエネルギー源はほとんど天井のソーラーパネルだが正直天気次第である。
「では、核のゴミは誰が引き取る」
「どっかの田舎」
「君は正しい」
「どうも」
「というわけで。わが社は核物質を完全に安全な状態で保存保管移送する技術を開発した」
「ちょ?!」
相変わらずの斜め上の超技術である。
「なに。普段ご遺体をもっともフレッシュかつ安全機密密閉で移送しているのだ。今更核物質などで驚くことでもないだろう渋谷君!」
「驚くわ?!」
なにその超技術?!
意味わかんない?!
「駅前で核物質引き取りをコンビニで行う。社会における利便性が向上した。そう思わないか渋谷君」
「思いません?!」
「地方負担を首都圏で分散できるのだ。ごみはゴミ箱へ。コンビニの店長ならいつも思うことであろう?」
「そ、そうすね」
ろ、論破されてしまった。
確かに阿呆はゴミ箱があってもゴミ箱にゴミを捨てないが。だからって核物質?! それも最終処分?!!!
会長曰く、人間は金だけで動かない。
生活が出来なければ大義名分は空しい虚構だ。
両方あってこそであり、利潤を追求する企業が率先して事業として成功させなくば世の中はよくならないのだと。
「だいたいだな。理想ばかりのネトウヨの皆さんには悪いが、左翼の集会だってちゃんとゴミはゴミ箱に捨てるのだ」
「ですな」
「核エネルギーを支持して自家発電に励むならば、ちゃんと自分でごみを引き取ってもらわねばならん」
「いや、ゴミがゴミをって俺もその元ゴミだった」
「と、いうわけで、核エネルギーを推進する政治家を排出する地域の店舗は積極的にこれらを引き取ることにした。まぁアレだ。この間ごみ処分場もやりだしたしこの際大差ないだろう」
「大差ありますよ?! ありすぎです?!」
選挙権というものはだね。
権利であると同時に義務なのだよ。
「会長。そういえば」
「衆議院選挙でトップ当選した私が何か?」
会長はハゲを誇らしげにきらめかせて笑うのであった。
いらっしゃいませ。
赤ちゃんのオムツから死後の斎場サービス。
ワーキングプア救済や汚物処理。
放射能廃棄物処分まで。
当コンビニエンスストアは地域住民の皆様に密着。
まごころ込めたサービスを提供します。
最近のお話ですが読みやすいので挿入しました。




