表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/388

かみ「転生して勇者になれ」 おれ「やだ」

 『夢を追う者』の語り手、チーアは毒キノコをくって死んでしまった。

 おおチーア。しんでしまうとはなさけない。7777文字ぴったり。

 人間。運命ってものがあるとは思う。


 生まれるとほぼ同時に売られたり〆られたり、一生贅沢に暮らせて食いものの心配のない国に産まれたり。

 俺だってまじめに生きていたつもりが何故か冒険者なんざやっているし、ヤクザ稼業のつもりが大英雄になってしまう奴だっているんだろう。

 まぁそんなことはどうでもいい。俺。チーア。


 唐突だが死んだ。ドカ! バキッ! スィーツ(笑)って奴?

 まぁ実際は魔物や野党や人攫いに殴り殺されたわけではなくて、相棒のファルコの奴が止めるのを聞かず、空腹に負けてあやしげなキノコを食ったのが死因だ。まさか医者で狩人の俺がキノコの見立てに失敗するとは情けない。


「まぁそういうこともある」


 上も下もようわからん世界だが、変なオッサンが俺の前に立ったことだけはわかる。俺は肩をすくめる。お迎えらしい。ありがたいことだ。

「あんた死神さんかい? 手間かけて悪いねぇ。じゃ、地獄まで頼むわ」


 そういうとオッサンは不思議そうな顔をした。

「地獄に行きたがる死者は珍しいな」

 まぁ天国にいけるたぁ思ってないし、そもそも俺の知り合いはこぞって地獄行きだろうしなぁ。

 そういって笑うと「豪胆な娘だな」とオッサンは呆れたらしい。

 ああ。俺、一応女だった。


 そんなこと知らないもう一人の知り合い、ロー・アースが俺の服を死者用の服にしようとか余計な気を使わないことを望むね。

 まぁ奴は死んだ俺の意思なんてわかりゃしねぇだろうが。せいぜい俺の裸を見て驚け。

 あはは。は。

 うん。別に、男とずっと思われていたのがアレってワケでは。ない。

 無いぞ。絶対に無いからな。あのインポ野郎には何の感想も無い。


 うん? なんだ。このオッサン。まだいたのか。 

 不思議そうにしているオッサンにちょっと意見してみる。

「天国なんて神様の意思にしか従わない連中の集まりでツマランだろ? そうオモワネ?」

 そういって肩をすくめる俺に笑い出すオッサン。

「ふふふ。面白いな」

 オッサンに気にいられてもなぁ。


 そのおっさんの表情が悪戯っぽく歪んだ。

 地味にいやらしいと思ったのは後から思えば自らの慧眼だった。

「ところで。勇者になってみないか?」

 はい??!

「私は異世界の神だ!」

 頭沸いてるんか。このオッサン。


 異世界ってなんだ?

 精霊界か妖精界か?

 神界とか女子会とか嫌なんだが。


「異世界とは! 君の知っている世界が全部備わった!

 まったく別の世界と思っていい! 神界も現世も地獄も完備しておるぞ?!」

 はぁ。あるものが二つあってもなぁ。ひとつでいいだろ。統一しろ。


「そこの勇者になって魔王を討つ!

 異性にモテモテ。権力握り放題!

 美味いものバクバク食える!」

 はぁ。空腹に負けて毒キノコに手を出した俺に対するあてつけか?


「今ならチート的な戦闘能力、各種魔法や病気に対する防護。

 すばらしい内政能力、さまざまな異世界の各種知識技術。

 ついでに圧倒的なカリスマ性と美貌もつけよう!」


 黒髪黒目の半妖精って理由だけで将来美形間違いなしだの言われて。

 食うと魔力がつくだの犯すと幸運になるだの売れば銀貨一万枚は下らないだろうだの散々な目にあった俺に皮肉言ってるだろ。貴様。

 あと、俺は男にも女にも興味ない。


「断る」

「!!? 今なんと?!」


 俺は理解力の無い自称神とやらに一言一句丁寧に説明してやる。我ながら素晴らしい親切心である。 

「 断 る と い っ た 」

「……」

 せっかく死んだのになんで亡霊のように現世どころか異世界をさまよって知らん奴に喧嘩売らないといけないんだ。

 死んだら死んだで地獄なり天国なりに行ったほうがあの世で待ってると信じているであろう現世で待つ連中も安心だろう。


 しかし、オッサンは俺の言うことを聞かない。

「この圧倒的な力を付与してあげよう! ついでに蘇生以外の三つの願いを叶えてあげよう! これで気が変わったかな?」

 全身からありえない力が沸き立つのを確かに感じたが。

「だ が 断 る 」

「……」

 アホか。死んでから力が沸いてどうする。

 生きているうちに飯食わせろ。マジで。

 女の飯抜きってマジしんどいんだからな。


「まてまて。三つの願いを叶えてやると言っただろう。どんな願いでも異世界で叶うぞ?!」

 

 妄言を吐き続ける神とやらに俺は再び一言一句丁寧に要望を述べてやった。

「死んだらさっさと『こっちの世界の地獄』に送れ」

 斜め下でコレ幸いと向こうの世界の地獄に送られても面白くない。

「おれの死で皆が泣くようなことはないようにしてくれ」

 そういう意味では毒キノコ食って死亡なんて情けないにも程があるが考えてみれば理想的な死に方だ。

 よし。丁度みっつ。あとは任せた。ロー・アース……もといファルコ。


 安心して黄泉路に向かおうとする俺に自称神の声が響いた。「一つ目は却下だ」と。

 ウザッ?! 甦生以外は叶えるっていわなかったか?

「我が世界は勇者を必要としているのだっ!」

 はぁ。

「余所の世界の赤の他人に助けを求めるようなどうしようもない連中、滅んだほうがよかね?」

 冒険者なんざやってて、散々お人よしだのどんな願いでも叶えるだの言われてたが、自力でなんとかする気が無い奴の願いを叶えたって逆に本人か周りが不幸になるのは目に見えている。


「どうしようもない現世を捨てて、異世界に乗り込んで皆を幸せにして王になり、ハーレム作ってウハウハはすばらしいと思わんのか?」


 ……。

 

「ちょっとそこ座れ。莫迦」

「ばッ??! 莫迦だと??! 最高神の私に莫迦だと??」

「ファルコだってイタズラしたら素直に正座して説教うけるわっ!

 お前は最高神の癖に『永遠の子供』以下かっ!!?」


 俺の剣幕にたじろいた自称『異世界の最高神』は正座して座る。よし。評価してやる。

 俺は息を吸うと一気にまくし立てる。

「阿呆にも解るように俺様が丁寧に至極に説明してやろう!」

 以下、俺の説教を記す。長文なので聞き流して構わん。


 1.どうしようもない世界っていうなら努力しろ。


 つか、勉強嫌いで文字も読めない俺が言うのもアレだが。

 俺の場合は余計なものを見ると逆に混乱するし、今のままで充分幸せを掴めると思ってる。

 変に他人の見聞を鵜呑みにするくらいなら自分の目で確認したことで判断したいね。


 もし、俺が周りがアホばかりだとか思ってたらっ!

 そのアホに頭を下げたりモノや金を借りる真似しねぇ。してても文字でもなんでも覚えて勉強するぜ。

 男ってのはなぁ! 周りをアホ呼ばわりしてる内は全部人の所為にするだけの一生惨めな生き方しかできねぇんだよっ!


 2.そんなことも出来ずに『異世界の皆様を救ってあげる救世主様になってやれ。なってやる』だと?


 大迷惑だ。ふざけんな。

 能力を他人から与えられたから可能? そういう発想する奴も引き受ける奴も腐ってる。

 ましてや赤の他人を捕まえて、そういう糞だと決め付けるテメェは何だ?



「最高神ですが」


 オッサンは正座しながらほざくので膝の上を思いっきり踏んでやった。

 今の俺はデコピン一発で岩でも砕くらしいので、ちょっと悪かったかも。


「話の腰折るんじゃねぇ」

「すいませんでした」


 どうみても俺のほうがヤクザだ。

「だいたいどうしようもない現世って何だ? そりゃ酷い目に会わなかったといえば嘘になるが」

 というか酷い目にしか会ってない気もする。

「俺の知り合いは物心つく前に実の親に叩き売られて、そのまま安娼婦で生きてきたぞ?! それでも希望を捨てずに頑張って。今じゃ立派かどうか知らんが神官様だ?!」


 オッサンは正座しながら反論を始めた。唾飛ばすな。ボケ。

「そ、そんな人ばかりじゃないと思います」

「あん?」


「満たされていると却って色々見失うんですよっ! 自分探しとかしたくありません?」


 俺は今度こそ呆れかえった。

 鼻から力が抜けて頬が普通になっていく。両腕が垂れ下がり、代わりにタダでさえツリ目の両目が吊り上がるのが解った。

「ないね」

「……」

 つか、ここにいるテメェが真実だろ。


「レールに縛られた人生って嫌ではありませんか? 別の人生とかあこがれませんか?」


 オッサンはなおも食い下がる。


 冒険者なんざやっているのは不本意だが、その道を全力で走るかダラダラ歩いて横道それて生きるか。

 その道を通して幸せになるよう努力するか、不幸だ不幸だと嘆いて身近の幸せすら見逃し、他人まで不幸に巻き込むかは俺次第だ。


「方向性が無い人間や自称夢追い人その実変化を望まないバカがどれだけ世の中の皆様に迷惑かけてるか知ってるか?」

 むしろ方向が決まってるだけラッキーだろ。

「では、料理人として腕を振るう人生とかあこがれません?」

 確かに俺は料理が好きだ。冒険者なんぞやる羽目にならなければなってたかもしれない。しかし。

「好きなことで飯を食う気はない」

 アホか。オッサン。

 仕事って言うのは喜怒哀楽セットだ。それでも世のため人のため。だから仕事だ。場末のヤクザグローガンも国王もそう思っている。


 趣味を仕事にしたばっかりに俺が料理するのが嫌いになったらどうしてくれやがるんだ。

「仕事しながら好きなことが出来ないって言うんならそりゃ好きとは言わん。酔狂でしかないわ」


 オッサンはなおも食い下がる。

「忙しいって事もあるでしょう?」

「あん? 仕事失敗したら俺どころか仲間まで即死ありえる冒険者の俺に喧嘩売ってるんか? ……あと、話は変わるが」


 俺はため息をついた。

娼婦出身の神官アンジェ一人幸せに出来ない俺にハーレムだぁ?」  まぁアンジェは同姓だが。

「チートなカリスマつけますから、まとめて相手しても大丈夫ですし、嫉妬しあうこともないですよっ?! タイプもいろいろ。まさに理想の世界!」


 ぶち。


「女の心まで自由にしたいと抜かすかっ!!? 舐めんなっ!!! 女舐めんなっ!!!」

 別に男でもいいけどさ。俺、女だし。


 そんな考えで異世界から乗り込んだ最低男に取られるなんてご免だろ。その世界の男ども。


「だから言ったのに」

 暖かい雰囲気。

 振り返った。多分知り合い。

 というか確実に知ってる相手。

 人間じゃないけど夢見とか時々この雰囲気がそばにいるのは常に感じている。俺、曲りなりに神官だし。

「あ。慈愛の女神さま」

 素直に頭を下げておく。ツラが見れないのが残念だが。

 そんなおれたちのやりとりにオッサンが割り込む。


「慈愛の女神!!?? お前の使徒、生意気ですよ??!」

「あらあら。まぁまぁ。うちの子はこんなコですから」


 ぷち。


「誰がお前だっ?! 仮にも六大神の一柱で、ついでに言うと創造神だっ?!」

「ついで仮にもは余計です」


 すみません。調子こきました。

 一応、この女神さまは俺の守護神だ。理由は解らんが癒しの力を授けてくれている。


 俺はキィキィ抜かすオッサンを無視して女神さまに小声で告げる。

「なんすか、このオッサン。ウザいんですけど」


「(はっきり言ってあげないでください)」

「(すみません)」

 女神さまに軽く諭されてとりあえず黙ってみる。


「なんでも、『異世界の貴女』に先ほどの提案を断られたそうです」

 ぷぷっ!


 女神様とオッサン曰く。


 1.このまま死んで親には申し訳無い。養育費程度は苦労かけなくて済むようにして

 2.兄弟や肉親に『大好きだった』って伝えておいて

 3.このまま眠らせて


「と言われたのだ」


 オッサンが苦悩している。そりゃそうだろ。

「『神無月カナヅキ優希ユキ』めっ!」

 いいコじゃん。自分とは思えん。


「(私もそうおもいます)」


 女神さまっ?! 女神さまっ!!

 嫌味ですかっ?! 嫌味なんですかっ??!

 今の小声、聴こえましたよっ?!


「ちなみに、どんな子ですか? 死因は?」

「そうですね。短めのセーラー服着てアイス片手に友達とキャッキャッウフフな女子中学生ですね」

 意味不明です。女神様?!


「通称、ユウキで、殿方より女の子に惚れられるコですが、とても一本気で先生からも大人からも一目置かれる子ですね。

 学業は『一部を除き』優秀。得意は家庭科と芸術と音楽。

 体育でも鉄棒高飛び短距離走に障害物は県大会選手以上。

 部活は応援団部団長。両親の愛を受け、兄と妹に恵まれています。

 死因は子犬を助けようとして自動車に跳ねられ、子犬を怪我させないために自分自身の受身を取れずにそのまま」

 一部意味不明だが家庭円満で人間関係も悪く無し。


 しかし、馬車? に跳ねられ死亡か。

 まぁ良くあるが轢いた貴族さまもご愁傷さま。


「せっかく、轢かせたのに」


 ん??? 今なんか言ったか? オッサン??!


「殺したのはテメェかっ??? 赤の他人に殺させたのはテメェかッ!!!」

 首を思いっきり締め上げる俺。止めない女神さま。

「人様の幸せ、轢かれたほうも轢いたほうの幸せ、その家族の人生も沢山奪った奴は貴様かっ??!」


 すっかり伸びたオッサンを見ながら肩を上下させる俺を見ながら女神さまもため息。

聖騎士バドだったら天罰下すぞ。感謝しろ」

 まったく。

「正義神だったらあなたの言う彼のように生ぬるいことはしません」

 ああ。ある意味正義神様って同僚でしたっけ。以前世話になりましたとお伝えください。

 つか、使徒バドじゃなくて本人だし、そりゃ切れたら怖そうだ。


「だいたい、魔王ってなんすか?」

 物語ならさておき。

「魔王です」

 解りません。説明を。

「魔物の王ですが、我々の世界で言えば魔神王や妖魔王に近い存在でしょうか?」

 少し解った。


「ええと、人心が乱れたとき、魔王が現れて乱れた悪の心を吸い上げて力と成して世界を滅ぼそうとするそうです」

 女神さまが呆れたようにおっしゃる意味は俺にもわかった。

「人間滅ぼしたら魔王、力失うじゃないすか」

「です」

 アホか。

「それに対抗する善の力の象徴が『勇者』だそうです」

 ふむ。

「あの、異世界から呼んだらその世界の住民とやら。自分で何とかしようとかしないんじゃ」


 俺の懸念に女神様答えて曰く。

「乱れて当然ですね」

 ダメだ。その世界なんとかしないと。


 何とかしないから滅ぶんだっけ? 何もしなくても滅びそうだが。


「滅ぼしてその魔王はナニをするんです?」

 コレは重要だ。


「世界の再創造ですね。そこに伸びている男に代わって最高神になります」

 いいことじゃん。


「で、毎回勇者とやらに負けていると」

「しょせん、その男の作ったものですからね。元は息子神とはいえ」


 どうも息子さんも親に似て出来が悪いらしい。同情する。


「どうします?」

「どうするもこうするも、異世界の俺が可愛そうですよ」


「貴女は?」

 まぁしょうもない理由で死んだが、自分の所為だし。


 一瞬ロー・アースやファルコ、アンジェたちの顔がよぎったが慌てて首を振る。なんでロー・アース出てくるんだよ。関係ないし。

「素直に地獄行きますよ。あ、俺が地獄いく分、出来たら優遇チケットでも『カナヅキ ユウキ』って子に」

 俺の提案に女神さまはこうおっしゃった。

「断られました。その分、肉親や友達、困っている人に配ってあげてって」

 いいコだな。俺とはおもえん。

「そもそも、現世で幸せにしてあげる余地はないんですかと逆に私が」

 ははっ!! 痛快だなっ!

「その子に会ってみたいけどダメ?」

「ダメです」

 女神さまのけち。


「そもそも、幸せってのは本人次第で変わるしなぁ」


 望みを叶えても幸せになるかは本人次第だ。

 そのカンナヅキユウキって子は賢いんだろう。俺と偉い違い。


「ああ、じゃ、魔王って奴に頑張ってもらうか」

「しかし現行の状況だと死者や不幸な人が沢山出るでしょうね」


 う~ん。


「俺。今もう勇者?」

「ですよ?」


 流石女神さま。解ってらっしゃる。


「タイマンok?」

「勿論」

 女神さまは艶やかに微笑まれた。



「貴様が新たな勇者か」

「まて。話がある」


「なんだ?」


 流石魔王。凶悪な面構えだ。親父よりは頼りになりそうだが。

「アンタ、別に人間皆殺しにしなくてもいいだろ。

 阿呆な人間に代わって世界治めるのはどう?」


 どうせ自力で運命も切り開かない連中相手。

 コイツが本気になれば世界は滅ぶなら世界征服だって難しくない。

「ソレが出来たら苦労はしない」

「アンタ魔王だろ。邪魔しないから何とかしろ」

 イラつく。

「自力で運命も切り開かない莫迦どもを再教育のため殺してまわるのも嫌だろ」

「悪役は必要だ」

 ウザッ? ロー・アースだってそこまでいわねぇ?!

「そもそも、父に歯向かう私は属性が変わってしまっている。魔王か邪神になるしかない」


 ん?


「親父いなければok?」

「ああ。だから、力を得て世界を一度滅ぼし、父に挑戦して創造神になる」


「伸びているけど???」

 絶好のチャンスじゃね? コレ?


「我が力ではこの状態でも勝てないだろうな」

 ふむ。ならば。

「『勇者』と『魔王』が協力したら?」

 俺たちはニヤリと笑った。

「女神さまっ?! 自衛以外の戦いですけど、多目に見てねっ?!」


 俺は何処からか現れたバットという棒を振り上げる。女神さまは顔を横にそむけてくれた。

『ドカッ!!!!』

『バキッ!!!!』

 奴は死んだ(かも)。スィーツ。

 俺と新しい異世界の最高神は絶妙のハイタッチ。そして握手。


……。

 ……。


「ちいや。ちいや。しっかりしてなの~」

 涙目で俺に抱きつくファルコ。

 呆れた顔で俺を見るロー・アース。

 心なしか安心したような表情を見て俺はニヤつく。

「チーアっ!! 良かったッ!!!」

 抱きつくなアンジェ。あとここぞとばかりに脱がそうとするな。

「ふう。解毒が間に合ったから良いようなものですが、今後怪しげなものは口にしないでください」

 はい。高司祭さま。


 愉快な気持ち。ふふふ。

「変な夢みてました」

「どんな?」


「えっと、友達思いの女の子が車? に跳ねられる夢を見てベッドで『変な夢』って言っておきあがる夢と、腐敗した国々を正す『勇者』が現れて偉大な王になって民を導いていく夢ですよ」

 へへっ。


「あと、女神さまを見ました」

「夢では良く見ますが、そういう話題は不遜ですねぇ」

 高司祭さまやアンジェは言う。


「面白い女の人でしたよ?」

「普通、そういう話はしません」

 妄想の類と思われたっぽい。まぁやむなし。


 最高神兼魔王兼勇者兼王となった『彼』は善政を敷いた上、人々がそれなりに成長したら後を譲って旅たつと約束してくれた。

 ちょっとキッツいがいい国になろだろう。


 オッサンは放逐されて封印された。

 新しい魔王の誕生だが、もう復活の余地はないそうな。


 万一復活したら頼むといわれたがもう知らん。

 そっちで頑張れというと新しい最高神は「頑張る」と約束した。

 「余所の世界にまで迷惑かけんなよ?」と言うと「私とこちらの世界の人だけで未来を切り開こう」と約束してくれた。

 息子が父親に離反した理由は道楽で人間と魔族の戦いを見て愉しんでいた親父に忠告したかららしい。

 結果的に人間を殺す立場になってしまったが元は魔族も人間の将来も憂うことのできる人格者。

 そりゃ喧嘩するだろう。


 俺? 元の普通の冒険者になるよう頼んだよ。

 有り余る力で別の世界の俺を蘇らせた代償にね。


 俺の道は実は誰かが決めた道かも知れない。運命かもしれない。

 でも幸せかどうかなんて解らない。俺は旅人。道は一本道でも旅は俺次第。

 それでいいのさ。それでね。


「おい。ロー。仕事は??!」

ファンガーキノコとカエルとバッタのキメラ退治ならやれるが?」


「キノコで当たった俺への嫌味かっ?!」

「なののっ!」


「チーアの食いしん坊~!」

「うっさい! アンジェ!」


「あらあら。まぁまぁ」


 もし。郊外の森の中に小さな冒険者の店があったら。

 迷うことなく俺達を指名して欲しい。きっと、願いは叶うから。

 ただし、『余計なオマケ』については自己責任で!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ