表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集。『五分間の奇跡』  作者: 鴉野 兄貴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/388

A4ノート

 おじの居住スペースからおばあちゃんのノートがでてきた

 未来世界に生きるおじと姪の会話。

 お婆ちゃんのA4ノートが出てきた。

 お婆ちゃんが高校生時代に使っていたものらしいのだけど。


「けじ~~ けじ~~」


 圭一おじさんはめんどくさそうに意志入力コードを外してこっちを見る。

 今時コードつけているのは圭一おじさんだけなんだけどね。本人曰くチップを埋め込むのは嫌だとのこと。


「紙のノートか。今時珍しいな」

「すごいお宝?」


 というか、紙で出来ている本だって圭一おじさんが持っているモノしか知らない。

 昔は紙の本は一般的だったけど伐採をする国は植物虐待と言って各国から叱られるのだ。今は木材だって培養で作れるし。

 でも培養木材や紙ですら文句を言う団体もいる。へんなの。


 私が物思いしている間におじの言葉は続く。


「そうだな。学術的資料としては計り知れないな。当時の学生が鉛筆で書いていたものだからな」

「手書きのほうが昔の文字入力より覚えやすいんだったっけ」


「そうだよ。今はスキルソフトをロードするだけでいいけど昔は知識や技術はその人だけのものだったからね」



 そういってまたコードをヘッドギアにさしなおす。ヘッドギアは誤差が出るから辞めたほうがいいんだけど、おじさんが言うにはそれはそれで昔のように誤字脱字を見つけるような楽しみを感じるらしい。面倒なの。


「けじみたいにお話を今でも考えている変り者もいるじゃん。別にけじは精神治療が必要なわけでもないでしょ?」

「これは趣味だ」


 趣味。

 この時代趣味という概念も曖昧になってきている。

 記憶も知識も技術も経験もスキルソフトにされていて、ダウンロード一発で利用可能だからだ。


 一般に目に入る『面白いお話』どのような形態であれプログラムが作る。

 圭一おじさんみたいに自分で紙の本を読んであれこれ文章を考えたりしない。


「紙の本って今すっごく高いんだよね」

「普通、ロードしたら終わりだからな」



 圭一おじさんがいうにはおじさんが若いころはタダ同然の値段だったらしいんだけど。

 とりあえずおじには媚びを売る。

 彼は子供が好きだ。子供の姿ならなお効果が高いであろうし。

 ええ。ババアですけど何か?!


「ねね。このノート貰って良い? これでナニが手に入る?!」

「お前にはやらん」


 けち。


「けじ。今時紙の本なんて読むのあたしたちだけだよ」

「普通手に入らないしな」


 私たちは味データではないトマトを食べながら豆苗の育ち具合を見て楽しむ。今時本物の植物を育てているのがばれたら種子の管理がどうとかで叱られるんだけどおじは知らん顔。


「けじ。楽器が出てきた」

「お前のお母さんが使っていたギターだな」


「けじ。すっごく物持ちいいよね」


 楽器も高いのに。なんで貧乏なおじがもっているのだろう。

 ひょっとしてお母さんの実家って超お金持ちなのかなぁ。



「けじ。老化治療をうけなよ」

「考えておく」


 今の時代歳を取るのってすっごく贅沢なんだよねぇ。羨ましいな。具体的に言うと皆若い姿でバリバリ働かないといけない。事故でも起きない限り死ぬに死ねないのだ。


「けじ。まさか老衰死に挑戦する気?」

「想像に任せる。俺のバックアップは作りたければ作れ」


 人格バックアップが存在する今の時代でバックアップもとらずに老衰死を目指す。

 いくらおじが酔狂でも、それはないか。どこかで作っているでしょう。


 この時代。

 老衰死なんて一番贅沢なんじゃないかなぁ。


 死にたくないけど。

 死ぬっていうことには少し憧れるかもしれない。

 これってけじのいう『私の物語じんせい』なのかもね。

 圭一さんは『夜明けまで恋して』のラストにちょっと出てきます。

 また、『ひのきの棒とスライムな彼女』の主人公でもあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ