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短編集。『五分間の奇跡』  作者: 鴉野 兄貴


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炊いたにゃ(TITA-NIYA) 猫の額で炊飯したら超恒星間移動

 キジトラ猫のポチの上になんか湯呑が乗っている。

 湯呑の中にはホカホカのごはん。

 美琴はそれを迷わず食った。


 うちゅう の なか に いる



 ~~炊いたにゃ(TITA-NIYA) 猫の額で炊飯したら超恒星間移動~~



『なんでこんな変なもの食べるのよぉ~?!』


 美琴の瞳の前には巨大なキジトラ猫の置物。

 泣いているのだか鳴いているのだかわからぬそ奴は猛然と美琴に食って掛かる。

「そんなもの、ご飯を見たら食べる! おなかがすいたら食べるのが基本だよっ」

「おばかさん! おばかさんだからお姉さん?!」


 巨大キジトラ猫と美琴は宇宙空間の中央で激しく口論を開始した。


「ばかっていうやつがばかなんだ」

「なんだとばかー」


「ばかばかばか~」

「ばかぱかぱんぱかぱーん!」


「ぱんぱかぱ^-^」

「ぱんぱなんあなまんま~(*´ω`*)」



「フー!」「フー!」


 虎もびっくりの巨大猫と威嚇しあう美琴。

 一歩も譲らぬ女子高生魂。


「だいたいなんで『おぶっぱん』を仏様に捧げる前に食べちゃうのさ」

「おなかすいていたから」


 なんか『千両』って書いている小判持っているし。何こいつ。いぶかしむ美琴にその猫は告げた。


『にゃーは仏だ』

「うそつき」


 ホトケってアレだろ。

 普段おぶっぱん捧げているけど、普通にパンチパーマのおっさんだろ。間違ってもトラみたいな猫じゃない。そしてこんなデカい猫可愛くない。


「ごろごろごろ」

「結構可愛いかも」


 モフモフである。

 そしてふもっふもである。暖かい。

 しかもお日様のにおいがする。

 というか美琴。前言撤回早すぎぃ。



 ここで先ほどから目線に入る謎の光の不自然さに美琴は今更気づいた。

 現在の美琴。全裸(マラである。ミコト・オブ・ザ・マラ。

「えっ?! ちょっ?! ちょ?!」

 乙女の恥じらいに配慮してか、光線の配置を無視して常に降り注ぐ謎の光。

「『ジシュキセー』とか『光先輩』とか言われている仏の力にゃ」

「なにそれ?!」

 目眩がするがそれ以前にすでに宇宙空間、真っ暗闇である。どこぞからやってくる『光先輩』のお蔭で辛うじてトップとアンダーは絶対防御。宇宙空間には空気がないはずなので照射地点以外は光らないはずなのだが光先輩には関係ない。



「私、変な薬物呑んだっけ」

「正常だ」


「正常ならもっと嫌よ?!」

「ホトケのパワーで光の位置関係無視で降り注ぐ『ジシュキセー』なる聖光によって要所は守られるのだ」


 千両と書かれた小判を手に堂々と言い放つ自称ホトケの巨大キジトラ。

 すでに脳みそが停止して苦笑いの美琴。



「えっと」

男子おののこならば『あかさん』なる白人の赤ちゃんの顔面が出て要所を守ってくれるぞ」


 まさにほとけの奇蹟。


 概要を説明する猫の置物。自称ホトケ。

 所謂日本民族がジャポニカ米を彼ら独自の基準で美味しく食べるために行ってきた『炊く』という行為。その工夫は二〇一五年に一つの到着点に達した。

 猫の額の上に乗せられる超小型炊飯器の開発である。


「まって。なにそれ」

「黙って聞くのだ」


 なお。その形状は緑色の可愛い湯呑の形をしている。通常は猫の背に乗せて利用する。

「なにそれ」

「そうか。今の日本人はTwitterやiPhoneを知らんのか」

 一部のブッティストが先祖霊に毎朝捧げるために用意する米を高速かつ美味しく作成することができる画期的な商品であったが初期においてその価値を認めることができない愚かな人類の所為でイマイチ販売台数を上げることができなかったということは歴史学者にとっての笑い話になっている。



「どこの歴史学者」

「猫又のだが」


「というか猫って好んで穀物食べるのかしら」

 この炊飯器を猫の額もしくは猫の背に乗せ、美味しくご飯を炊き、日本の先祖霊に捧げ、『おぶっぱん』なる残り飯を食べる。この日本人が楽しみとする宗教的儀式を行うことで、あまりの旨さにその意識は『飛ぶ』。

 なお、これ単体ではまだ全く問題がない。

 そして勿論だが猫族は穀物を好んで食べない。

 しかしその旺盛な好奇心と食欲は人間が旨そうに食べている『おぶっぱん』を見逃さない。

 この瞬間、猫の好奇心が生み出す強力な妖力は人間の味覚中枢にアクセスし、彼ら猫族が本来感じることのできない甘味などを感知することを可能とする。

 人間族、特に日本人の持つジャポニカ米に対する異常偏愛と猫への偏愛が生み出す変態的なエネルギーは彼らの中央神経に作用し、精神のみならず肉体をも瞬時に変容させ、解脱を果たしたものは仏の力を得る。


 これが究極の食事。

 仏のみが食することを許される。仏ですら概念のみ食するという『おぶっぱん』の概要である。


「それを僕より先にたべちゃうなんて~! 姉ちゃんの不細工~!」

「不細工っていうな~!」


「不細工不細工不細工~!」

「いったな~! ブサイク~!」



 さて。『おぶっぱん』を仏より先に食べてしまった美琴は身体ごと飛んだ。仏の力を一時的に得た美琴は死と生の連環、六道輪廻を飛び越えてこともあろうに外宇宙にまで飛んでいったのである。


「異世界じゃなくてよかったにゃ」

「異世界にいっちゃうの?!」


「天、人、修羅、畜生、餓鬼、地獄。六道を超える力を持つのに外宇宙に行けないわけがないにゃ」

「そうね!」


 なんか美味しそうに『おぶっぱん』を食べる二人。

 今や二人はわかりあったのだ。げにおそろしきは食欲の成せる業。



『うまい。美味い。うまいぞおおおっ!』


 ~~ 噛みしめるこの甘さ。このうまさは何だ?! ああ。水分! 程よく散った水分が俺の心を湧き立たせる。

 程よいアミロースとアミノペクチンが生み出すデンプン質! 程よい肥料によって抑えられたタンパク質による柔らかさ! その絶妙なリズム感が俺の舌の上で踊る! 踊る! 踊るぞ!

 あれは田植え歌の声! 娘たちが楽に合わせて踊っている! 俺も踊るぞ躍らせてくれぇえええ!

 このコメの産地は?! 宮城県??!! 宮城は稲の穂が出てからの気温が高すぎず、昼と夜の気温差が大きく、おいしいお米を育てるのに最適な気候条件に恵まれている! ああ日本人に産まれた喜びが突き抜ける!!! ~~

(惑星間移動を果たした男の証言より)



「と、いうようにとぶにゃ。今後気をつけるように」

「だいたいわかったわ」


 本当にわかっているのか。湯呑型の炊飯器を片手にご飯をよそい、納豆をすする二人。魯山人の教えに従い、しつこいほどかき混ぜた納豆の程よい臭みを堪能しつつ、アツアツのご飯をかきこむ。


 一時的にホトケの力を得たかのものは六道輪廻の輪すら飛び越え、異星系にまで達する。当然ながらこの能力は米を炊いて食する日本人のみに備わった特性らしく、多民族には再現性はない。同じ日本人でもパン食に完全に移行した日本人にも残念ながら備わっていないらしい。いまだ朝昼晩お米を食べ、先祖に『オブッパン』を供える美琴には関係のない話である。



 二〇三五年。

 人類は超恒星間移動技術を手に入れた。

 その概要はこうである。



『猫の額の上に搭載可能なほど小型軽量化した炊飯器を猫の上に乗せ、ジャポニカ米を炊いて食べると、そのあまりの米の旨さに超恒星間移動能力を得ることができる』


 一夜にして地球人類は。否、日本人一億一千万人は大宇宙時代に突入したのである。

 その他三〇〇億超を残して。

 アメリカ:やべえ。あいつらなんか未来に行ってるよ。

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