続・少女小説あらすじったー(ファンタジー編)
王城で女騎士隊長として暮らす主人公は、仕事の手伝いから王付きの使用人と恋に落ちる。惹かれ合う2人。それは前世からの因縁だった──。 恋と冒険のロマン、ここに開幕!
(『謎のシマ』編)
前作に続き海に出た二人は奇妙な島にたどり着いた。
拝啓。父上。
お元気でしょうか。
愚息は船上にてこの手紙を書いております。
ええ。結婚しました。
相手は彼女です。
実家には帰る予定はありませんからそのつもりで。
ちなみに、孫の顔を見せる気はありませんよ。
子作りはしていますが。
妻の人はあれでうぶで可愛いのです。
父上には信じられないでしょうね。
私は今大海原を超えて小さな島にて妻の人や船員さんたちと宴会を行っています。
そうですね。
岩で出来た島でありながらヤシの木が一本生えていて、小さな草と……これは海藻でしょうか。水が補給出来ないと船員さんが嘆いていましたが、良く見てみると小さな溝のようなところから補給できるようです。この水を生み出す不思議な溝について学者としての好奇心が刺激されます。
「酒が欲しいな。ラムがいい」
船員さんがわがままを言っています。あはは。
「俺は新鮮なオレンジジュースだな。ライムもいい」
騒ぐ皆さまと距離をとり、知的好奇心の赴くまま指先で溝に湧き出る水を掬って舐めていた私はとたんに吹き出してしまいました。
「どっした? 嬢たん」
「ん? なんか起きたか?!」
嬢たんというのは不本意ながら私のあだ名となります。
お酒の呑めない私は妻を残し、学識を買われて皆と共に島の散策をしていたところでした。
そして散策中に奇妙なことに気が付いたのです。
「この溝の水がライムジュース入りのラム酒になっています!?」
んなばかな。
船員さんは溝を指で掬い、そしてつぶやきました。
「お母ちゃんのスープの味がする」
はぁ?
「お。これは東方のサーケの味だな。いい感じに酔ってきたわ」
何ですって?
改めて小さな溝を指で掬い、軽く舐めてみます。
故郷の祭りの日に村娘たちが舞い踊りながら踏むブドウの香りがします。そんなばかな。
「これはワインだ」
「そんなばかな」
しばらく異常な事態に戸惑っていた私たちですが、人間と言うモノは非常に現金なものでして。
我々は思い思いにポンプを使ってほしい飲み物を吸いとり、それらを樽にたっぷり入れて旅を続けることにしました。新鮮なお酒を皆で採取するわけですので皆さんとても嬉しそうです。
「ひょっとしたらさ」
「あん?」
どなたかが面白いことを言いだします。お酒の力とは面白いものですね。
「これは大きなカメの背の上」
「ああ。面白いな」
あはは。そうですね。
この溝もカメの背の模様に酷似しています。
大きさは段違いですが。
「で、人々の心の中にある飲み物を生成、それを飲ませるが、そのまま島にとどまるものを食べる」
酔っぱらいながらもうちの妻は可愛らしくそんなことをいっています。
もっとも普段の妻は武骨な武人なのですが。
「それはいいっ!!」
「あははっ で、カメを逆に返り討ちにしたらすげえ美味いとか」
「いいないいな」
ずごご。
「あれ?」
「あれ?」
「あはは」
先ほどまで船員さんたちと戯れていた妻(別に私は船員さん達に嫉妬していたわけではありません)は酒が抜けたかのように叫びました。
「走れッ 島が動いているッ」
まさか。まさか。
ざっぱ~ん。
大きな音を立ててひっくり返る『島』。
鼻に突き刺さる潮の香りとラム酒の味わい。
潮風を背に受け、私たちは先ほどまで『島』だった大亀を眺めていました。
「報告。あのカメはこっちに突き進んできます」
あああ。やっぱりそうなるのですか。お約束ですね。
「では倒してしまえばまた酒宴が開けるということだな」
妻は美しい唇を楽しそうにゆがめて剣を抜き、強力な攻撃魔法を唱えだしたのです。
最後に。父上へ。
繰り返しますが実家に戻る気はありません。
ついでに言うと、王位は適当に我が弟にでもあげちゃってくださいませ。




