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演技

大都市ガルディス。


花崗岩を積み上げて作られた白い街。


カノサルギス公国の中央にあるため か、国の歴史と共に商業都市として大きな成長を遂げた。


各地を戦場とされてきているカノサ ルギス公国の中で、絶対に戦場とされない街でもある。


理由は簡単である。この街がカノサル ギス公国中の物資の多くを抱えているからだ。


国境を越えての戦では多かれ少なかれその土地 での物資供給が不可欠である。


故に両軍とも物資の調達はこのガルディスにて行うのでこの街 を戦場にすることは出来ないのだ。


ティア達はそれを逆手に取る。すなわち街の中に入ってしまえば戦に巻き込まれることがな い。


また物資の調達にも苦労することもない。情報に関して言うならば、様々な土地から人と 物資が集うこの街よりも多くの情報を持ち得るのは城下町だけだとも言える。


しかしそう言った街であるからこそ街に入る人の身分確認は厳しい。すこしでも疑わしい人物 は門で足止めされてしまう。


「うわぁ〜…」


そんな街事情など梅雨知らぬクレアはアーヴィンに手を引かれ街の門を盛大に見上げた。


「ほら、気をつけて、クレア。そんなに見上げると後ろに倒れてしまうよ。」


苦笑を含んだ優しい顔でアーヴィンがクレアを窘めた。


「でもこんなに大きなもの始めてみたんだもん!」


満面の笑みでクレアははしゃぐ。


「おい次の者!」


そこに門番の声がかかった。クレア、アーヴィン、ヒューは今、門の番人による身元確認の列 に並んでいる。


正当な理由のない者、身元の確認できない者はここで振り落とされる。


「私達は川沿いの村からこの稲穂を売りに来た者です。」


クレア達の前で薄汚れた農婦が言う。顔は土に汚れ真っ黒、髪はほつれてざんばらである。見 るからに薄汚れた衣服は何度も洗われくたびれていた。農婦の後ろの大きな台車に藁が被さっ ている。


「何か身分の証明になるものは?」


農婦たちの匂いがきついのか兵隊は眉をひそめ嫌そうに言う。

「へい、これです。」


少し訛りの強い声で今度は台車の後ろを押していた農夫がおずおずと紙を差し出す。そこには 彼の出自が記されている。兵士はざっとその文面を読み、間髪入れずに藁の山に剣を突き刺し た。


ガタンッ。


剣が板にぶつかるにぶい音がした後、兵士は何事もなかったかのように剣を引き抜き隣の兵士 に頷いた。


「通って良し!」


突然のことに硬直していた農夫がすごすごと門をくぐる。その様子を見て検査を受けようとし ていた長蛇の列から同じような台車を引いた何人かが離脱した。


こういった大きな台車に人を 積み、不正に街に入る者が後を絶たないからだ。


「次!」


ヒュー、アーヴィン、クレアが前へ出る。その瞬間、アーヴィンの顔は蒼白になり、短い呼吸 をせわしなく行う。


「息子が風邪を引いた。早く医師に診せたい。」


ヒューの簡潔な説明と苦しそうなアーヴィンを見て兵士が一瞬とまどう。


「では身分を証明するものを…」


ヒューの差し出した紙を見て兵士は眉をひそめる。


「…これでは貴方しか入れません。」


ヒューの差し出した紙にはヒューの名前しか書いていなかった。


「…出自を見れば分かると思うが、私はタフェシャの民。息子が生まれたときは戦乱の最中で 王都へ届けることが出来なかった。だが娘が生まれたこれを機に届け出を出すためにこの街を 通るのだ。」


冷静そうでいて少しうわずった雰囲気が見事に焦りを表現している。


「しかし…」


それでもまだ渋る兵士。


「……父さん…っ…」


苦しげなアーヴィンの額には脂汗がにじむ。


兵士が二人顔を見合わせる。あと一息。


「兵隊さん…お願い…お兄ちゃんを助けて…」


クレアの見事な演技がだめ押しとなった。


「よ…よし、通っていいぞ。」


門をくぐったところでアーヴィンとクレアは顔を見合わせてにやりと笑った。

短いですが、ここできります。クレアちゃんがちょっと黒くなってる(笑)

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