不思議な呪文
掲載日:2026/07/12
一人きりで不安になる時、ふと、空間に手を伸ばしたくなる。
ちぢこもりたい時ももちろんあるし、そんな時でも繰り返したくなる言葉がある。
「ないない、ないない。」
幼子が繰り返す言葉だ。
幼子へ、繰り返す言葉だ。
手放せ、その身から離せと、傍らから繰り返して伝える言葉なのだ。
ない、は、無い。
ない、は、失い。
ない、は、亡い。
ない、は、泣い。
涙があるなら手放せと。
元なのか涙なのかは選ばせながらも、離せと、放せとくりかえす。
それが第三者である時と。
当人では、こうも変わるなんて。
「てて、ないない」
「ゆゆ、ないない」
「みみ、ないない」
繰り返しながら、何を手放したいのか。
それとも。
今は無いものを求めているのか。
繰り返す度に変わる言葉に、喉から込み上げる思いはあるのに。
言葉にできない感情のせいで、きちんとした言葉にならない。
何がないのか。
何をないのか。
言えぬ自分にもがきながら。
今夜ももがきつつ、眠りという安らぎを待つ。
きっと夢の中でなら、その言葉が見つかるとしんじて。




