Epi0.1:H大学よりクソなもの
主人公はかなり中性的で男も女も落とせるくらいにはメロいよ、そういうことにしてくれ。お得だろ?
三月の国立市。
大学通りを埋め尽くす満開の桜が、春の陽光を浴びて淡いピンク色に輝いている。しかし、H大学のキャンパス内に一歩足を踏み入れると、空気はどこか凛としていて、重厚なロマネスク様式の建築が卒業生たちを静かに見守っていた。
講堂の前に集まった学生たちは、華やかな袴姿の女子学生もいれば、千紘のように仕立ての良いブラックスーツに身を包んだ男子学生もいる。皆、日本最高峰の商学を修めたという自負と、これから「資本主義という戦場」へ向かう高揚感を、上品な笑顔の裏に隠していた。
千紘は、講堂の重厚な扉をくぐり、自分の席に座る。
壇上では学長が、かつてのTS大学から続く「キャプテン・オブ・インダストリー(実業界の指導者たれ)」という伝統の精神を、静かな口調で説いている。
「君たちは、単なる利益の追求者であってはならない。この国の、そして世界の経済を導く羅針盤となれ……」
千紘はその言葉を、どこか冷めた耳で聞いていた。
(羅針盤、か。それは既得権益を守るための道具ではなく、新しい航路を切り拓くための武器であるべきだ。……僕なら、もっと効率的に世界を書き換えるのに)
ふと、自分の名前が呼ばれる予感がして背筋を伸ばした。
学長が卒業証書の束を手に取り、千紘の座る列に視線を向ける。
「商学部、去渡千紘――」
その声が講堂に響いた瞬間だった。
千紘の足元の床が、まるで古い羊皮紙が破れるように音もなく裂け、眩い光が溢れ出す。
「……え?」
隣に座っていた友人の驚愕した表情が、スローモーションのように遠ざかっていく。
手に取るはずだった卒業証書。
明日から始まるはずだった大手商社でのキャリア。
数分後には受けるはずだった、母親からの「おめでとう」という電話。
「なんで…僕のキャリアは?家族は?どうして…」
それらすべてが、白光の中に溶けて消えた。
次に千紘が目を開けた時、そこには桜の香りの代わりに、潮騒の音と、訝しむようにこちらを見る豪華な装束に身を包んだ国王らしき人物がいた。
次回からはそこそこ長くなると思うよ。やっぱ嘘。




