風の国の物語
『風の国の王子様』
本当に危険な賭けだった。
風の国の王子ライズは、その時、偶然にも本隊と離れて前国王派の領地である国境の街テトクエに滞在していた。
風の国では長く内乱状態が続き王権は停止状態。
長年続く国王暗殺からの王位継承戦争がこう着状態となり、転戦中の軍隊の中で育ったライズ王子の心身の成長を不安視した母アマリエの考えにより、戦闘から離れて風の国の中で比較的平穏なテトクエという商業都市で隠密に帝王教育を受ける事になっていたのだ。
ところが、極秘とされていた王子の滞在が知れたのか、水の国との密貿易が盛んに行われていたテトクエの支配を目論んだのかライズ王子からみると敵方の大軍の大攻勢があるとの情報がはいった。
そのままライズは脱出経路を絶たれてしまう。
父の仇であるバルの軍勢がその地に攻め込んできたのだ。
そのままなんとか身を隠しながら国内にとどまるか、水の国から入国を拒まれて捕縛され叔父の軍隊に引き渡されるか。
王子一行は、窮地に陥った。
このまま風の国領土にいれば下手をするとバルの軍隊に捕虜にされてしまうかもしれない。
テトクエはそれほど大きな都市ではなく大軍が攻め込むとなるとと身分も改められずに市民たちもろともに無差別殺戮されてしまうだろう。
遠く離れた前国王派の本拠地にいたライズ王子の母は、すぐに決断し息子にテトクエから国境をこえ比較的友好な平和な大国水の国に脱出するようにと伝えてきた。
水の国で高く売れるという自身で織り上げた風の羽衣を路銀代わりに沢山持たせ、キチジという水の国に詳しい商人の男に全てを差配させるという手紙とともに。
息子の逞しさを信じて送り出したのである。
「キチジは風の精ですが水の国につうじています。母はいつもあなたたちの身の安全を願っています。どうか水の国で風の国とお父上の名に恥じぬよう振る舞い、いずれ祖国の役に立てるよう逞しく成長をしてください。風の国のアマリエ」
王子は市民たちを見捨てることに罪悪感を感じたものの自身のこれからの使命のためははのすすめにしたかった。
「元々テトクエは風の国と水の国の交易の中継点であり、水の国にはかつて自分に仕えていたものも多く難民として非難してきている。その中の有力なものに貴方のことを頼みました。このまま水の国に留学という形で避難し、身分を隠し一留学生としで彼の地の仕組みや文化などを学んで来なさい」
ライズ王子達一行は王妃に仕えていたキチジという風の精の商人の手引きで隊商に紛れ商人の身内や若者に身をやつして混乱の中国境を越え水の国に入国したのだった。
ライズ王子は、受け入れ側の水の国から入国許可が比較的スムーズに降りたため水の国に亡命できることとなった。
彼の波乱に満ちた人生はまだまだ半ばにも達していないのだ。
子供の頃から、危険とは背中合わせの日々、自ら太刀を振るい、竜の手綱を握り味方を叱咤激励して危険な敵の囲みから間一髪で脱出するといったことも1度や2度ではない、そんな中で成長してきた逞しすぎるライズ王子の留学生活が始まる。




