8 ~お母さまと王都へ行こうっ その3~
伯父の家に来たその日の夜。
魔道具の事を色々聞いたミリアーナは、魔道具の事で頭がいっぱいになったまま床に就く。
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うぅん・・・
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(さて、整備は一通り終わったっと。
よし、車検ラインに通す前にライト周りとかの点検をしとかないとな~。)
「ねぇ、悪いんだけどさ。ちょっとライト周りの点検をしたいんだ。順番に点けていくから、見てくれないかな?」
「了解で~す。ちょっと待ってて下さいね、今行きますんで。」
「はいよ~」
「いいっすよ~、お願いしま~す」
「点けるね~。ウインカーから~。右~、左~、ハザード~」
「次ヘッドライトね~。スモール~、ロー、ハイ~、パッシング~」
(えっと・・この車はフォグはないから・・っと)
「次後ろね~。 右~、左~、ハザード~、スモール~、ブレーキ~、リバース~」
「どう~?」
「後ろ、ナンバー灯の右が切れてますね。あと、リバースの左もダメです。前は全部大丈夫でした。」
「そっか、ありがとう。」
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夜中、目が覚めるミリアーナ。
んぅぅ・・・ん・・
(また例の夢だ・・・・・)
(なんなんだろう・・夢なのに、夢じゃないような・・・)
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気にしても仕方がないと、再び床に就く。
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翌朝。王都に来て3日目だ。
今日は街に出て母と買い物をする予定になっている。
ここは伯父の家。商業地区の外れの職人街とはいえ、朝早くから人々の活気溢れる声が多く聞こえてくる。
「おはようございます・・ お母さま。」
「おはよう、ミリアーナ。今朝は早いじゃない。 よく寝られたの?」
「ん・・ うんっ、良く寝られたよっ。」
「そう。」
例の夢を見たミリアーナ。なんとなく、寝覚めが悪いのだ。
起きて着替え、支度をし、伯父達の居る居間へ向かう二人。
「おはようございます、兄様。」
「おはよう、リリアンヌ、ミリアーナ。 よく寝られたかい?」
「ええ。ありがとう。」
「うん・・」
なんとなく、まだ寝覚めの悪さを引きずっているミリアーナ。
そこへ、奥から朝食の支度をしていたエレナがやって来た。
「おはよう、リリアンヌさん、ミリアーナちゃん。」
「おはようございます、エレナさん。」
「おはようございます、エレナおばさま。」
「さぁ、朝食にしましょうか。こんなものしか出ないけれどね?」
「「いただきます。」」
「はい、召し上がれ。」
「ん~ おいしいっ♪」
「そうかい?それは良かった。」
フリードは男爵家の出とはいえ、職人をしている事もあり、それほど贅沢はしていない。
今朝はパンと少しの腸詰が入った野菜を煮込んだスープ、そしてスクランブルエッグだ。
庶民が良く口にする質素な食事であるのだが、秋の冷え込んできている朝には身に染みるように美味しく感じられるものだ。
「ごちそうさまでしたっ。」
「おそまつさま。 美味しかったかい?」
「うんっ。」
そして食事を終え、出かける準備をする二人。
そんな中、昨日伯父と話していた魔道具がミリアーナの目に入る。
ランタン型をしたランプの魔道具だ。なんとなく、気になるのだ。
しかし母に促され、準備の方へと気を向けるのだった。
「今日はこれからどうするんだい?」
「今日はこのあと街を巡って色々と買い物をしようかと。冬も近いですし、来年のミリアーナの事もありますから。」
「そうかい、では気を付けていくんだよ?」
「ええ、有難う。 エレナさん、急だったのに、有難う御座いました。お世話になりました。」
「いえいえ、気にしないでね。また、いつでもおいでなさいな。」
「伯父さま、エレナおばさま、ありがとうございましたっ。」
「来年、学園に入学出来たら、いつでも会えるようになるわね?」
「うんっ。」
「それでは、私たちはここで。ではまた。」
「ええ。気を付けてね。またいつでもいらっしゃいな。 それじゃ、ミリアーナちゃん、またね?」
「はぁいっ。 さようなら、伯父さま、エレナおばさまっ。」
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伯父とエレナに見送られ、伯父の家を発つ二人、再び商業地区の中へと向かってゆく。
辺りは商店や宿が立ち並ぶ通り。
「ミリアーナ。この辺りが宿がある通りなの。下宿をするとなると、この辺りのどこかで借りる事になるのよ?」
「うん。 寮の方が良いのかなぁ・・とも思うし・・・。 あとで・・よくかんがえてみるね。」
「そうねぇ。まだ時間があるし、よく考えてみてね?」
「はい。」
色々な店を見ながら、リリアンヌは買い物を済ませてゆく。
しばらく歩くと、どこからともなく甘い匂いが漂ってくる事に気付くミリアーナ。
「ん・・ いいにおいがする・・・ あっ!あそこっ♪」
さすがは甘いもの好き、目敏くスイーツの店を見つけたようだ。
時間はちょうどお昼を少し過ぎた辺りであり、軽い昼食も兼ねて店に入る事にする。
店内を見渡すミリアーナ。
メニューには美味しそうな名前が並び、店内やテラス席のお客さん達が食べている物もとても美味しそうに見える。どれも目移りしてしまうような物ばかりだ。
「うぅっ・・どれにしよう・・・ うんっ、これにしよっ♪」
「うふふ。 じゃあ、私もそれにしましょうか。」
店員に声を掛け、注文をする。
ミリアーナ達が頼んだものは、最近王都で流行り出したもので、ふわふわのパンケーキに蜂蜜ベースのシロップが掛けられ、そこに少し甘いホイップクリームに果実のソースが掛けられた物が載せられ、さらに季節のフルーツが添えられたものだ。
それが、季節の果実水と一緒に運ばれてくる。
「うわっ♪ おいしそ~うっ! いっただっきま~すっ♪♪」
ミリアーナの顔は、それはもうニコニコ顔である。
「うう~んっ♪ おいひい・・・」
リリアンヌはそんな娘の顔を見て微笑み、自分もまた一口と食べ進めるのだった。
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二人は買い物をひと通り済ませ、再び実家のノイマン邸へと向かう。
時間も夕方前。陽が陰り始め、少し冷え込み始めている。帰るのにはちょうど良い頃合いであった。