6 ~お母さまと王都へ行こうっ その1 ~
ブクマ、有難う御座います。
兄の誕生日も過ぎ、秋も深まってきたこの日。
ミリアーナは一人で勉強の為に部屋で本を読んでいたのだが、そこへ母が声を掛けてくる。
トン トン
「ミリアーナ、いるかしら?」
「はい」
「あら、お勉強中だった?」
「ううん、大丈夫。 なぁに、お母さま。」
「そろそろ冬も近いし、一度、王都に出かけようかと考えているの。それで、そこへあなたも連れて行こうかと思って。」
「はい。」
「ミリアーナは王立学園に入学したいんでしょう?したら、一度学園がどんなところなのかを見学しておいた方が良いと思うの。 それと、ここからじゃ通う事も出来ない場所だから、一人暮らしになってしまうでしょう? だから、王都での生活がどのようになるかも見ておいた方が良いと思うの。」
「はい。」
「それで、どうかしら? あなたは行ってみたい?」
「うんっ 行きたいっ。 私も一度きちんと見ておきたいなぁって思ってたの。 そ・れ・に 王都にはおいしい甘いものがた~っくさんあるし♪」
「ふふっ。 なら、決まりね?」
「うんっ! たっのしみぃ~♪」
「そうそう。 王都に行くのは泊りがけになるから、一緒にお祖父様の所と、それとフリード伯父様の所へも挨拶に行くからね?」
「伯父さまのところにも行くの?!」
「ええ。どうかしたの?」
「うん。フリード伯父さまって、魔道具師の伯父さまでしょ? 私、魔道具って不思議だなぁって。それで、伯父さまに色々きいてみたくって。」
「そう。 したら、粗相のない様に、きちんと挨拶をするのよ?」
「はいっ!」
母リリアンヌから一度王都へ行きましょうと伝えられる。
来春は王立学園の入学試験もあり、学園の見学や冬支度としての色々な買い物も少ししておきたいと考えたようだ。
王都の外れには母の実家があり、また、王都には母の兄も住んでいるので、挨拶もしておきたいところ。
その兄はそこで魔道具の研究をする傍ら、客からの注文を受けて作成もしている。ミリアーナにとっては魔道具が魔訶不思議なものと見えているようで、興味があるのだ。
また、王都には美味しいスイーツの店がそこかしことあるので、甘いもの好きのミリアーナにとっては天国のような場所でもある。
という訳で、母からの提案に嬉々として飛びつくミリアーナなのであった。
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そして、王都に行く日。
王都へは馬車で丸1日は掛かる距離なので、朝早めに準備をしているミリアーナ。
♪んふふっふふん~♪
(久しぶりにお祖父さまや伯父さまたちに会うのですもの、気合入っちゃうわよねっ♪)
「服は~・・ よしっ これで大丈夫っ♪ あ・と・は・・髪っ♪」
トランクには既に3日分ほどの着替えを用意し詰め込んであるので、あとは服に合わせてバッグと靴を用意するだけだ。
「ミリアーナ~ 支度は大丈夫~? そろそろ出るわよ~」
「はぁ~いっ、 お母さま~。 今いきま~す。」
母から呼ばれるミリアーナ。既に母は準備を済ませ待っているようだ。
「お待たせしました、お母さま。」
「もう準備はできた?」
「はいっ。」
「そう。 じゃあ、そろそろ向かいましょうか。」
外には小さめの馬車が待っていた。
乗り合いの馬車でも良かったのだろうが、今回は貸し切りで行くことにしたようだ。
御者に荷物を載せてもらい、馬車の中へと乗り込む二人。
ここから王都までの道中は良く整備された道幅の広い街道となっており、また治安も良いので、護衛などの必要もない快適な馬車旅となる。
カパッカパッカパッカ・・・・
ガラガラガラガラ・・・・
王都への街道を馬車が走る。
ミリアーナは御者越しにずっと外を眺めている。
途中、向かいから様々な馬車がすれ違ったり、景色の良い場所が幾つもあったりと、見飽きないのだ。
馬車が休憩に入り、御者が気さくに声を掛けてくる。
「どうだいお嬢ちゃん、疲れはないかい?」
「うんっ、大丈夫っ♪」
母リリアンヌはミリアーナの様子を見て微笑んでいる。
こうして快適な馬車旅は続き、夕方前。王都を囲む街へ入る為の門が見えてくる。
そこをくぐってしばらく行けば、今日の最初の目的地、祖父たちの待つノイマン家の邸だ。
門前に到着し門兵からチェックを受け、門をくぐる。
やはり王都だけはあり、門をくぐればすぐに街の喧騒が聞こえてくる。
そのまま馬車は小道を折れ、ノイマン家の邸前へ到着したので馬車を降り荷物を受け取る。
すると、到着に気が付いたのだろうか、邸より使用人がやって来た。メイドのルイーズである。
「リリアンヌ様、お久しぶりで御座います。ようこそおいでくださいました。」
「こんにちは、ルイーズ。出迎えてくれてありがとうね。」
「ルイーズさん、こんにちはっ。」
「ミリアーナお嬢様、こんにちは。」
「お二人共、馬車での長旅お疲れでしょう。そちらの荷物はお運びしますので、どうぞ中へ。」
「ありがとう。では、お願いするわね。」
大した荷物ではないのだが、ルイーズに荷物を持ってもらい、邸の中へと進む。
いつもにこやかにしているルイーズの事が大好きなミリアーナ。
「あのね、あのね、ルイーズさん。このあいだね―― 」
ここへ来るたび、楽しそうにお喋りを始めるミリアーナだ。
「暫くぶりです、お父様、お母様。」
「リリアンヌ、ミリアーナ。よく来たね。」
「いらっしゃい。二人とも。」
「お祖父さま、お祖母さま、こんにちはっ。」
ミリアーナは最近使う様になったカーテシーの挨拶を披露する。
「おやおや。いつの間にかにおしゃまさんになったねえ。」
「この子ったら、今度会ったら頑張るって言ってね?」
「そうかいそうかい。 いい子になったねぇ?」
「うん…じゃなかった。 はいっ。」
「はっはっは。 ではお嬢様、中にお入りください?」
「はいっ♪ うふふっ♪♪」
孫娘に甘々な祖父と褒められてニコニコなミリアーナ。
5人は部屋へと移動してゆく。
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その夜。
夕食を皆で囲む中、会話に花が咲く楽しい夜は過ぎてゆくのだった。