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62 ~今日は日曜日っ~


 八月に入り、更に暑い日々が続く王都の街。

早朝はまだ幾分涼しい風は吹いて来るが、それでも朝から暑さを感じる。


「うぅん・・ ふわゎ・・・」


今日は日曜日であり、勿論学園は休みなのだが、何となく朝早めに起きてしまったミリアーナ。

ふと隣のベッドを見ると、イザベラが起きて着替えているところだった。


「おはよぉ・・イザベラさん。」


「おはよう、ミリアーナさん。 今朝は早いですね、日曜日ですよ?」


「うん・・何となく起きちゃった。」


いつもの日曜日ならゆっくり寝ていて、イザベラに朝食を食べに行かないかと起こされる事もあるくらいなのに、だ。


ベッドの上で何となくボーっとしていると、隣で着替えを済ませたイザベラが部屋を出て行く。

いつもの、お茶の準備をしに行ったのだろう。

その間にミリアーナも着替えを済まそうと、そそくさとベッドから起き上がり、ベッドの隣に掛けてある普段着のワンピースに着替えてゆく。

今日は日曜日なので、髪の毛を梳くとその長い髪の毛を軽く後ろに束ねてリボンを結んで終わりにした。


そうこうしている内にイザベラが部屋に戻ってきて、ポットに沸かしたお湯をテーブルに置き、素早くティーポットに茶葉を入れ、そしてお湯を注ぎ入れてゆく。

ティーポットの中で、茶葉がくるくると踊る様に上下に動くのを、つい見惚れるように眺めてしまうミリアーナ。

そんなミリアーナを見つつ、そのクールな横顔に笑みを浮かべながら二人のティーカップを並べてゆくイザベラ。


暫くの時間が過ぎ、最適なタイミングでティーカップに注がれる。


「どうぞ」


「今朝もありがと、イザベラさん。」


「いえ。」


朝の、ゆっくりとした時間が流れ始める・・・



今朝は何故早起きしてしまったのか。

勿論、暑さで寝苦しくなったことも理由の一つなのだが・・・

この数週、週一度の鍛冶の実習で集中して魔力を使っている事が元になっているのかは分からないが、とある夢を見てしまったのが原因である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・


カンッ   カンッカンッ


「おーい、どうだ、作業の進み具合は。」


「あっ、先輩。 そうですね、大体順調・・かな。 あとはこのパイプを溶接して組み立てて行けば・・・。」


「そうか、気を付けて作業進めろな。」


「はいっ。」


今組み立てている物は、今度の文化祭での自動車部の出し物にする自作のバギーである。

50ccの三輪スクーターのエンジンを使い、サスペンション等の足回りはこれまた原付のスクーターの車輪やスプリング等を利用した、一人乗りのミニカーであるのだが。


チッ・・  ジジジ・・ッ


半自動アーク溶接機によってパイプが組み立てられ、フレームの形になってゆく。


「んー・・・   フレームのこの場所はこのパイプだから・・・」


着々と組み立てられてゆくフレーム。

曲げられたパイプ同士を溶接し、ガゼットを当て溶接し補強する。


「出来たっ。 お~、何となく形になってるじゃん。  したら、次は座る部分を決めちゃおうかな。」


組み上げられたフレームに仮にステーを取り付け、取り付けるシートの位置を確認する為、解体屋から譲って貰った軽自動車のシートを載せてみる。


「うん、OKかな。」


ここまでは設計図通りに組み上がって来ている。

ステーをしっかりと溶接し、シートを仮載せする。


「次はエンジン・・・」


エンジンと言っても、三輪スクーターの駆動系をそっくり使用するので、エンジンと変速部、そして後輪が付くようになる。

この駆動部を取り付けるステーを仮止めし、エンジンをシートの真後ろ、フレームの左右を結ぶ太めのパイプに寄せてみる。


「ん・・・  大丈夫、かな。」


駆動部を取り付けるピポッド部とダンパースプリングのステーをしっかりと溶接してゆく。さすがにこの部分は負荷が掛かるので、少し厚めの鉄板を組み立て、取り付ける。

溶接部のスラグを取り払い、エンジンとダンパーを仮付けしてみる。


「よし、出来たっ。 次っ!」


次はフロント部分の機構、ステアリングとアクスル部の取り付け作業である。

フロントサスペンションは複雑になるので、このミニカーはリジット(固定式)で設計してある。なので、フロントハブが取り付けられるキングピンを直接フレームに溶接する事になる。


「うーん・・難しい・・・  うん、先輩に頼ろう。」


一人で位置決めをするのは少し難しいかなと感じた美奈は先輩に相談する事にして、呼びに行く。


「せんぱーい。 すみません、少し相談したい事が・・・」


「ん?どした?」


「今、フロントのアクスル部分の取り付けをしようかと思っているんですけど、一人じゃちょっと難しくて・・・」


先輩は一瞬考えるような素振りを見せ、美奈に答える。


「そうか、ちょっと待ってな。見てやるから。」


「はい。 すみません、ありがとうございます。」


先輩の作業が終わるのを待ち、話しながら移動して一緒に見てもらう。


「お、もうここまで出来上がったのか。早いじゃん。」


「はい、えへへ。」


「で、キングピンのトコの取り付けで悩んでるんだっけ。」


「はい。 ここを失敗したら真っすぐ走らなくなるから、一人で決めるのが怖くて・・」


「そか、そうだな。  よし、手伝ってやるから少し待ってな。」


「はい! ありがとうございますっ。」



・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ・・ 美味しい・・・」


隣で、それは何より、と言っていそうな笑みを浮かべるイザベラ。

ティーカップを置くと、そのままテーブル脇に置いてある本に手を伸ばし、いつもの読書へと入ってゆく。


(・・・、  久しぶりにあの夢を見ちゃった・・・。)


ティーカップを手に、窓から見える夏の空を見つつ、ボーっと今朝見た夢を思い返すミリアーナ。


そのまま、ゆっくりとした時間が過ぎ、朝食の時がやって来る。


パタ・・・、トン。


「少し早いですが、そろそろ朝食に行きませんか。」


「ん・・、うん。 そだね、行こっか。」


何となく心の隅に今朝見た夢の事が引っ掛かりつつ、食堂へと向かうミリアーナ。

食堂へと降りると、カウンターの向こうで給仕さん達がが忙しく準備を進めているところだった。


「おはようございまーす。」「おはようございます、マリアーヌさん。」


「はい、おはよう、二人とも。 今朝はずいぶん早いじゃないかい。」


「えへへ・・。」


普段の日曜日の朝と比べ、だいぶ早いミリアーナを気にする寮母のマリアーヌ。

何となく笑って返事をしていると、ソフィアも食堂へとやってきた。


「おはようございまーす。  あ、イザベラさんミリアーナさん、おはよっ。 って、あれ?ミリアーナさん、朝早くなのにどうしたの?」


「えへっ、なんか早くに起きちゃった。」


「そうなの? 何かあったの?」


「ううん、別に何もないよ? なんとなく暑くて起きちゃっただけ。」


「そうなんだ。」


そのままいつものテーブルに腰を掛ける三人。

暫くして朝食の準備が出来たことを知らされたので、カウンターに取りに行く。


「はい、待たせたね。  ん? おや。 こんなに早くに食べに来るなんて、今日は珍しいじゃないか。」


「えへへ。」


カウンター越しにシェフのおじさんにも言われてしまうミリアーナ。

出来上がった朝食を受け取り、テーブルに戻る。

今朝は冷製スープとスクランブルエッグにチーズを少し、そしてスライスされた黒パンである。


「いっただきまーす。」「「いただきます。」」


テーブルに三人。

他にも何人か食堂に降りてきており、それぞれがカウンターで朝食を受け取ってテーブルで食事を始めてゆく。


(うん、おいしい・・)


スライスした黒パンにチーズを添えて口に運ぶミリアーナ。

この黒パン、発酵種が普通の白パンとは違い、少し酸味のある風味がする。

この味は美奈であった前世でも好きだった味で、時折ではあるが、黒パンを扱っている少し遠いパン屋まで足を運んで手に入れていたくらいである。


(ん・・ 今朝の夢・・・)


食事をしながらも、今朝見た夢の内容が気になって考えてしまう。

このところ前世の夢は見ていない―――いや、見ているのかも知れないが、起きる頃には忘れてしまっているのだろう―――ので、久しぶりの鮮明な夢の記憶が気になってしまうのだ。


そんなミリアーナをよそに、ソフィアとイザベラは早々に食事を食べ終え、食後のお茶をしながら今日これからの予定を話している。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チッジジ・・ジーッパパッチリチリチチッ・・・


「うん、綺麗に出来たじゃないか。」


「ありがとうございます。先輩が手伝ってくれたから―――


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(・・・・・)


ミリアーナはボーっとして、まだ食べ終えていないでいる。

ソフィアがそんなどこか上の空で食事をしているミリアーナに気付き、声を掛けてきた。


「どうしたの、ミリアーナさん。やっぱりちょっと変だよ?」


「・・・・・ん?  あ、うん。 ごめん、ちょっと考え事してた・・。」


「ふうん・・ ほんとに大丈夫?」


「ん? うん、大丈夫。」


「そう。    ねえ、ミリアーナさん。今日はどうする?」


「うん、どうしよっかな・・。」


夢の内容が気にはなるが、だからと言ってその夢について深く考えたってしょうがないのは分かっている。


「うーん・・ 二人はどんな予定なの?」


せっかくなのだから、早く起きた日曜日を楽しまなきゃと、気持ちを切り替えるミリアーナ。


「うん。イザベラさんとも話したんだけど、今日は久しぶりに街をプラプラして遊ばない?って。」


「あ、 それいいねっ。  あ・・・ 早く食べなきゃ。」


そう言って残りをサッと食べ終えると、じゃ、またあとでここでね、と言って三人は自分たちの部屋に戻っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~


「おまたせっ。」


「うん。」


「では行きましょうか。」


「うん♪」「いこっ。」


三人はそれぞれちょっとおしゃれをして街に歩き出す―――



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