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54 ~なんか凄いもの出来ちゃった?~


 生徒達は各々の作業台の上に魔導錬金坩堝と魔石を用意すると、先生の説明を待っていた。


「では皆さん、これから魔石を砕く練習を始めますが、まずは魔導錬金坩堝に魔力を流す練習をしたいと思います。 今皆さんが手にしている坩堝は、錬金術師が使う一般の物とは少し仕様が違います。 この坩堝は上手に魔力を伝える事が出来たかどうか分かるように、坩堝の縁の色が変化するようになっています。」


ミリアーナの目の前にも置いてあるのだが、これが普通の物とどう違うのかパッと見では判らない。

坩堝と言ってもその形は深鍋状になっているので、この中に魔石を入れて、専用の擂粉木・・の様な棒で魔石を突いて砕いてゆく物なのだが・・。


「まずは私が手本を見せますね。」


そう言うとアルフレッド先生は生徒と同じ仕様の坩堝の取っ手を握り、魔力を徐々に掛けてゆく。

すると、坩堝の上縁が初め赤茶色だったのだが、段々緑色に変化していった。


「このように、上手く魔力を流す事が出来ると、この縁の部分が緑に変化します。逆に、上手く出来ないとどうなるかですが・・・」


再び手を掛け魔力を流すようにしているようだが・・・


「このように、何も変化しません。」


(なんだ、違う色になるのかと思ったじゃんっ。)


「それでは皆さんもやってみましょう。」


生徒は各々目の前の坩堝に手を掛け、魔力を流し始めている。

ミリアーナも同じようにして魔力を掛けてみる。


(ん、集中集中・・・。)


すると、段々縁が緑色に変化してゆくのが見て取れた。


(よっしゃ~っ♪    あ・・・。)


上手くいった嬉しさで気が散った途端に色が戻ってしまった。

隣で同じようにヘルムートが挑戦しているのだが、彼の方はと言うと中々如何して上手くいっている様で、綺麗に魔力が流れ、維持が出来ている様だ。


(うっ・・、なんか悔しい・・・。)


横目で見られている事に気付いたのかどうだか分からないが、ヘルムートが話しかけてくる。


「うん、僕が上手く出来たのだから、ミリアーナさんもきっと上手く出来るよ。」


「う、うん、そうだよね。 じゃ、じゃあ、もう一度頑張ってみるね。」

(うぬぅっ・・  あぁもうっ、なんか恥ずかしいじゃんっ!)


やはり失敗したところを見られていたようである。

しかし、そこはミリアーナ。

二度目は無いとばかりに気合を入れ、集中して魔力を込める。


(よ~し・・ イイ子ね~。 そのまま、そのままよ・・・。)


今度は上手い具合に魔力が流れ続け、縁の色が維持出来た。


「やっぱりミリアーナさんは凄いね。」


「え、そ、そうっ? あ、あはは~。」

(あぁっ・・気が散るじゃないっ・・・)


とは言え、さっきの様に失敗したら恥ずかしいので、そこは気合で維持に努める。

そして、こんなものかな?と言うところで魔力を流すのを止め、周りの様子を見る事にする。

もちろん流すのを止めれば色が戻るのだが、一休みなので問題は無い。

ヘルムートだって今は一休み中なのだし。


周りの様子はと言うと・・

上手く出来ている者、そうでない者、半々と言うところであろうか。

この作業は魔導術の延長なので、それほど難しくはない筈である。

そして上手く出来ていない者へアルフレッド先生が指導して回り、一通りの生徒が魔力を流せるようになったところで再び説明が始まった。


「それでは全員流せるようになったので、今度は坩堝の真ん中に魔石を置いて魔力を流してみましょう。」


(よし。  なんかドキドキするな・・。)


魔導錬金坩堝の中へスライム魔石を置き、魔力を流す。


(集中・・  集中・・・)


坩堝の縁の色が段々と変化し、緑色になってくる。

と同時に、坩堝の中の魔石の色が変化し、薄ぼんやりと光り始めてきたようだ。


(おぉぉ・・っ・・・)


このまま暫く魔力の流れを維持してみる。


水色の魔石がほんのりと光り、艶が増したようにも見える。


(これが共鳴している状態・・で良いのかな?)


先生がこちらに来たので、見て貰うことにする。


「先生、これで良いのでしょうか?」


その魔石の状態を見て、アルフレッド先生の顔が一瞬変わった様に見えたが、直ぐににっこりとして話し始めた。


「ええ、とても良い状態ですね。 暫くその状態を保てますか?」


「はい、やってみます。」


ミリアーナは魔力の流れを途切らせないように、より集中してみせる。

すると、魔石の周りは薄い水色の靄が掛かったようになり、更に魔石そのものも艶やかに光り始めたのだ。


「ふむ・・・ これはなかなか・・・。」


「?。  えっと・・・。」


「ミリアーナさん、そのままの状態を維持していて下さい。 これから魔石に力を加えて砕きますが驚かない様に。」


「は、はいっ。」


先生はそう言うと坩堝の中に道具を入れ、魔石を砕き始めた。


魔石は突かれた端から砕けてゆくのだが・・

坩堝の中でフワフワと煙の様な物が舞い始め、魔石は突かれる度に光を強めたり弱まったりを繰り返す。

暫くして砕き終わったのか、先生が突くのを止めた。

その坩堝の中は煙の様な物で満たされてしまっているままだ。

ミリアーナはどうすれば良いのか分からず、魔力を流したままでいる。


「ミリアーナさん、少しずつ魔力の流れを弱める事が出来ますか?」


「はい、やってみます。」


徐々に魔力の流れを小さく、丁寧に力を抜いてゆくように弱める。


「いいですね。そのまま、ゆっくりと。」


集中しながら、更に弱めてゆく。

すると、さっきまで煙の様なものに満たされていた坩堝の中が段々と収まり、魔石の粉なのであろう物が見え始める。


「ほう・・。 では、そろそろ魔力を流すのを止めてみましょうか。」


「はいっ。」


すると、坩堝の中の煙は収まり、元の色より若干だが濃い水色の粉がそこにはあった。

しかし、ただ濃くなった・・というより、粉なのに照りがあるというか、艶やかというか・・。

なんか粉っぽくない粉がそこにあるのだ。


「ではミリアーナさん。 その粉を瓶に移し替えてみましょうか。」


「はい。」


言われた通りに小瓶に移し替える。

もちろん、溢したりしない様に細心の注意を払いながらだ。


(よし・・ 蓋をして・・と。)

「どうでしょうか、先生。」


「ええ、とても良いですね。」


先生はそう言いながら小瓶を手に取り、軽く振って見せる。

すると、粉が煙の様に舞いながら、ふわりと光を放ったように見えた。


「ふむ。  これは素晴らしいですね。 とても良い物が出来上がりました。」


(えっと・・??)

「あの、どういう状態なのでしょうか?」


「ええ。ミリアーナさん、貴女の魔力属性は確か水属性でしたね。」


「はい、そうです。」


「しかし、それだけではないですね?」


「はい。 水が主ですが、風の属性も少しあります。」


「そうでしたね。  恐らくそれが原因でしょう。  今、この魔力粉はとても安定して水の魔力が存在していますが、それだけではなく、元々魔石が持っていた潜在的な魔力も引き出されています。ですので、単純に魔力が保たれて粉になった時の色ではなく、魔石の持つ魔力そのものが純粋に引き出された色になっています。」


「はい。(はて・・? 私、何かした?)」


「ふふ。 ミリアーナさん、これは素晴らしい事なのですよ。 もしかすると、貴女の中に眠っている能力なのかも知れませんね。」


ミリアーナとアルフレッド先生、二人だけの世界になっているようだが・・

ふと、周りの様子が気になり目線を向けてみる。


(あ、あはは・・)


周りの生徒達はいつの間にか作業を止めてこちらを注目していたようで、生徒達の目線がミリアーナとその小瓶に向けられている事に気付いた。

もちろん、すぐ隣で作業をしていたヘルムートも、感心したように注目している。



そんな皆に注目される時間が過ぎ、実習時間は終わりを迎えた。



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