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51 ~剣術訓練中っ!  ふんっ、どうよっ!~


 「いや、ミリアーナさんなら大丈夫かな?って思ってさ。」


「はい??」

(ちょっ、どういう意味よっ、それっ!)


「あなた、その言い方はどうかと思いますが?」


その言い方にカチンと来たミリアーナ。イザベラが言い返してくれるが・・。


「あ、ごめんごめん。変な言い方しちゃったね。ミリアーナさんなら強いから、大丈夫かなって思ったんだよ。」


「は?  (何も変わってませんが??)」


「それで、どうかな。僕と手合わせして貰えるかな?」


これはどうかと思ったイザベラが立ち上がろうとするが、ミリアーナは引き止め、イザベラに耳打ちする。


「私、受ける。」


「良いのですか? 私が手合わせしても良いのですが。」


「ううん、大丈夫。 私が受ける。」


そしてミリアーナが立ち上がり、ヘルムートに告げる。


「いいわ、受けてあげる。」


「本当かい? そうか、ありがとう。」


そう言うとヘルムートは戻っていった。


「本当に良いのですか?」


「うん、大丈夫よ。  多分?」


イザベラは心配そうな顔をするが、ミリアーナはにっこり笑って返事をすると、丁度休憩の時間が終わり、後半の訓練が始まるのか生徒が集まり始めた。


別にムキになっている訳ではない。ただ、ヘルムートの言い方にカチンときたのだ。ただ、負けず嫌いなだけである。

この男勝りな性格は今に始まった事ではなく、美奈であった前世からのものであり、売られた喧嘩は買えるモノは買う主義なのだ。


(はぁ・・、 嫌な人じゃなさそうなんだけどな・・。  よしっ!いっちょやりますかっ!)


ミリアーナは気合を入れ、イザベラに手を振ると生徒の列の中へ戻っていった。



「では、後半の訓練を始める。 前半とは違うペアを組んで待機するように。」


「「「「はいっ」」」」


ヘルムートが近付いてきて声を掛ける。


「じゃ、ミリアーナさん、宜しくお願いします。」


「ええ。 こちらこそ宜しく。」

(さてと・・、どうしようかな・・。)


ミリアーナは本気モードで剣を振る気になっている。


周りの生徒はこの二人を見て「大丈夫なのか?」と気にしている様子だが・・。

それはそうだろう。士官科の生徒以外、男子と手合わせする女子など居ないのだから。

ラインハルト先生も、ミリアーナ達を見て気にしている。

しかしミリアーナは彼と本気で手合わせをするつもりなので、気にしなくて大丈夫ですよの目線をラインハルト先生に送り、それに気付いたのか、先生もそれ以上は何かすることはなかった。

まあ、何かあれば直ぐに止めに来るのだろうが。


「では、訓練を始める。   始めっ!」



「いいわよっ、どこから来てもっ!」


「本当かい? じゃあ、お言葉に甘えて。  行くよっ!」


ヘルムートが剣を構え、ミリアーナへと踏み込んでゆく。

ミリアーナはそのひと振りをまずは剣で受け、続いて振られてくる剣も受け、いなして捌き、様子を見る。


(ふうん、そんな感じね・・。)


やはり相手は男子。大人の男性よりは重くはないが、それでもその剣の一振りは重いと感じる。


(でも、いけるっ!)


ミリアーナは勝ち筋を見つけたのか、剣を構え直してヘルムートに相対する。


(重いけど・・、速さなら負けてないっ!)


ヘルムートへ踏み込むミリアーナ。まずは剣を一振りし、出方を様子見、続いて連撃に移る。


「はあぁぁっ!  やっ!」


剣戟の声が続く。

ヘルムートもその連撃を受け、捌いてくる。


(なかなかやるじゃないっ・・。  でも、勝つ!)


ミリアーナは攻撃の手を緩めることなく連撃を繰り出し、チャンスを窺う。

しかしこのまま剣を振り続けていては疲れてしまうので、早く決着を付けたいところ。

そして。


(今ねっ!)

「はぁっ! やぁっ!!」


ヘルムートの剣を捌き、隙が出来たのを見逃さず、止めの一振りを急所へと繰り出す。


「そこまでっ!」


ラインハルト先生が止めに入った。

ミリアーナの一振りはヘルムートの首筋へと向かうが、寸でのところで剣筋が止まる。


(ふっ。 決まったっ!)


「参りましたっ。」


「いえ、こちらこそ。」

(ふぅっ・・、なかなか強かったわね。  けど、勝ったっ♪)


周りの生徒もこの二人の手合わせに注目していたのか、手合わせが終わると拍手をされていることに気付く。


(ん?? あ・・、  あはは・・)


「では、今日の訓練はここまでとする。」


周りからの拍手に戸惑っていると丁度時間が来たようで、ラインハルト先生が終了の声を掛け、訓練が終わった。



「お疲れ様。  なかなかの手合わせでしたよ。」


「ううん、それほどでもないよぉ。」


イザベラの労いにサラッと答えてみるミリアーナ。


(いや、ホントは結構厳しかったけどね・・)


次の講義があるので、更衣室に向かいながらイザベラと話していると、ヘルムートが声を掛けてきた。


「さっきは手合わせありがとう。」


「いいえ、こちらこそ。」


「やっぱり君は強いね。 また今度、機会があったら宜しく頼むよ。」


「はあ。」

(いやいやっ、次は無いでしょうっ!)


「じゃっ、またっ。」


ヘルムートが去ってゆくのを手を振って見送るミリアーナ。

そのまま更衣室に入り、着替える二人。


(ははは・・はぁ。 疲れた。)


「ミリアーナさん、大丈夫ですか?」


「あ、うん。大丈夫。 あ、次の講義に間に合わなくなっちゃうね。 したら、放課後ねっ。」


「ええ、放課後また。」


イザベラと別れ、次の講義に急いで向かう。

次は素材加工๒で、魔道具に関する講義なので自分の教室で行われる。


教室に入ると、当然だがヘルムートも居る。

がしかし、特に用がある訳でもないので、気にせず受講の準備をすることにした。


(ふぅ・・なんか疲れた・・。)


そのまま講義に入り、魔道具についての話が進んでいるのだが、イマイチ内容が頭に入ってこないミリアーナ。


(それにしてもなんなんだろ。なんで私に色々絡んでくるのかな。)


やはり何となくヘルムートの事が気になるミリアーナ。

そんなことを考えながら講義を聞いていると、やがて時間が来てしまった。


(あ・・ 終わっちゃった。  はぁ・・。 なんだか全然講義の内容が分からなかった・・  あ~っ、もうっ!魔道具の講義だったのにっ!)



今日の出来事に少し不満が残ったミリアーナ。

ホームルームも終わったので校舎のエントランスへ向かい、イザベラとソフィアと落ち合う。


「お疲れぇ・・・」


「お疲れ様。」


「お疲れ様ぁ。 あれ、ミリアーナさん。 どうしたんです?そんなに疲れた顔して?」


イザベラがソフィアにそっと話しかける。


「一時限目に少々ありまして。」


「あ、もしかして今日の剣術の時間の事ですか?」


「ええ、恐らくその事です。」


「あれって、ミリアーナさんの事だったんですかぁ?」


「え?」


「今日の一時限目、剣術の時間に男子と女子で手合わせをして、見事に女子が勝ったって噂があったんですよぉ。」


「はい?」


「あ、とりあえず帰りません? 歩きながらでも話せますし。」


「う、うん。」「そうですね、行きましょう。」


三人は学園を出て、お昼を食べに商業地区に向かって歩きつつ話の続きをする。


しかし既にそんな噂が流れているとは・・・。恐るべし学園の生徒達っ。と思っていると、更に話の続きが。


「士官科の生徒と他の科の生徒同士の手合わせも凄い迫力だったって言う噂も流れているんですけれどね。」


「「え?」」


「それって、もしかしてイザベラさんとミリアーナさんの事だったんです?」


「うっ・・」「・・・。」


「やっぱりそうだったんですか。 だからM、Iコンビがどう~とかって噂も出ていたんですねぇ。」


「え? 何、そのM、Iコンビって。」


イザベラも聞き慣れない言葉を聞き、何だろうかという顔をしている。


「え、知らないんですか?お二人の事ですよ? この学園で、M、I(Miriana、Isabella)コンビって言ったらみんなわかるくらい有名だから、ミリアーナさんはともかく、イザベラさんなら知っていると思っていましたけど・・。」


「え・・?」「えっ・・」


ミリアーナとイザベラはお互い顔を見合わせ、バツが悪そうに顔を赤くしてそっぽを向く。


(くっ・・ なによ、その『M、I』コンビって・・・。 どこの映画よ・・。私はそんなイケメンスパイではないわっ!  ・・ってか、今なんて?)


もちろんその言葉は心の中に留める。映画なんてまだこの世界にはないし、当然だがそんなイケメン俳優の事を言ったって通じないだろう。

ただ、それよりも聞き捨てならない?言葉が聞こえたような気がするが、まあ鈍感なミリアーナなので特に言及することなく話が進む。

しかしイザベラが意外である。他人の情報は結構知っているのに、自分に関する事には疎いようだ。


「イザベラさんとミリアーナさん、剣術の時間に手合わせをすると、いつも気迫の籠った激しい打ち合いをするじゃないですか。」


「ははは・・」


「それに、例の魔物襲撃事件の時の事もありましたしねぇ。」


「・・・・。」


今度はイザベラが気にしているようだ。


「まあそんな訳で、M、Iコンビって言ったらスゴ技少女剣士コンビって言う事なんですよ。」


(あはは~、私、剣士じゃないんだけどな~。)



お喋りしながら歩いているといつの間にか商店が並ぶ通りに来ていたので、いつも通りアルナキロス食堂へと入ることにする。


「あら、いらっしゃい。」


「女将さん、こんにちは~。」「こんにちは。」「どうも~。」


ミリアーナはいつも通りの「どうも~」である。

店内はいつも通りの混み具合。

空いている席を見つけ、早速座る三人。

女将さんにいつものお決まりメニューを頼み、話を再開する。


「うぅ~・・、なんで私に絡んでくるのかなぁ~」


グッタリしながら話し出すミリアーナ。


「ん~、なんででしょうねぇ? 意外に彼、ミリアーナさんの事が好きだったりして?」


ニヤニヤしながらソフィアが言う。


「え~・・ないない。」


「本当にそうでしょうか。 男性というのは好きな方に色々とアプローチしてくると聞いた事がありますが。」


「そうですよぉ。ほら、男の子がちょっかい出してくるって、気になっている人にだったりするらしいですよ?」


「いやいや・・(それ、おこちゃまでわ・・?)」


話していると、頼んだ料理を持って女将さんがやってきた。


「あら、何話してるの? 恋バナかしら?」


「いえっ!ちが――

 「そうなんですよぉ、ミリアーナさんにアプローチしてくる人がいるらしいんですよぉ?」


「あらっ、そうなの~? ミリーちゃんも隅に置けないわねぇ。」


「いやっ、だからちがっ――

  「ええ、今日も少々ありましたし。」


ミリアーナの思う方向から話がどんどん離れてゆく。


(うぅぅ・・ 違うのにぃ・・・)


「で、その男の子の事、ミリーちゃんはどう思っているのかしら?」


「えっ・・・ あっ、そのっ・・  だからちがぅっ・・・」


と、否定をしたものの、自分でも良く分からなくなっている事に気付いて、途中で尻すぼみになってしまうミリアーナ。


(・・・。  はぁ・・・  なんだろ・・・)


「ふふっ。  じゃあ、食事でもして、ひとまず落ち着いてね?」


「あっ、そうですね。 食事にしましょうか。」


「うんうん、そうしましょう~」


二人はそう言うと食事を始め、ミリアーナも釣られて食べ始めるが・・・。

どこか頭の中でヘルムートの事が気になり始めているような感じがして、少し落ち着かないミリアーナであった。



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