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50 ~剣術だ、身体動かすぞっ!  って、はい?~


 昨日は寮に帰ってからお互いの出来事を話し合った三人。

そこでミリアーナはヘルムートの事を話すのだが・・・


「あ、それでね、うちのクラスにヘルムート・エーデルヴィーゼって貴族の男子がいるんだけどね。」


「エーデルヴィーゼ、ですか?」


「あ、うん。そう。ヘルムート・エーデルヴィーゼさん。 そういえば、グロシュテから来たって言ってたんだけど。」


「あ~、やっぱり。エーデルヴィーゼ子爵家って言えば、グロシュテの人はみんな知ってるんじゃないかな?」


「え? そうなの??」


「うん。 エーデルヴィーゼ子爵家は、魔道具子爵って呼ばれているくらい有名だからね~。」


「へぇ・・そうなんだ。」


「ヘルムート・エーデルヴィーゼ、でしたね。」


「うん。」


「確か一年次ではAクラスだったかと。」


「うん、そうだって言ってた。 私もさ~、なんか記憶にあるな~って思っていたんだけれど、去年の校外学習の時、狩猟実習に参加していた男子の一人だったんだよね。」


「あっ、そういえばAクラスにがっしりとした茶髪の男の子が居ましたねぇ。」


「うん、その人。」


「それで、どうしたんです?」


「うん、何って事はないんだけれどね、その、さ。やたら話しかけてくるものだからね。その、どうしようかなって。」


「おやぁ? 何か気に掛けちゃってるんですかぁ?」


「ん?? あ、いや、別に何もないんだけどねっ?」


「その様には見えませんが?」


「うぅ・・イザベラさんまで・・。 だから何でもないんだよ? けどさ、向こうがずっと話しかけてくるものだから、さ・・。」



と、ヘルムートとの出来事を話し、ソフィアとイザベラに、もしや?と思われてしまう一場面もあったのだが、何とか誤解が解けたミリアーナ。

その後、ヘルムートとエーデルヴィーゼ子爵家の事を聞いておいたので、まあ、イイかな?と思っていたのだが・・。



 翌日。

今日も朝から天気が良く、早朝の清々しい空気と共に王都の喧騒が響いてくる。


「おはよっ、イザベラさん。」


「おはよう、ミリアーナさん。」


今日も平常運転のイザベラ。早速お茶を準備してくれる。


「今日もありがとねっ。」


「いえ。」


「うんっ、美味しいっ。」


微笑んで答えるイザベラ。


「あ、今日さ、一本目が剣術なんだけれど、イザベラさんと一緒かなぁ?」


「そうなんですか? では一緒になるかもしれませんね。」


「うん、一緒だったら手合わせ宜しくお願いします。」


「ええ、是非。」


「でもさ~、 昨日の話じゃないけどさ、ヘルムートさんと一緒らしいんだよね。」


「そうなんですか?」


「うん、昨日、帰りがけにそう言われた。」


「そうですか。 それは・・。」


「ん?? また勘違いしてるっ?!」


「いえ、そういう訳では。」


「はぁ・・ 今日も朝から絡まれちゃうのかなぁ・・・。」


「さあ、どうでしょうか。」


「うぅ・・面倒だなぁ・・。」

(まっ、いいか・・  着替えよ・・。)


ヘルムートの事はただ面倒だなと思うだけなので、とりあえず気にしないにしようと着替え始めたミリアーナ。

今日は一本目に剣術だが、どうせ訓練着に着替えるのでスカートをチョイス。

剣を振るのに邪魔になるので、髪は軽く三つ編みにして結う事に。


(よし、準備完了♪)


「そろそろ朝食に行かない?」


「ええ、行きましょうか。」



こうしていつも通り食堂でソフィアと一緒に朝食を取り、三人で学園へと向かい、校舎のエントランスで別れた。


(さってとっ・・教室行こ。)


自分の教室に向かうミリアーナ。

昨日の事を思い出し、ちょっと面倒だな~と思いながら教室に入った。


「おはようございまーす。」



「やぁ、おはよう、ミリアーナ君。」


「レオナール先輩、おはようございます。」


今日もにこやかなレオナールである。



(よしっ、オッケーっ。  これはあとで持ち出すとして・・と。)


とりあえずまずは自分のロッカーに行って、訓練着があることを確認する。


(したら、ホームルームが始まるまで、どうしようかな・・。 そうだ、昨日の魔導術の、イメージする練習をしよう。)


魔導術の教本と持ち出し、自分の席に戻るミリアーナ。


(んーと。 イメージ、イメージ・・・)


教本を魔道具に見立てて、手に魔力を集めてみる。


(ん・・、こんな感じかなぁ?)


と、練習していると、ヘルムートが声を掛けてきた。


「やっ、おはよう、ミリアーナさん。」


「おはよう。 ヘルムートさん。」

 

「何してるんだい?  昨日の魔導術の練習?」


「あ、うん。 そうだけど。」

(ありゃ・・今日も声掛けられちゃったよ・・・。)


「そうなんだ。 昨日の魔導術の実習、結構難しかったよね。 魔力のイメージって、結構気持ちに左右されるっていうかさ。」


「うん、そうだよね。」



「ん? 君達、昨日は魔導術の実習をしたのかい?」


「あ、はい。そうです。」


「魔導術は意外に難しいだろう?」


「はい、そう思いました。」


「まあ、練習あるのみ、だよ。 頑張ってね。」


「「はいっ」」


(・・あ。  ふぅ・・なんだろなぁ。     ん?あ、良かった、やっときてくれた・・。)


ヘルムートと話していたらレオナールに声を掛けられ、ついハモって返事をしてしまったミリアーナ。

朝からなんか調子狂うなぁ・・と思っていたら丁度担任がやってきたので助かったと思ってしまった。


「みんな、おはよう。 今日は午前で終わりの日ですね。 気を緩めずに勉学に励んで下さい。 えー、連絡ですが、皆さんも知っているでしょうけど、来週月曜から新入生がやってきます。皆さん、優しく見守ってやって下さいね。」


(そうだ、来週から新入生が入るんだ。去年の今頃、ウキウキの気分で居たんだったなぁ・・)


と、自分の一年前を思い出して、ちょっとニヤニヤしてしまうミリアーナ。


その後ホームルームも終わったので、すぐに剣術の訓練場に向かおうと準備をし、訓練着を手に持って教室を出たら・・彼である。


「ミリアーナさん、剣術の時間、宜しくね。」


「あ、う、うん。宜しくね。」


よく声掛けてくるなぁ・・と思いながら、訓練場の女子更衣室に入ると、そこにはイザベラの姿があった。


「あっ、イザベラさんっ。 もしかして同じ訓練になった?」


「ええ、今回はミリアーナさんと同じ訓練に参加するようです。」


「ほんとっ! じゃ、手合わせ出来るかもねっ♪」


「ええ、その時は宜しく。」


「うんっ。」


サっと着替えて訓練場に二人で入る。

さすがに並ぶ場所は士官科の人とは違うようなので、手を振って分かれ、私はこっちであろうと思われる列へと並んでみた。


(う~ん。 ここで合ってる・・よね?  ふうん、一応男女別・・かな。)


ササっと並んでみたのだが、どうやら一応男女別に手合わせをするのか、列が分かれているようだ。

そうして何となく周りを見ていると・・

(う・・  いやいや、見ない、見ない。)

ヘルムートが気付いて軽く手を振っているようだったので、とりあえず気付かないフリをしておく。


整列して待っていると、指導の先生達がやってきた。

三人ほどいるようである。

二人は一年の時にもお世話になっているので知っている。ラインハルト先生とアレクサンドル先生だ。

もう一人は・・


(あ、あの人って確か・・  えっと、そうだ、ギュンターさんだ。)


そう、去年の校外実習で警護の担当をしてくれていた騎士隊の一人だ。

あまり人の名前を覚えるのが得意ではないミリアーナなのだが、この時は例の事件が起きた事もあり、色々良く覚えているのだった。


「では、これより剣術の訓練を始める。 今日は外部の講師として、第六王都警護隊からギュンター・マイントラートさんに来て頂いて居ます。」


「えー、王国第五師団、第六王都警護隊、第五小隊のギュンター・マイントラートです。去年、こちらの校外学習の時にも来た事があるんだけれど、覚えている人もいるかな?  今年からこちらの剣術訓練の外部指導者として、皆さんの指導に当たる事になりました。 まあ、持ち回りなんで、毎度ではないんだけれどね。そんな訳なんで、宜しく。」


「ギュンターさん、有難う御座います。 それでは、早速訓練に入る。 まずは軽く体を動かし、そのあと手合わせ形式の訓練とする。 では各自、自分に合う長さの木剣を持ち出して準備運動を始めるように。」


生徒の皆はそれぞれ木剣を持ち出し、軽く準備運動を始めた。

ミリアーナも続くように準備運動を始める。


(よしっ、二か月ぶりっ! しっかり身体動かすぞ~っ!)


ミリアーナ自身は春休み中も実家で毎日剣を振っていたが、学園での訓練は2か月ぶりである。


各々準備運動が済んだ辺りで、整列の声が掛かる。


「では、これから少し素振りをして、手合わせの訓練を行う。」


「「「「はいっ」」」」


生徒達それぞれが素振りを始める。


(ん~っ、やっぱり剣を振るのは楽しいっ!)


暫くし、再び指示が入る。


「では、手合わせの訓練に入る。 それぞれペアを組んでみて欲しい。」


(お~し、  では・・いざっ!)


ミリアーナはイザベラの居る方へと駆け寄り、声を掛ける。


「イザベラさん、宜しくお願いしますっ!」


「はい。此方こそ宜しくお願いします。」


士官科やその他の生徒はミリアーナ達の方を見て少し心配そうな顔をしている。

それはそうだろう。士官科の生徒に、他の科の生徒が組んでいるのだから。

しかしこの二人の事を知っているラインハルト先生は、特に気に留める事もなく先に進めてくれるようだ。


「では、ペアが組めたようなので打ち込み練習を始める。  始めっ!」


今回の剣術訓練に参加している生徒は、士官科は二年次の生徒だけ、そしてその他の科の生徒は、学年はまちまちである。


「では、いきますっ!」


「ええ、何処からでもどうぞっ!」


イザベラとミリアーナの手合わせが始まった。

この二人、毎度の事ではあるが、結構激しく打ち込むのである。


カンカンバチバチと激しい音が響く。


(さすがイザベラさん。 いつもながら凄いね・・っ!)


お互い良く知っている剣筋。

互いに隙を窺っては激しく打ち込んでゆく。


そして、剣が重なり、睨み合う。


「流石ですねっ。」


「いえっ!そちらこそっ!」


いつの間にか周りの生徒がミリアーナ達を気にし始め、チラチラと見ているようだ。


二人は一旦距離を取る。


(ん。よしっ!)

「はあぁぁぁっ!!」


ミリアーナが剣を構え、踏み込み、激しく剣が重なる。

しかし・・・


「あっ!・・・」


カンッ!・・・カランカンコン


「参りましたっ!」


「いえっ、此方こそっ!」


またしてもイザベラに剣を弾かれ、飛ばされてしまったミリアーナ。

しかし、毎度の事だが、イザベラに剣を弾かれ、飛ばされても嫌な思いはしない。

寧ろ、剣では圧倒的に優れているであろうイザベラが、本気で剣を交えてくれる事を嬉しいとさえ思うのだ。


周りの生徒が今の打ち込み合いを見て感心しているようだが、いつもの事なのでスルーしておくミリアーナ。

それなりの時間打ち込み合っていたので、ここで小休止となった。


「では、少し気休憩を取り、ペアを変えて再び練習に入る事とする。」



二人で訓練場の片隅に座り、話をする。


「いつもありがとねっ、イザベラさんっ。」


「いえ。此方こそ。」


「ほんと、イザベラさん、強いんだもんな~。」


「それほどでは・・。 ミリアーナさんこそ、凄いと思いますが。」


「ううん。私のはさ、ほら、ただの遊び?  だから勝てなくて当然だし、比べちゃいけないんだけどさっ。」


イザベラとしては、ただの遊びでここまでの剣の強さを持っている事の方が不思議だと思っているのだが・・。


二人並んで話していると、そこへヘルムートが近付いてきた。


「やあ、ミリアーナさん。 さっきの打ち込み合い、凄かったね。」


イザベラがミリアーナに視線を向けたので、ミリアーナはうん、と頷く。


「ううん、大した事ないよぉ~。」


「いやいや、凄かったよ。  隣の君はイザベラさんだよね。一年の時から噂になっているよ。凄い剣術少女だって。」


「それほどではないと思いますが。」


「はははっ。 君らコンビは結構注目されていると思うけど?」


(え??)


「一年の時、剣術の授業でいつも激しく打ち込み合っていた事も、例の校外学習の、魔物襲撃事件の時の事もね。」


「そ、そうなんだ~。 あははは~。」


「それで、何か御用でしょうか?」


「ははっ 冷たいなぁ。  えっと、うん。  ミリアーナさん、次、手合わせお願い出来るかな?」 


「へ?私っ?」


「うん、他に居ないよね。」


「いやいや・・」

(ちょっ、待ってよ・・ あなた男子でしょ・・。)


「流石に男子が女子と手合わせするのはどうかと思いますが。」


「いや、ミリアーナさんなら大丈夫かな?って思ってさ。」


「はい??」



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