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47 ~今日から講義だっ~


 昨日は新学期早々、魔道具師科新二年代表として壇上に立たされ、おまけに身分が上の侯爵家のレオナール先輩との事もあって神経をすり減らしてしまったミリアーナ。

そういう事が苦手なミリアーナは、帰る頃にはグッタリしていたが、イザベラの機転で元気を取り戻し、寮に着く頃にはゴキゲンとなっていた。


そして昨日は寮に帰った後にレオナール先輩やヴィアディック家についてしっかりとイザベラに聞き、次から不安にならずに済む・・ようにしておいたのだった。



早朝。春の麗らかな日差しと共に、王都の街の活気付いた騒めきが聞こえてくる。


んん~っ・・

「おっはよーっ、イザベラさんっ♪」


「おはよう、ミリアーナさん。」


「よーしっ!今日から授業本番っ! 魔道具師目指して頑張るぞ~っ♪」


既に着替え終えているイザベラは、今朝も変わらず窓辺で朝の一杯(モーニングティー)を楽しんでいる。

今日のイザベラは、身体を動かす訓練に適した、軍服の様な装いである。

当面はこの服装で行くのだろう。


「おっ、今朝もカッコ良く決まってますねぇ、イザベラさんっ。」


「朝から何を言っているんですか。  はい、どうぞ。」


早速お茶を注いでくれるイザベラ。


「いつもありがとっ♪」


ミリアーナの感謝の言葉にイザベラはニコリと微笑む。


お茶を1杯楽しんだミリアーナ。すぐに着替え、昨日渡されたバッジを胸に着けてちょっとニヤニヤする。

今日は午後に実習があるので、ボトムスは動きやすくキュロットにする。

そして登校準備をしながら、配られた授業表を見て考える。


(今日から授業が選択制になるんだよね・・。 どういう感じになるんだろう・・?)


「ねぇ、イザベラさん。今日から授業が個人の選択制になるじゃない?」


「ええ、そうですね。」


「イザベラさんは、今学期をどういう風に授業を受けるかもう決めてあるんでしょ?」


「一応は。」


「そっか。  うーん・・  どうしよう、これでいいかな・・。」


二月の修了式の時に新学期からの各科の授業工程表を配られており、一応はそれを見てどうするかを決め、前期に受ける授業についての計画表を担任に提出してあるのだが、改めて授業表を見て、どうしようかと考えてしまったミリアーナ。

魔道具の事ばかり勉強していてもつまらないと考えたミリアーナ。身体も動かしたいので、週に何日か剣術や体術の授業を受けようと、日程を組んでみてはあるのだが・・。

しかし受けてみたい授業は沢山ある。

魔道具に関する学問は当然として、ミリアーナには剣術や体術も切り離せない。薬学も少しは勉強したいし、個人的興味で調理学や食物学も受けてみたい。馬術もそのうち受けてみたいと思うし、魔道具に応用出来るかも知れないから弓術も知っておきたい。

とにかく受けてみたい講義が多過ぎるのだ。


(うぅ・・これって、卒業までに全部受けられるのかな・・)


今から考えても仕方がないはずなのだが。


(うん、やっぱり前期はこれで行こう。)

「よしっ、朝ごはん食べに行かない?」


「そうですね、行きましょうか。」




ミリアーナの考えた前期授業日程はこうだ。


月曜=体術๑、魔導学๑(基礎)、魔導錬金学๑、魔導錬金術๑

火曜=魔石学๒(魔物魔石)、魔物生物学๑、冶金学、冶金術๑

水曜=剣術๑、素材加工学๑(一般道具)、冶金学、鍛冶加工術๑

木曜=魔石学๑(鉱物魔石)、算術๑、素材加工学๒(魔道具)、魔導錬金学๑

金曜=魔導学๑、魔物生物学๑、素材加工学๑、魔導術๑

土曜=剣術๑、素材加工学๒ (半日)

(※各科目の๑、๒は、それぞれ1,2と読みます。)

(※冶金術=一般的な素材を作る術、魔導錬金術=魔力が介在する特殊な材料を作る術)


細かく授業科目が分かれており、それぞれの科目が半年、もしくは一年間で講義が纏るようになっている。


魔道具は、魔導術、冶金術、鍛冶加工術の総合知識で作り上げるものであり、そこに魔導錬金術が加わるとより深く理解して作り上げる事が出来るものである。

良い魔道具師になる為には、より広い知識を求めて魔石に関する魔物生物学や草木学、それに付随して薬学、そして算術など様々な事を学ばなくてはならないので、ミリアーナとしてはより沢山の知識を学ぶ為に色々考えてみたのだ。


ちなみにミリアーナは前世では大学などに行った事がないので、シラバスなんて言葉は知らないし、単位制のカリキュラムも初めての経験である。




食堂に降り、ソフィアを見つけるミリアーナ。


「おっはよー、ソフィアさんっ♪」


「おはよう、ミリアーナさん。 なにやら今朝は元気ですねぇ。」


「うんっ、だって今日から本格的に魔道具の勉強が出来るんだもんっ♪」


「さすがミリアーナさん、魔道具の事になると元気満タンですねぇ。」


「えへへ~♪」


「イザベラさんも今日から本格始動ですね?」


「ええ、今日からは騎士への修行の様なものですから。」


「おぉ~、気合入ってますねぇ~。 私も夢に向けて頑張らなくちゃ。」


三人はそれぞれ自分の将来の夢へ向けて、今日から始まる専門授業に期待を膨らましているのだった。



朝食を済ませた三人は普段通り揃って学園へ登校し、校舎入り口で各々の教室へと別れていった。


(さっ、今日の授業はっと・・。 まずは魔導学だね。)


ちなみに今日は金曜日である。

魔導学はロベルト先生の講義なので、自分達の教室で行われる。


まずは朝のホームルームが行われるので、とりあえず自分の教室へと急ぐことにするミリアーナ。


(よしっ。)


魔道具師科の教室へ入るのはちょっと変な感じがするので、入る前に気合を入れなおすミリアーナ。

上級生と一緒という事に慣れるまではこうなってしまうだろう。


「おはようございまーす。」


「おはよう、ミリアーナ君。」


「あっ、おはようございます、レオナールさ・・先輩。」


「今日から授業が本格的に始まるから宜しくね。」


「は、はいっ、こちらこそ宜しくお願いしますっ。」


「もう受ける授業は決めてあるのかい?」


「はいっ。決めた日程計画表はロベルト先生に提出してあります。」


「そうか。 ちなみに今日の一時間目は何を受けるんだい?」


「今日この後は魔導学๑を受けて、二時間目は魔物生物学๑です。」


「そうなんだ。頑張ってね。」


「あ、はいっ。」


レオナールはにっこりとほほ笑むと、自分の席へと戻っていったので、ミリアーナも席に着くことにした。



担任のロベルト先生が来て、とりあえず朝のホームルームが始まる。


「おはよう、みんな。 今日から本格的に授業が始まるから、新二年生は講義を受ける感覚に早く慣れて下さいね。」


「「「「はいっ」」」」


「ちなみにこのあと一時間目に、ここで私の講義を受ける生徒はどれくらいいるのかな?」


ロベルト先生に言われ、一時間目に授業を受ける生徒が手を挙げる。


「そうか。これくらい居るんだね。 うん、そうか。ありがとう。」


新二年生の半分ほどが手を挙げ、先輩達も含めると三分の一くらいの生徒が手を挙げたようだ。


「ああ、授業は選択制だから、もちろん他の科の生徒も講義を受けに来るからね。新二年生のみんなはその辺りも早く慣れて下さいね。」


新二年生達は皆頷く。


「連絡事項は私の方からは以上だけれど、みんなからは特にないかな?」


先生は生徒を見渡す。


「どうやらなさそうだね。 では、このあと一時間目が始まるから、皆さん移動して下さいね。」


二年次からは自分達の所属教室はあるが、その所属教室では基本的にホームルームだけが行われ、授業科目については、受講する講義によってそれぞれの学科が行われる教室や実習場に各自移動して受ける事になる。


ホームルームが終わると生徒達はそれぞれ自分の受講する科目の教室へと移動して行った。

ミリアーナは引き続きこの教室で講義を受けるので席に座ったまま残っていると、他の科の生徒達がぞろぞろと入ってきて席へと着いていく。


(あ、他の科の生徒さんだ・・。 ふうん、結構適当に座って講義を受けるんだね。)


自分に必要と判断した生徒がそれぞれの講義を受けるので、学年もバラバラの生徒達である。

ふと自分と同じ科の生徒の事が気になって探してみていると、一人の男子に気が付いた。


(えっと、あの男子って確か・・・)


三つ後ろの席に座っている男子は、濃い茶髪でちょっとがっしりした体つきに見える。

ミリアーナが見ていることに気付いたその男子は、席を立ち、こちらにやってきた。


「やあ、何か用?」


「えっ、いや、その・・。」

(特に用は無いなんて言えないじゃんっ・・)


「ミリアーナさん、だったっけ? 昨日は大変だったね。 僕はヘルムート・エーデルヴィーゼ。一年の時はAクラスに居たんだ。宜しくね。」


「あ、うん。宜しくね。」


結構気安く話しかけてきたこの男子。

去年の郊外授業の時に、狩猟実習に参加していた、Aクラスの男子の一人だ。

それで何となく記憶にあったのだと思い出したミリアーナ。


ヘルムートと話しているうちに、一時間目の講義が始まる鐘が鳴り、ロベルト先生が再びやってきた。

ヘルムート「じゃ。」と言って自分の席に戻ると、何事も無かったかのように授業が始まるのを待っているようだ。

ミリアーナもとりあえず授業の方へ気持ちを切り替え、集中することに。


(よしっ、初授業!どんな感じかなぁ?)


ロベルト先生が壇上に着き、講義が始まった。


「えー、皆さんおはよう。この魔導学の授業を今日から初めて受ける人が多いと思うので、今日は魔導について大まかなところを述べていきたいと思います。」


生徒の皆が授業に集中し始める。


「では、魔導とは何なのかですが、簡単に言うと魔導とは魔力を魔道具などに付与する事を言います。

  魔導学では、魔力がどのように魔道具などに導かれ、作用してゆくのか、また、どのようにすると効率良く導かれるのか。そのような事を考えてゆきます。」


「魔導の歴史というのは大変古く、文献に残るものとしては―――



講義が進んでゆき、そして一時限目終了の鐘が鳴る。


(ふうっ、一時間目終わりっ♪  楽しかった~。)


ミリアーナ待望の魔道具に関する初めての講義が終わり、まずまずの感触を得たようだ。


(次の時間は魔物生物学だっ。)



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