44 ~一年次終わりっ~
進級試験と適性試験を無事に終えたミリアーナ。
ミリアーナは面接の時に進級出来るのか直接聞いてしまっていたが、その後、生徒全員の進級の合否も発表され、イザベラとソフィアも希望の科へ進級出来る事が分かり、三人で喜び合ったのであった。
ちなみに、進級試験で落第する生徒はまず居ないそうで、落第するとすれば病気等で出席日数が足りない場合などだそうだ。しかし素行不良等で退学処分はあるとか。
今年は全員進級出来たとの事だが、適性試験の結果、進級先を変更した生徒が一割程居たそうである。
この適性試験では毎年進級先の変更を求められる生徒が少なからず居るそうで、ほとんどの場合は生徒の親が第一志望を決めていた場合だそうだ。
そして、なぜ適正「検査」ではなく「試験」と言っているのか。
これは、過去に「検査」の結果と言って説明していた時、「検査方法が正しくない」と難癖をつけた親が居たとかで、「試験」の結果と言って説明するようになってからは何故か皆納得しているのだそうだ。
どこの世界もモンスターな方々は居るらしい・・・
そしてもうすぐ春の長期休暇がやってくる。
それが終われば二年次へ進級となる。
ミリアーナ待望の魔道具師科の生徒になる四月であり、また、新入生が入ってくる春でもある。
しかし新年度からイザベラやソフィアとは違うクラスになるのは少し寂しいと思うのも事実であった。
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二月の終わり。
もう雪が降る事はなくなったが、それでも冬の寒さが残る風は冷たい。
そして今日もミリアーナ達は王都の活気溢れる声で朝を迎えている。
「おはよっ。今日で一年次の授業も終わりだね。」
「おはよう。 そうですね。長いようで短い一年でしたね。」
「だよねぇ。 今日で三人同じ教室で勉強するのも終わりなのかぁ・・」
「寂しいですか?」
「うん・・。 少しね。」
「来年度からはクラスこそ違いますが、受ける授業によってはまた一緒になる事もあるのでは?」
「うん。そうだよねっ。みんな同じ学園に通っているんだしね。」
二年次からは、各科毎に卒業に必要な単位を取得する為に、その目的に合った授業科目を生徒自身で決めて受講するようになる。もちろん、受講する内容も順番も自由。卒業するまでの残り三年間で最低単位を取る事が出来れば、卒業も出来る仕組みだ。
しかし毎年一年間の終わりには、一応だがその年にどれくらい勉学に励んだかの試験は行われるので、イイ加減に授業を受ける訳にはいかないようになっている。
そして各自で好きに受講内容を決められるという事で、単位を取るのに必要な科目の他に、生徒個人が受けてみたいと思った授業を自由に取る事も出来たりもするのだ。
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そしてソフィアと朝食を共にし、学園へ。
三人で一年間にあった事を話しながら教室へと向かう。
教室では他の生徒達も一年間にあった出来事などを話している者が多く、中には寂しいのか憂鬱な顔をした子も。
そんな中、ハインリヒ先生がやってきた。
「おはよう。 今日で一年次の授業が終わりになる。それぞれ思うところもあるだろうが、今日一日もしっかり授業に取り組んでもらいたい。」
生徒達は思い思いに返事をする。
「明後日は学園の卒業式になる。君達は特に出席する必要はないが、各クラスの代表で一名ずつ参列してもらう事になる。 代表者はこちらで決めてあるので、あとでその者を呼ぶから宜しくお願いしたい。 以上だ。」
生徒達が顔を見合わせる。
誰が代表になるのか皆興味があるようだ。
そして午前の授業が終わり、お昼にしようかと教室を出たところ、担任から呼び止められた。
「イザベラ君、すまないがちょっと良いかな?」
「はい、なんでしょうか。」
「君に1Bの代表として明後日の卒業式に参列してもらいたいのだが、良いだろうか。」
廊下にいる他の生徒も気になるようで、こちらを注目している。
イザベラは少しの間考え、返事をする。
「構いませんが、私で良いのですか?」
「うむ。こちらで検討した結果だ。」
「そうですか。 では、お引き受け致します。」
「そうか。では、すまないが今日の放課後、職員室まで来てくれないか。参列に付いての説明をしたい。」
「分かりました。」
話が終わるとハインリヒ先生はどこかへと歩いて行った。
「え?今のって・・」
「やっぱりイザベラさんが成績優秀だからですかねぇ?」
イザベラは苦笑いをして応える。
「なんだか面倒だね。」
「まあ、仕方ありません。」
「とりあえず、お昼にしません?」
「うん、そだね。 行こ?」
「ええ。」
そして三人、昼食へと向かった。
午後の授業が始まり、本当にこれが今年度最後の授業なんだなと思いながら講義を聞くミリアーナ。
今日はこの午後前半の授業で終わりになり、後半は一年生全員が講堂に移動して修了式を迎える。
修了式があるのは一年次だけで、二年次からは特に無く、次に締めの式典があるのは三年後の初等科の卒業式になる。
(一年って、早いな・・。 この授業が終わったら修了式やって、明日から春休みか・・)
などと物思いに耽りながら授業を聞き、終了の鐘が鳴った。
(終わっちゃった。 さっ、これから講堂へ移動、と。)
「授業、終わっちゃいましたねぇ。」
「うん。 だね。 なんかあっという間だった気がする。」
「一年経つのは早いものですね。 では、移動しませんか?」
「「うん。」」
そして修了式。
一年の総括として、学園長から話があるようだ。
「一年生の諸君、一年間、よく頑張った。 ここにいる全員が進級出来る事はとても素晴らしい事である。
明日から一か月、春の長期休暇となるが、4月からは君達それぞれの将来にも繋がる専門課程に入る事になる。そしてまた新一年生が入ってくる事にもなる。君らも先輩となるのだから、気を引き締めて頑張って貰いたい。 では諸君、新学期にまた逢おう。 以上だ。」
相変わらずの挨拶である。
他に大した話もなく修了式が終わり、各自教室に戻るとホームルームになった。
「では、これで一年次も終了となる。明日から春休みになるが、あまり気を抜かないように過ごすように。今回は特に宿題も出す予定はない。各自、4月からの授業に繋がる様な自主勉強をしておくように。 以上だ。 解散っ。」
そしてイザベラが呼び出される。
「ではイザベラ君。これから説明をするから職員室まで来るように。」
「はい。」
ハインリヒ先生はそれだけ話すと、先に職員室へ戻っていった。
「大変ですねぇ。」
「仕方ありません。」
「どうする? 終わるまで待ってようか?」
「いえ、どれ位掛かるか分からないので、先に帰った方が良いかと。」
「そう? わかった。 先に帰ってるから、イザベラさんも気を付けて帰って来てね。」
「ええ、ありがとう。 では、行ってきます。」
イザベラはそう言うと職員室へと向かっていった。
「仕方ありませんねぇ。では私達は先に帰りますか。」
「そうだね。 帰ろっか。」
こうして一年次の最後の日は終わったのだった。
翌々日、イザベラは卒業式に参列し、ミリアーナ達は本当に一年次の一区切りを迎えるのであった。
そして春休みに入るとイザベラとソフィアは帰省し、ミリアーナも王都にいる親戚達に挨拶をしてから、家族の待つランシュットへと帰っていった。
これで第二章一年次編は終わりとなります。
次回、閑話を一つ挿んで、第三章、魔道具師科編に入ります。
ミリアーナの前世の知識が生き始める・・筈です(笑)
次回ですが、すみませんが少しお休みを頂き、5/3土曜日に更新します。
その次の第三章は少し間が空くと思いますが、更新前に活動報告でお伝え致しますので、それまでお待ち頂けると幸いです。




