43 ~続けて適性試験と面接っ~
翌日。
昨日の試験を余裕で回答出来たので、しっかり寝る事が出来たミリアーナ、朝からゴキゲンの目覚めだ。
「おっはよ~っ、イザベラさんっ♪」
「おはよう、ミリアーナさん。」
イザベラは今朝も平常運転のようで、窓辺でのんびりとお茶をしている。
「昨夜は良く寝られたようですね。」
「うんっ。えへへっ。」
ミリアーナのカップにお茶を注ぎ、差し出すイザベラ。
「ありがとう。 ねぇ、今日の試験ってどんなだろうね? あれかなぁ?『あなたはこんな仕事が向いていますよー』みたいな事が分かるのかな?」
「進級希望の科に向いているか、それを見るのでは?」
「うん、まあそうだよね。 これでさ、あとの面接で『あなたはそれに向いてませんよー』なんて言われたら、結構ショックだったりするかもね。」
「それは誰にでもあり得る事なのでは。」
「うん。でもさ、もし、だよ? イザベラさんがさ、『あなたは士官に向いていません』なんて面と向かって言われたりしたらショックじゃない?」
「まあ、それは・・」
「私だったらさ、そんなの面と向かって言われたら、ショックで寝込んじゃうかも。」
イザベラは微笑んで返す。
「ま、やって見なきゃわからないんだけどさ。」
などと他愛もない話をし、朝食に向かう二人。
「おはよー、イザベラさん、ミリアーナさん。」
「おはよっ。」「おはよう、ソフィアさん。」
「あ、今朝は眠そうじゃなさそうですねぇ?」
「えへへ、今日はしっかり寝られました。」
「じゃあ、早く朝ごはん食べて学園へ行きましょー。」
「そうだねー。」「ええ、そうしましょう。」
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今日も担任と監督官の事務さんがやってきた。
「では、今日はこれから適性試験を行う。試験と言っても、学科の出来を見るものではないので安心してほしい。」
そんなハインリヒ先生の言葉を聞き、生徒達は少し安堵する。
「では、何を見るのかと言うと、君達の考え方や思考の速さを見るので、問題によって制限時間があったりするから気を付けて欲しい。」
(なんだ、普通の適性検査かな?)
「では、これから試験問題を配る。 指示があるまで、裏返したまま中は見ないようにしてほしい。」
そう言うと事務さんが問題を配り、行き渡る。
「では、始めの10問は制限時間があるから、こちらの指示に従ってページを開いて貰いたい。」
そう言うと、早速試験が始まった。
「では1ページ目、始めっ。」
(なになに? あなたはこの絵を見て、何を感じますか。 次から自分の考えに最も近いものを選べ。 ・・・。 まるっきり適性検査じゃんっ!)
そんなこんなで10問。
「では、次も10問も時間制限があるが、今度は制限時間内にどれだけ回答出来るかを見ます。簡単な計算だから、気を楽にして取り掛かる事。」
(うわ~・・・、 私、これ嫌いなのよね・・・。)
どうって事のない問題なのだが、時間制限に焦り、慌ててしまうのだ。
「では、始めっ」
(はぁ・・ がんばろっ!)
深呼吸をして取り掛かるミリアーナ。
そしてこれも地道にこなし、次が最終問題のようだ。
「では、次が最終問題です。自由記述だから時間は30分。時間は十分にあるから、気楽に取り掛かるように。 では、始めっ。」
ページを捲るミリアーナ。
(なになに・・? 属性魔力に付いて。あなたは自分が持つ属性魔力を、どのように使いたいですか? 思いついた事を自由に書いて下さい。 ・・・。 え?)
記述問題なのだが、少し予想外である。
(んん・・? 何を書こう・・?)
ミリアーナが持っている属性魔力は主に水だが、風も持ち合わせている。
(んんん? これって、普通に考えたら、自分の魔力を魔道具に使う以外は無いのだけれど・・。)
この世界の魔力は、魔道具や魔剣など、何かしらの道具を介して魔力を発動しなければ顕現出来ない。
(う~ん。前世で見てたラノベとかアニメだったら、魔法発動は詠唱とかすれば出来たはず・・なんだけどねぇ。詠唱破棄!とか、チートで転移魔法!とかさ(笑)。 あと、空間魔法なんてものがあったりしてねぇ・・)
前世の余計な知識である。
そんな事を書いたら、変な目で見られること請け合いである。
(さて、書かなきゃね。)
ふと、思ったミリアーナ。
(あれ? そういえば魔法のステッキって・・・魔道具じゃん?? けど、あれはステッキ一つで色んな事が出来ちゃうんだよねぇ・・・。)
( !! そうだっ・・・)
何やら思いついたミリアーナ。
(ふっふっふ。 いつかこれを作って見せるっ! それで、この魔道具で複数属性が使えるようになれば・・・。)
ニヤニヤしながら回答を記入するミリアーナ。
この設問は答えが有って無いようなモノではないかっ!と、勝手に考えて書き始めるのだった。
そして時間が来る。
「それでは、ここまでっ。 では、これから記入した用紙を回収して、昼休みとします。」
「午後は運動の時間なので、時間に遅れないように。」
生徒達は返事をし、昼休みへと入っていく。
「終わりましたね。」
「うん、終わったねぇ。」
「ねぇねぇ、最後の設問、なんて書いた?」
「それは・・」「話せませんよぉ~。」
「だよね~。 私も話せないもん。 えへっ。」
イザベラとソフィアにジト目で見られたミリアーナであった。
~~~~~~~~~~~~~~~
そして数日後。
面接が行われる日がやってきた。
何日かに分けて行われ、一人ずつ授業を抜けて面接を受ける形式らしい。
教室でホームルームが始まる。
「今日はこのあと、授業中に一人ずつ面接へと呼び出すようになるから、呼び出された生徒は面接室に向かうように。」
面接室は職員室の隣。
そこへ行くのは緊張する場所である。
そして順番に呼び出されてゆく。
いつもの三人なら、やはりイザベラからである。
午前中が終わり、今はお昼。
「イザベラさん、まだ呼ばれないね。」
「ええ、このペースと順番から考えると、早くても今日の午後、後半ではないかと。」
「そうですよね。もしかすると明日だったりしません?」
「あり得ますね。」
そして、本当に呼ばれずに一日目が終わる。
「呼ばれませんでしたね。」
「ええ。でも、明日一番です。」
「うわ~・・。 それって、緊張するヤツじゃない?」
「まあ、イザベラさんなら大丈夫ですよね?」
「・・、 まぁ、そう・・ですね。」
イザベラには珍しく、微妙に間がある返事だ。
そして翌日。
「イザベラ・ローズベルク君。 では、面接室へ移動して下さい。」
「はい。」
午前の授業が始まる直前、イザベラが呼び出された。
ミリアーナはイザベラにグーの手を見せてエールを送ると、イザベラが手を振って返事をし、教室を出て行った。
(頑張って、イザベラさん。)
そして30分ほどすると戻ってきた。
「失礼します。」
授業中なので、一言断って教室に入るイザベラ。
ミリアーナとソフィアが手を振ってイザベラを迎え入れ、そのまま授業が続き、そして一時間目が終わる。
「おかえり、イザベラさん。それで、どうでした?」
「ええ・・。色々と訊かれましたが、特に問題は無かったかと。」
「じゃあ、来年は士官科に上がれそうな感じ?」
「ええ、恐らくは。」
「そっかぁ、良かったじゃん!」
「ありがとう。」
「そういえば、この順番で行くと、今日の最後はミリアーナさんじゃないです?」
「あ・・・。 そうかも。」
そして昼を過ぎ、午後の授業に入る。
そして午後、後半の授業の途中にミリアーナが呼び出された。
「ミリアーナ・ウィルヴィレッジ君。」
「はいっ。」
「面接の時間です。では、移動して下さい。」
「は、はいっ。」
昼ですら変に緊張して食事を楽しめなかったのだ。今が緊張しない訳が無い。
ソフィアが手を振り、イザベラは微笑んでミリアーナを見送る。
ミリアーナは一応手を振り返すものの、緊張でそれどころではない様子。
面接室へと急ぐミリアーナ。
変な汗がだんだんと出てくる。
(うぅ・・ 焦るな・・焦るな・・。落ち着けぇ・・落ち着けぇ・・。)
何を緊張しているのか。
まあ、これがミリアーナなのだ。
貴族として転生したが、心は小市民である。
どうあっても悪女キャラには程遠いミリアーナなのだから。
そして到着。
すぐに中へと呼ばれ、入室するミリアーナ。
ロベルト先生が呼び掛ける。
「ミリアーナ・ウィルヴィレッジ君。」
「ふぁ、ひゃいっ。」
(う・・、変な声出ちゃった・・)
「では、そちらへ掛けて下さい。」
「は、はい。」
「そんなに緊張しなくても、大丈夫ですよ。」
「はい・・。」
面接官として三人。
複数の面接官による面接は入学試験以来である。
今回は希望する科の先生が担当するようだ。
が、しかし。
(えぇ~・・、なぜ学園長さんが・・?)
そこに座っているのは・・、ガブリエラ学園長、魔導錬金術のアルフレッド先生、そして魔道学のロベルト先生である。
そう、何故か担任が居ないのだ。
ロベルト先生が質問官として話し始めた。
「では、いくつかお話ししますので気を楽に。」
「はいっ」
「ミリアーナ君、まず、君の進級試験の結果ですが―――
(ゴクリ・・)
―――、中々優秀でした。問題なく進級出来ます。 頑張りましたね。」
「は、はいっ。 ありがとうございますっ」
「では、次に・・、適性試験の結果ですが。」
「はい・・。」
「結果としては問題ありません。しかし・・。最後の設問の答えですが・・・。」
「はい・・」
(うっ・・まずかった・・かな?)
そう、最後の設問のミリアーナの回答は・・。
自分の魔力が複数あったことから、『多属性の魔力を自由に扱えて、そして頭で想像した魔力の形を顕現させる魔道具を作って、自分の魔力を好きに使ってみたい。』と回答したのだ。
まさに魔法のステッキなのだが・・・。
「なかなか面白い回答でした。」
そしてここで面接官全員がクスリと笑う。
(あぁぁ・・、まずかったよねぇ・・やっぱりぃ・・・。)
「いえ、良いのですよ。とても良い発想ですし、もしそれが実現出来たら、それは凄い事なのですから。」
「はい・・。」
落ち込むミリアーナ。
ここでアルフレッド先生から質問が出る。
「君は魔力に付いて、どのように考えていますか? あー、例えばね、魔力はただの力だと思っていますか?」
「はい・・。えっと・・、魔力は魔石からはその属性の力が出てくる物だと思うんですけれど・・、人間から出る物は、その・・、ただの力ってだけじゃなくて・・、その人の想い、形が影響して顕現するんじゃないかな・・って思うんです。」
「ほう。」「それで?」
「だから、例えば魔剣に魔力を乗せる時、その人の想い、考えた形が影響して、その威力や顕現した形が出るんじゃないかなって。 えっと・・、風なら、その飛ぶ距離や大きさ、火ならその大きさや形が、その剣を振った人の思い描いた形が影響しているんじゃないかって。」
「ほう。なるほど。」
「面白いね。」
「だから、魔剣だけでなく、魔道具で何か思い描いた形を顕現出来るんじゃないかって思ったんです。」
「なるほど。 わかりました、ありがとう。」
「はい。」
「では、先生方。 他に何か話す事があれば。」
学園長が手を挙げる。
「お久しぶり、ミリアーナさん。入学試験の面接以来ね。」
「は、はいっ。」
「ふふっ。 では私からも。 あなたは人の魔力の事を『思い描いた力』として考えている様だけれど・・、それはどこからその発想をしたの?」
「はい・・。 えっと、その、校外授業の時に魔物に襲われて、その時に剣技としてイザベラさんとパトリック君が属性付与をしていたのを見て、その・・ その、繰り出した魔力の形が、ただ剣を振って魔力を乗せたって感じがしなくて・・。 それで、もしかしたらって思って・・・。」
まさか、『前世でアニメで見ました~』なんて言える筈もなく。
どうにか理由を付けて話してみたミリアーナ。
「なるほどね。 そう、分かったわ。 有難う。」
「はい。」
(ふぅ・・、なんとかなった・・かな?)
「では、他には。 ミリアーナ君からでも良いのですよ?」
「あ、えっと・・。 私からは何も・・。」
「本当に良いのですか?」
「あ・・。 したら、その・・。」
「はい、どうぞ?」
「えっと、その・・。 私、魔道具師科に、入れますか?」
先生方が目を見合わせる。
「君はどうしたいですか?」
「はいっ!もちろん入りたいですっ。 でも・・・。」
「でも?」
「いえっ、その・・駄目なの・・かなって・・。」
先生方が皆ニコリとする。
「大丈夫ですよ。 合格です。歓迎しますよ。」
「ほんとですかっ!? ありがとうございますっ!!」
「では皆さん、宜しいでしょうか? はい。では面接はこれで終わりです。ご苦労様でした。」
「はいっ!ありがとうございましたっ!」
立ち上がり、退室するミリアーナ。
「失礼しましたっ。」
そんなミリアーナを三人の面接官達は微笑んで見送るのだった。
そして教室へと向かうミリアーナ。
(あぁっ・・・、緊張したぁっ・・。)
平常運転?である。
~~~~~~~~~~~~~~~
次の日にソフィアの面接が行われ、生徒達の面接は全て終了した。
ソフィアの面接も特に問題は無く、好感触だったとか。
こうして試験も終わり、あとは結果待ちとなった。




