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40 ~王都の冬祭りっ その2~


 係の女子生徒に連れられて、校舎の片隅にある倉庫まで魔道具を運び出しにやってきた生徒達。

ミリアーナは初めて見る生徒会の倉庫に興味津々である。


(おぉ~、ここが生徒会の倉庫かぁ・・。 結構広い。 なんか色々置いてあるし・・)


「では、1班から順に、こちらで指示する魔道具を運び出してもらいますね。」


呼ばれた班が倉庫の奥へと入って行くと、更に指示が入る。


「魔道具には番号が振ってありますが、それが取り付ける場所の番号になっています。表庭の方へ運び出したら、その番号のところへ持って行って下さい。」


呼ばれた順に運び出されてゆくが、ミリアーナは魔道具が目の前を通って行く度につい『おお~』と、うなってしまうのだった。


そして自分達が呼ばれ奥に入って行くと、また色々な物に目が行ってしまうミリアーナだが、持ち出すように指示された魔道具を見て目を見張ってしまった。


「えっ!? これ、凄くない?!」


その魔道具は台座の上に彫刻のように作られた大きめの女神像なのだが、像その物は透き通っていて、如何にも像が光りますって感じの物であった。


「あ、それね、随分前に卒業した先輩達の作品なんだけれど、なんでも魔道具師科と錬金術師科の合作らしくてね。美術に拘りのあった生徒が苦心して作り上げたのだとか。」


「へぇ~・・・ 凄い・・。」


「しかもね、ちゃんと二体対であるのよ。 なぜ対かって? 女神さまは月の女神だから双子なのよ。夜空の月も二つあるでしょう?   まあそんな訳で、その二体を表庭の中央通路の、アーチの両脇に設置するの。そこなら外からも目立って丁度良いでしょう?」


「はぃ・・・」


「えっと、像がちょっと重たいから、そこにある荷車に乗せて持って行ってね。 壊れないように慎重に、気を付けて運んでね。」


「「「はいっ」」」「は~い」「はい。」


五人で荷車に像を乗せて運び出すと、次の班が続いてもう一体の女神像を荷車に乗せて倉庫から出てきた。

そして並んで表庭の中央通路に運び出す。


「凄い物があるのですね。」


「はい、ちょっとびっくりです。」


「凄いよねぇ~、こんなの作っちゃった先輩がいるんだからぁ。」


「今年の新作はどんなのなんでしょうねぇ?」


「こんなの見ちゃったら、ちょっと期待しちゃうよね?」



こうして様々な飾り照明の魔道具が設置場所へと運び出され、指定された場所へ取り付けられてゆくと、生徒会長から声が掛かった。


「え~、皆さんご苦労様でした。今日は仮設置になります。月曜日の放課後から、魔道具師科の方達と一緒に仕上げて行きますので、来週も引き続きご協力お願いします。」


「「「「「は~い」」」」」


今日はまだ新作はお目見えしないようだ。



そして週が明けて月曜日。

今日も放課後はイルミネーションの作業である。

日没までの作業となるので、それほど時間を掛ける事が出来ないが、木曜までに出来れば良いのでまあ、間に合うのだろう。



「今日は新しい照明魔道具、出てくるのかな?」


「さあ~、どうでしょうねぇ?結構最後の最後まで出てこなかったり?」


「あり得ますね。」


「うぅ~。 早く見てみたぁい~・・」


「・・・。」「まあ、魔道具師科の方達次第ですからねぇ?」


「むぅ~・・」


日没ギリギリまで手伝っていたミリアーナ達だったが、結局今日は新作はお披露目されなかったのだった。


翌日、ほとんどの魔道具が設置完了して調整も済んだので日没前にはお開きとなったのだが、ミリアーナ待望の新作はまだ出て来ず。



そして水曜日。

放課後になって設置した魔道具を見て回るミリアーナ達。

今日はほとんどの作業が終わっているので、手伝いに来ている生徒は少ないのだが、設置した物が気になるのと、新作が気になって見て回っているのだ。


「うぅっ!今日こそ見たいっ!」


「ははは・・」


「きっと今日はお披露目されますよ。」


「うん。期待してるもん。」


と、噴水前で話していると、何人かの生徒が荷車を引いてやってきた。


「あ・・」

「もしや?」

「ええ、恐らくは。」


遂にやってきたようだ。

魔道具師科の生徒なのだろう。荷車の上の箱から真新しい何かを取り出し、二体の女神像のあるアーチの上へと取り付け始めた。


「おい、そこだ。それ。」「あ、違うな、これ。こっちか。」「あー、それはこっち。」


ミリアーナ達は近寄ってみる事にする。


「あのぉ・・、手伝いましょうか?」


「ん? ああ、悪い、手伝ってくれるのか?」


「はいっ。」


「んじゃ、その飾り・・あ、うん。それ。 こっちにくれるかな?」


「はいっ!」


「あ、君達はそっちの方を手伝って。」


「分かりましたぁ。」「はい。」


取り付けられてゆく真新しい魔道具。

それは二体の女神像の上隣、中央通路のアーチに取り付けられてゆく。

その形は美しいバラを模っていて、いくつかに分かれてはいるが、取り付けられるに従って、全てが一つに繋がったモチーフになっているのが分かる。


「すごい・・」


「だろ? ちゃんとこの花の形、その女神像の頭の花冠に合わせて作ったんだよ。」


「イメージが全部繋がるように作るの、大変だったんだよ?」


「素晴らしいです・・」「・・・」「綺麗・・」


ミリアーナ達は組付け終わった飾りを見て、これ以上の言葉が出ないのだ。


「よぉし、もうじき日没だな。」


「ああ、点灯試験だな。」


「ちゃんと点きます様に・・」


周りがほぼ暗くなり、西の空には日没直前の美しい空が見える。


「よしっ、点灯ッ」


魔道具師科の生徒何人かが魔道具に触れ、魔力を流してゆく。


すると・・・


「よし・・成功だ・・・」「やったな。」「出来ましたね。」「ああ。」「よっしゃぁ!」


「すごい・・です。」「綺麗ですね・・・。」「・・・。」


ミリアーナは声が出ない。


取り付けられた魔道具の花びらが輝いて、しかも花の色は赤、黄、白の三色、そして蔓部分の葉が淡い緑に光っている。


「光を混ぜて色分けしたんだ。中々綺麗に色が出なくて大変だったぜ?」


「ああ、今回も錬金術師科の協力がなかったら完成しなかったよな。」


「ええ、本当に。 錬金術も大したものよね。」


「この学園にさ、美術の先生とかいたらもっとイイの作れそうなのにな。」


「「「「だよね!」」」」


と、魔道具師科の五人が、完成して光っている魔道具の飾り照明を見ながら話しているのを聞いていて、「そういえば学園には美術系の学科がないな」と思うミリアーナであった。



「さあっ、出来上がった事だし、今日は消灯して終わりにしよう。」


「そうだね。」「ああ。」


「君らも、手伝ってくれてありがとうな。」


「いえ、こちらこそ素敵なものを見せて頂き、ありがとうございました。」


「ほんと、凄いものを見れて良かったですっ。」



こうして冬祭り用の照明魔道具は全て取り付け終わったのであった。



翌日。

登校してきた生徒達が、アーチの上の照明魔道具に気付いて集まっている。


「これ、新しいヤツだよな?」「今年の新作はこれかぁ。」「凄いね、女神像と合わせてあるんだな。」


「これ、今日の放課後、点灯式とかやるのかな?」「あ、それ期待!」「ああ、そうだよな。」

「誰か生徒会と掛け合えよ。」


と、話していると、生徒会長がちょうどやってきた。


「あ~、皆さん。今日の放課後、日没前に魔道具師科の生徒達によって全てを点灯して頂きますので、ご覧になりたい方は、放課後に立ち寄ってみて下さいね。」


「マジかっ!」「俺、見てくぜっ」「私も見てから帰ろうかな。」「私、見てく~」



そして放課後。

夕方になり、辺りがだんだん暗くなってゆく中、多くの生徒達に見守られながら生徒会立会いの下、魔道具師科の生徒によりすべての魔道具に明かりが灯されてゆく。


最後に、女神像とその上の照明だけが点灯されずに残された。


「さて、そろそろ日没ですね。 では、最後の点灯、宜しくお願いします。」


遂に灯される女神像。

魔道具師科の生徒が女神の台座やその上の照明に触れてゆく。


「「「「「「「おぉ~・・・」」」」」」」

そして拍手が盛大に起きる。


二体の女神像は淡く光り、そしてアーチに掛かる照明が色とりどりに光るのだ。


「綺麗・・・」「素敵ね・・・」「凄いな・・・」


今日から月曜の明け方まで、魔道具に仕込まれた魔石によってイルミネーションは点灯し続けるのだ。


~~~~~~~~~~~~~~~


ところ変わって街中。

冬祭りは明日金曜から始まるのだが、既に街の人々によって様々な場所に照明魔道具や昔ながらの蠟燭の照明が飾り付けられ、街はすっかり冬祭りの景色へと様変わりしていた。

商業地区の店々も、入り口などを煌びやかにイルミネーションして、冬祭りの準備が出来上がっている。

そんな中、冬祭り目当ての観光客を乗せた馬車も次々と王都の街門を潜り、宿場街は賑わいを見せている。


翌日、金曜の夕方。

冬祭りの開会式が中央広場の教会で行われた。

教会の女神像に明かりが灯されるのだ。


教会の司祭が宣誓を行う。


「これより、女神への感謝祭を執り行います。 では、皆様。女神への祈りを込めて。」


集まった人々が女神へ向けて手を組み合わせ、祈りを捧げる。

すると、一対の女神像が照明により仄かに照らされ、幻想的に輝き始めた。


誰ともなく拍手が始まり、辺りは祝福の声で満たされる。

暫くすると拍手も収まり、人々は皆それぞれの方向へと歩き始めた。


今夜から三日間、冬祭りが続く。

何か派手に騒ぐような催しが行われる訳ではないが、観光客達はこの期間限定の幻想的な光景を見る、ただその為に王都に来ているのだ。


日没を過ぎ、王都の街並みは商業地区から貴族街、そして居住区に至るまでの全てが蠟燭の灯りと魔道具の灯りで仄かに辺りを照らされ、光り輝いている。

学園の庭も生徒達の手により魔道具の灯りでイルミネーションされて美しく輝き、祭りのメイン会場である教会前の中央広場は街の人々により煌びやかなイルミネーションを施され、教会の中の二体の女神像も、照明で着飾るように煌めいている。

そして、王城を見上げると・・・

城壁の上に照明が灯され、更に、五つある城の塔が美しく照らし出され、その脇には二つの月が輝く―――王都全体が幻想的な風景となっている。


まだ、この世界には飛行技術は無い。

この風景を空から見る事が出来たなら、さぞや美しい事だろう・・・

もちろん、王城から王都の街並みを見下ろす事は出来るのだが、それを見る事が出来るのは王族と高位貴族、そして王城勤めの人間だけである。



あぅ・・、設定が増えてます。

この世界には月が二つ、二重星で存在します。

そして、闇を照らす月光の神様として祭られる女神も双子です。


えっと・・ファンタジーの世界ですから、物理法則の事は・・ご勘弁を(笑)

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