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38 ~魔力測定っ その2~


 週が明け、今日は月曜日。

魔力測定が行われる日だ。


今朝は少し早起きが出来たミリアーナ。

気の迷いはもう、無い。


もうすぐ冬になろうかという、冷たい風が吹く朝。

王都の街は今日も朝から活気のある声が響いている。


イザベラとミリアーナは暖かな朝日を浴びながら、久しぶりに二人で朝の一杯(モーニングティー)を楽しんでいる。


「今日は魔力測定だね。」


「そうですね。ミリアーナさんは気になりますか?」


「え? うん、そりゃあ、ね?  まだ知らないんだもん、自分がどの魔力属性を持っているのかも、どれくらいの魔力量なのかも。」


「そうですよね。 普通は学校に上がってから知るのでしたね。」


「そうそう。 イザベラさんは自分の魔力の事、知っていたんでしょ?」


「ええ、もちろん。」


「それって、どこかで測って貰ったって事なの?」


「ええ。私は6歳の時に、父に連れられて教会で測定して貰ったんです。」


「ふぅん。  それって、やっぱり結構お金掛かるとかなんでしょ?」


「ええ、そうらしいですね。 私は連れられて行っただけなので、良くは分かりませんでしたが。」



この世界では人は皆が魔力を持っているとされ、殆どの者は学校に上がってから測定をして自分の魔力に付いて知るのだ。

だが、一部の人間、例えば騎士の家系であったり、裕福な貴族であったりすると、自分達の子供の魔力を早くに知る為に、教会に行って魔力を測って貰うのだそうだ。

もちろん、結構なお布施が必要になるのだという。

なので、殆どの者はタダで測って貰える学校に上がるまでは測らないのだとか。

ちなみに、人の持っている魔力属性は「火」「風」「水」のどれかになるのだが、人によっては一つだけでなく、二つ持っている場合もままあるとか。

ただ、普通はどちらか一方が強く、もう一つはおまけみたいになるらしい。

しかし伝承によると、三属性全てを持ち、しかもすべてを同等に扱えるような人間も過去には存在したらしい。

まあ、それこそ五大属性全てを持って生まれようものなら、それはほぼ神のような者であったのだろうが。



~~~~~~~~~~~~~~~


学園に到着し、教室に入る三人。

生徒達が魔力測定の事でガヤガヤと話している。


「俺、どんな魔力持ちなんだろうな。」

  「おまえ、きっと風属性じゃね?」

「はぁ~ 私、きっと水なんだろうなぁ・・」


人の持つ魔力属性は、家族に似る事も多い。

なので、自分の魔力属性を予想する者も多いのだ。



「みんな気になっているみたいですねぇ。」


「そのようですね。」


「イザベラさんはもう判っているけど、また視て貰うんですよね?」


「ええ。そのつもりです。」



教室の片隅では、パトリックが男子達と話している。


「なあ、パトリック、お前はもう自分の魔力の事判ってるんだろ?」


「ああ、一応な。 俺は5歳の時、教会で視て貰ったからな。」


「へぇ~ で、こないだの感じだとやっぱり火属性なんだろ?」


「ああ。 ウチの家系は代々火属性の騎士だからな。」



そこへ朝のホームルームにハインリヒ先生がやってきた。


「はいっ、みんな、おはよう。 今日はこのあと講堂に移動して、一年生全員で魔力測定を行うから、ホームルームが終わったらすぐに移動してほしい。」


「「「「「はーい。」」」」」


魔力測定は教会の人間がやってきて、神の名において水晶球のような魔道具を使って視るのだそうだ。

中々どうして、式典のような儀式のようなものである。


~~~~~~~~~~~~~~~


講堂へ移動すると、他のクラスの生徒達も席に座り、測定の儀式が始まるのを待ち侘びているようだ。


一年生の生徒全員が集まると、来賓用の入り口から教会の修道士・・いや、随分と偉そうな法衣を纏った司祭が二人の修道士を連れてやってきた。

その修道士達はそれぞれ水晶球のような物を大事そうに抱えて壇上に上がると、用意された二つの演台の上に一つずつその球を据えた。


「それでは、これより二人ずつ魔力測定を行います。 名前を呼ばれた者は壇上に上がって下さい。」


二つの演台の真ん中に司祭が立ち、その脇に修道士二人と魔導士の格好をしたロベルト先生が立っているという・・なんだが物々しい感じである。

もちろん、貴賓席には学園長も来ていて、この儀式を見守るようだ。


そして、1Aの生徒から二人ずつ順当に名前を呼ばれ、壇上に上がって魔力測定器の球に手を乗せてゆく。


測定器に触れる事で分かる事は二つ。

その被検者の持つ魔力属性が光る球の色によって判別出来る事。

「火」は赤く、「風」は緑に、そして「水」は青く光り輝くというものだ。

ちなみに被検者が複数属性を持っている場合、持っている量によって光る色の面積割合が変わるが、属性に見合った色が上下に分かれて見えるという事だ。

過去に三属性全てを持っていた者が触れた時は、三つの色が宝石のオパールの様に混ざって光り輝いたのだとか。

そしてもう一つ判るのが魔力量である。

その人が持っている魔力量によって光の強さが変わるというもの。

ちなみに、過去に測定限界を超えて測定器が割れるなどの事象は起きた事はないそうだ。

単に、量が多いと光が強過ぎて見比べられなくなるだけらしい。


1Aの生徒達の測定が終わり、ミリアーナ達Bクラスの番となった。

呼び出しの順番は名のアルファベット順である。


いつもの三人で言うなら、イザベラ、ミリアーナ、ソフィアの順である。


イザベラの番がやってきた。


「イザベラ・ローズベルク君。 ジョセフィーヌ・マルチノ君。」


「はい。」「はいっ。」


イザベラとジョセフィーヌは壇上にあがり、それぞれ測定器に触れる。

すると。


「おぉ・・」


司祭から声が出た。

イザベラの手が触れている球が上から順に光始めると、球の色は上下に分かれ、上側が緑、下側三割ほどが赤に眩く光り輝いている。

イザベラが少し困惑した顔になる。


「これは・・」


「イザベラ君、君の魔力属性は主に風だが、火の属性も持っている様だね。」


「はい・・」


「イザベラさん、と言ったかな? これは素晴らしい事なのですよ?」


司祭がイザベラに声を掛ける。


「はい。」


「もっと誇りに思って良いのですよ。」


「はい。分かりました、司祭様。」


「ジョセフィーヌさん。 貴女は火の属性ですね。これから訓練すれば、良い結果になるでしょう。」


「はい、ありがとうございます。」


「では、二人共席へ。」


イザベラが席に戻ってくる。

側にいるミリアーナが小声で話し掛けた。


「イザベラさんっ凄いじゃんっ。」


「ええ・・」


そしてミリアーナの番が来た。


「ミリアーナ・ウィルヴィレッジ君。 ナターリア・カロニコワ君。」


「は、はいっ」「はい。」


ちょっと緊張してるミリアーナ。


なんとなくクスクス笑い声が聞こえるが、無視して壇上へあがる。


「では、手を測定器の上へ。」


「はいっ」


二人はそれぞれ言われた通りに手を測定器の上へと翳す。

すると。

ミリアーナの方の球は触れたところから光始めると、二つに分かれて光り輝いているように見えている。

上側が青、下二割ほどが緑のようだ。

光の強さはイザベラほどではないようだ。


「ほう。 君も二つ持っている様だね。 水と風のようだ。」


「は、はいっ」


驚きを隠せないミリアーナ。


「ミリアーナさん。貴女も二つ持ち合せた事を誇りに思うと良いのです。」


「はいっ。 ありがとうございますっ。」



「ナターリアさん。貴女は風属性のようですね。これからはしっかり訓練に励んでみて下さいね。」


「はい。ありがとうございます。」


「では、席へ。」


「はいっ」


緊張しつつ、意気揚々と席へ戻るミリアーナ。

イザベラはミリアーナに微笑んでくれたので、ちょっとガッツポーズして返してみたのだった。


次はパトリックである。


「パトリック・フェロウ君。フィリップ・ライアルト君。」


「はいっ」「はい。」


二人は壇上へと歩いて行く。

そしてパトリックが球に手を触れると、燃え上がるような赤に光り輝いた。


「おお・・」


「パトリック君。君は火の属性持ちだが、随分と魔力量が多いようだね。」


「はいっ」


「今までの訓練が生きている様ですね。 もっと鍛錬をしてゆけば、更に良い結果が出る事でしょう。」


「はいっ。 ありがとうございます。」


「フィリップ君。 貴方も火属性のようですね。これからも訓練に励んで下さいね。」


「はい。ありがとうございます。」


「では、席へ。」


戻ってきたパトリックは他の男子生徒達に握った手を振って答えている。


そしてソフィアの番だ。


ソフィアともう一人、テレージアが壇上にあがり、そして手を乗せる。


ソフィアが触れている球の色がとても綺麗な青に輝いていった。


「ほう。とても綺麗な色ですね。 純粋な色をしています。」


「はい。」


「水の属性ですが、貴女の魔力は将来とても大きく育つ可能性があります。大事に訓練に励んでみて下さいね。」


「はい。ありがとうございます。」


「テレージアさん。 貴女は火属性のようですね。訓練に励めばもっと良くなるでしょう。頑張ってみて下さいね。」


「はい。ありがとうございました。」


「では、席へ。」



こうして午前中は三クラスの生徒達の魔力測定が終わると、昼食の時間となった。

午後は残りの三クラスの生徒の測定である。

一学年の生徒数は総勢三百人弱。

生徒数が多いと非常に時間が掛かるのである。



いつもの三人で学食で食事をしていると、先輩のエドとジークが来た。


「やぁ、お嬢さん達。今日は魔力測定をしているんだってねぇ?」


「あ、エド先輩、ジーク先輩、こんにちは。」「「こんにちは。」」


「君達も大変だね、測定は一日がかりになるだろう?」


「そうですね。 私達は午前中で終わりましたが、残りの三クラスがまだ終わっていないので。」


「そうなんだぁ。 終わった生徒から帰ってもイイ、とかなら良かったのにねぇ~。」


「まあ、仕方がないですよ。ある意味、式典みたいなものなんですから。」


「そうだよな。 まあ、頑張って付き合ってやるしかないだろうな。」


「そうそう、僕は風なんだよぉ?で、ジークは火属性。」


「僕らは二年前に測ったのだが、やっぱり時間が掛かって大変だったよ。」


「ところでぇ、君らはもう終わったって事は~、もう自分が何か分かっちゃってるんでしょぉ?」


「はい。一応は、ですが。」


「ほう。それで、どうだったんだい?」


三人は少し顔を見合わすが、仕方がないと思ったのか、ソフィアから答えた。


「えっと、私は水属性でした。」


「そうか。 まあ、順当なんじゃないか?」


「はい、まあ。」


「それで、君らはどうだったんだい?」


イザベラとミリアーナはお互いを見ると、ミリアーナから話し始めた。


「私は水と風でした。」


「へぇ~、凄いじゃ~ん。二つ持ちなんだぁ。」


「ん、まぁ・・。 そんなに魔力量は多くなかったみたいなんですけれどね。」


「そうなのかい? でも、訓練次第では魔力量は増えて行くものだから、期待しても良いんじゃないか?」


「まあ・・そうですよね、あはは。」


「それでぇ?イザベラちゃんはどうだったのぉ?」


イザベラは一瞬言葉に詰まるが、意を決して話した。


「わたくしは風と火の二つでした。」


「ほう。 イザベラ君も二つ持っていたのかい? それは凄いね。」


「有難う御座います。」


と話し込んでいると、午後の予鈴が鳴り響いた。


「おっと、すまない。話し込んでしまったようだ。君らもまた測定、頑張ってな。」


「じゃぁねぇ~ 頑張ってねぇ~」


エド達は手を振って午後の授業へと向かっていった。


「はぁ・・」


「助かりましたねぇ。」


「ええ。予鈴に助けられました。」


「じゃあ、私達もそろそろ向かいません?」


「だね・・。」「そうですね。」


エド達に根掘り葉掘り聞かれる事になるかと思い、内心ヒヤヒヤしたのだが、午後の予鈴が鳴り響いた事で解放された三人なのであった。



そして午後の測定の儀式も無事終わり、三人で今日は疲れたねと話しながら寮へと帰ったのだった。


ちなみに、今日の魔力測定では、属性を二つ持っていた生徒が23人居たという事だった。

大体ひとクラスに三、四人というところだ。

この国の人口の約一割に二つ属性を持つ者がいるという事なので、妥当な所のようである。



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