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30 ~夏休み中っ バイトその2~


 アルナキロス食堂でのアルバイト初日を順調に終えたミリアーナは、充実感を胸に寮に戻ってきた。

前世から11年ぶりの仕事でもあったので、その久しぶりな気分も味わえて良かったのだ。


マリアンヌさんに声を掛け自室に戻り、とりあえず着替えようかと思ったのだが、夕食前に汗を流したいと思いつき、湯浴み(まだ暑いので水浴びなのだが)をしようと寮の大浴室に入ることにした。


(おぉ~・・誰もいない・・・。  でもこれ、貸し切りじゃん♪)


寮に入っている生徒達の多くは帰省している。

誰もいない浴室に一人、ちょっと寂しいような、しかし贅沢にも感じながら湯浴みをする。

そして今日一日の出来事を思い返してみた。


(はぁ~ 今日も暑かったけど・・ 初バイト、楽しかったな。)


(明日もお客さん沢山来るかな?   それにしてもフランツさんの手捌き、凄かったな・・)


厨房でフランツの仕事を思い出し、かなりの数の料理を手早く作ってしまう手捌きの良さに感心してしまったのだ。

前世でも学生時代、夏休みにファストフード店でバイトをしたことがあったが、そもそもシステムが違うのだ。こんなことなら前世で町中華のお店でバイトでもしとけば良かったかと思ってしまうのだった。


などと思い返しながら湯浴みをしていたのだが、体を洗っていてふと気付いた。


(あ・・・、石鹼がもうじき無くなる・・)


この世界では、まだ沢山使えるほど石鹼は安くない。贅沢に使えるのは裕福な貴族や商人などである。

もちろん、ミリアーナも石鹼くらいは買えるお金を持たされてはいるのだが、それでも贅沢だとは思うのだ。


(石鹼、安くてもっと良い香りの物、ないのかな・・  そうだ、自作する?)


ミリアーナは美奈であった時に趣味で石鹼を作ったことがあったのを思い出した。


(油に苛性ソーダ水と混ぜて・・・そこに好みのエッセンシャルオイルを数滴混ぜて・・

型に入れて寝かせて・・固まったら型から取り出して適当な大きさに切り分けてからまた寝かせて・・

う~ん・・・こっちの世界でも作れそうなんだけどな・・・  問題はソーダか・・・)


ミリアーナの好みの香りはラヴェンダーである。もちろん、美奈であった時の名残でもある。


ふと思う。

(ソーダとかカリって、こっちではどこに売ってるんだろ?前世の世界では昔は石鹼作るのに草木灰や海藻灰を使っていたってどっかで聞いたけど、こっちの世界でも同じなのかな?それとも、錬金術師さんが安く作ってたりするのかな?  あ・・あと、香油が高いんだよなぁ・・・)


安くソーダなりカリを買う、あるいは作る事はできないのだろうか?そして、エッセンシャルオイルも安くならないかなぁ?と思うのだ。

こっちの世界では香油も贅沢品である。

もっとも、前世でも天然のエッセンシャルオイルは高級品ではあったのだが。


(よし、今度バイトが早上がりの時に探してみよっ。)


と、なんだかんだ考えていたら、結構時間が経ってしまった。

慌てて湯浴みを終え、着替えて部屋に戻るのだった。


そして一人夕食を済ませ、部屋に戻ったミリアーナ。

明日の準備を終えてベッドに横になると、バイト初日の疲れもあるのか、すぐに眠りに就いたのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~



バイトには数日で慣れ、今はアルナキロス食堂のアイドル?として頑張っているミリアーナ。

だからと言ってそれで店の売り上げが伸びているという事はないのだが。


そして9月に入る。

徐々に客足が増え、毎日夕方まで休む暇もなかったくらい働いていたので疲れてしまい、手作り石鹼を作ることなんてすっかり頭から離れてしまっていた。


(うぅ~・・今日も忙しかったなぁ~。 あ、石鹼買って帰らなきゃ・・)


接客の仕事なので身嗜みに気を遣って毎日湯浴みをしていると、節約していてもさすがに石鹼が切れた。

仕方なく、仕事帰りに日用品を売っている雑貨店に寄ってから帰る事に。


そして帰り道を歩いている途中にあった雑貨屋になんとなく寄ってみて、何気なく店内を見て回る。


(ん~・・、なんかないかな・・・  ん~、結構色んな物が置いてあるのね。)


寄るのは初めてではないのだが、意外に何が置いてあるか見てなかったと思うのだ。

そして、とりあえずは忘れないうちに石鹼を手に取っておく。


(忘れたら湯浴みで困るもんね。)


それにしても、ちょっと高いなと思う。一つ500グネ。それほど大きい訳でもない。

前世なら精々100円くらいの大きさの物だ。物価を考えると、感覚的には一つ700円くらいに感じる。


(これを沢山使う気にはなれないよねぇ・・ しかも、たいして良い香りじゃないのに。)


もちろん、裕福な貴族が使う様な石鹼には良い香りの物もあるのだが、そのような物はかなり良い値段がするのである。

ミリアーナの家も貴族とはいえ、片田舎の名ばかりの男爵家、けして裕福ではない。

贅沢は言えないのだ。


なんとなく店内を色々と見て回る。

普段は一人で見て回る事がないので、こうして色々見て回るのは初めてかも知れないなと思う。


そして・・見つけたのだ。


(ん?これ? あ・・、あるじゃないねぇ。  なぁんだ、こんな風に置いてあるんだね。)


見つけたのは、洗濯用に使う灰。これは草木灰か海藻灰か。

洗濯用には、水に溶かしてしばらく置いて、上澄みだけ使う物だ。

これ使ったらもしかして手作り石鹼出来るかな?と思うのだが・・・


(でも、見つけたのは良いけど、作ってる時間無いじゃん?それに出来上がるまでに1か月は掛かるし。)


と、思い至ってしまい、今回は買わないでおくことに。


その後もウロウロと見て回ってみたのだが、他にめぼしいと思う物はなく、石鹼だけを買って寮に帰り、早速湯浴みに向かうことにした。


(ふぅ。 今日も頑張ったな。 明日もお客さん沢山来るかな?)


そして、帰省している二人の事を思う。


(もう二人共、無事に着いてるはずだよね・・。 どんな馬車旅だったんだろう? 乗り継ぎで帰るんだもんなぁ・・。 一人で寂しくなかったかな。)


二人が戻ってきたら、色々話を聞こうと思うミリアーナだった。







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