2 ~また変な夢・・・うん、気にしないにしようっ~
「あ~~ぁ・・・今日は失敗しちゃったな・・」
やらかしてしまったその日の夜、ミリアーナは一人、自室のベッドの上で今日の出来事を思い出していた。
「それにしても・・なんだったんだろう? 変な光景?記憶? きっと夢だよね・・・」
兄に助けて貰ったあとベッドで気を失っていた時に見た、見たこともない記憶のような夢のことだ。
「もぅ、いいや。変な夢見ちゃっただけだろうし、気にしないで寝よ・・きっと明日になったら、すっきり忘れてたりするかもだし。」
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「よう!お疲れ!」
「先輩。お疲れ様です」
「なんだ?おまえ。今日はちょっと早いんじゃないか?」
「はい・・昨日弄っていた場所なんですけれど、もしかしたらここがおかしいんじゃないかって思い当たっちゃって。で、気になって」
「お前、ホント好きだよな。気になって集中するのはいいけれどよぉ、一人で作業して怪我なんかすんなよ?」
「すみません、気を付けます」
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「あっ!先輩っ、これじゃないっすか?」
「おぉ、こりゃダメかもな・・インシュレータにクラック入って二次エア吸ってるんじゃねぇか?」
「これですかね?なんとなくパワーが出てないのって。」
「かもな。・・したらさ、そこのパークリ取ってくれ。エンジン掛けてここに吹いてみよう。二次エア吸ってたら回転が変化するだろうから。」
「なるほど、そうっすよね。パークリがガソリンの代わりになりますもんね。」
「おう。 よし、ちょっとエンジン掛けてくれ。」
「はい。 掛けます。」
(キュルル・・キュルルル・・・キュルルル・・ボボ・・ボババッ・・・)
「ちょっとグズってるけど・・掛かりそうだな。もうちょい頑張れ。」
「はい。」
(キュルルルン・・キュルル・・ボボッ・・ボバババァンッ・・ブルルル・・ボボブブブ)
「よし、ちょっとアクセル開け気味で・・止まるなよぉ・・?」
(シューーーボババ・・ブアアァッ)
「よし、上がったな。やっぱりインシュレーターがダメみたいだな。・・ん~、どうすっか。部品ねぇしな。 し た ら。しょうがねぇから応急で。これで埋めてみるか。」
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チュンッ チュンッ チチッ・・
「んん・・うん?・・ ん~~っ・・ ふわぁ・・ぁっ 朝かぁ・・」
(・・・・・また変な夢、見た・・・・・)
「・・・ま、いっか・・」
(きっとただの夢だし・・・怖い夢見たわけじゃないから・・いっか。 うん・・・)
「さっ・・起きよっ・・」
昨日の・・やらかしてしまった事で家族に心配をかけた事と、その罰でしばらく馬に乗れなくなってしまった事とで、なんとなく気まずく寝覚めの悪い朝だ。
だが、いつまでもボーっとしていてもしょうがないので、とりあえず着替えて下に降り、家族が居るであろうリビングに向かうのだった。
トットットットッ・・
「お父さま、お母さま、おはようございます。」
「おはよう、ミリアーナ。」
「おはよう。今朝はもう大丈夫なの?どこか痛むところはない?」
「はい。まだ少し痛むけれど、だいじょうぶです。 昨日は心配をかけてしまい、すみませんでした。」
「そうだな。 昨日の事はミリアーナ、自分がどんな事をして、どんな結果になってしまったのか。よく考えておきなさい。」
「はい・・」
「おはよう、ミリアーナ。」
「おはようございます、お兄さま。」
「昨日は大変な目にあったな。体の痛みとかは大丈夫か?」
「はい。もうだいじょうぶです。 昨日は助けに来てくれてありがとう、お兄さま。」
「ははは、昨日はどうなることかと思ってヒヤヒヤしてしまったよ。 ミリアーナ。まったく、いつも元気にしているのはいいが、元気過ぎるのも困りものだぞ?」
「はい・・ごめんなさい・・」
「さあっ、昨日の事はもう置いといて。みんな揃ったのだし、朝食にしましょうね。」
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その日の午後。
罰として暫く馬には乗れなくなってしまったのだが、私の為にとお父さまが用意してくれた馬の手入れをする為に、厩に向かったミリアーナ。
(よかった・・馬にはとくに怪我もなくて・・)
「ごめんね。昨日はびっくりしちゃったんだよね? ちゃんと戻ってきてくれて、ありがとう。」
(フルルル・・ッ)
「しばらくあなたに乗れなくなっちゃったけど・・ごめんね? またお父さまからお許しが出たら、たくさん遊びに行こうね?」
(フルルッフルルル・・)
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「どうした、ミリアーナ。こんなところで。なんだ?元気でないのか?」
「おかえりなさい、お兄さま・・」
「どうした?そんなに落ち込んで。大丈夫。大した怪我もしなかったのだし、馬も無事に帰ってきているんだし。元気出せ。」
「うん・・」
夕方。庭の片隅でボーっとしていたところ、兄が帰ってきたのだった。