19 ~魔道具の授業っ♪ その2~
夢を見たせいで早く起きてしまったが、今日の授業の事の方が気になるミリアーナは、イザベラが起きるとすぐに自分も着替え始めた。
「ミリアーナさん。今朝は少し早いですね。」
「うん・・ ん、だって、今日は魔道具の授業だからねっ。気になって早く起きちゃった。 えへへ。」
夢の事が気にはなるが、それをイザベラに話しても仕方がない事なのだと気持ちを切り替えて、今日の授業の事を考えるようにするミリアーナ。
「そうですか。それならよいのですが。」
「えへっ、なんかさっ、魔道具のこと考えるとつい、ね。 あはは~」
そんなミリアーナに微笑むイザベラ。
着替え終えるミリアーナを見てイザベラも着替え始めた。
着替え終えた二人だが、朝食にはまだまだ時間が早い。
するとイザベラは部屋の外へ行き、お茶の用意をしてきた。
「ミリアーナさんも、どう?」
「うん。ありがとう。」
朝の爽やかな陽の光が差し込む窓際でお茶をする二人。
穏やかな時間が過ぎて行く。
「・・・・、ねえ、イザベラさん。」
「 ? なんでしょう?」
「人ってさ、 前世って・・・あるのかな?」
「・・・どうなのでしょうか。 もしかしたら・・あるのかも知れませんね。」
「そっか・・。 あっ、ごめんねっ。 変なこと、言いだしたりして。」
「いえ。」
「えへへっ」
そして朝食の時間がやってくる。
いつもの様に二人で食堂に行き、ソフィアと一緒に朝食をとり、学園に行く準備をし、三人で向かう。
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午前中の授業が終わり、昼休みになる。
「んふふふ~♪」
「午後からミリアーナさん期待の授業ですねぇ?」
「うん、やっと始まるのよ~♪ ふふっ」
ソフィアとイザベラはそんなミリアーナを見ると、お互いを見合って呆れも含んで微笑む。
そこへ、最近よく顔を合わせるようになった先輩のエドとジークが声を掛けてきた。
「やっ、今日も三人、お揃いだねぇ~」
「今日のミリアーナ君は随分機嫌が良いようだが?」
「そうなんですよ。今日は午後から魔道具の授業があるんですけど、昨日の夜からずっとあんな調子で・・」
「ほう? ミリアーナ君は魔道具が好きなのかい?」
「ええ、そのようですね。魔道具の話になるといつもこのようになりますので。」
「へぇ~ ミリアーナちゃん、魔道具が好きなんだ~ 僕なんかぁ、ぜぇんぜん、チンプンカンプンなんだけどねぇ~」
「先輩っ 魔道具は楽しいんですっ! 便利なものだしっ、それに不思議がいっぱい詰まっているじゃないですかっ♪」
「な、なるほど・・・」
ミリアーナの勢いに押されるエドとジーク。
そうこう話している内に昼も終わり、午後の授業が始まった。
教室に魔道具の先生がやって来る。
(ついに始まるっ♪)
「今日から魔道具についての授業を始めます。私の名前は、ロベルト・ポッケルスといいます。宜しく。 単独の学科では、冶金術と魔道学を担当しています。
では、最初は概論、つまり魔道具ってどんなものなんだよ~っていうところから始めたいと思います。」
ポッケルス先生は講義を始めた。
「まず、魔道具には大きく分けて、皆さんが良く目にする生活魔道具と呼ばれる比較的小型の物と、商用の大型の物、そして皆さんにはあまり馴染みがないかも知れませんが、騎士や兵隊、軍隊などで使用する物があります。」
先生は更に続ける。
「今回、皆さんが勉強をして行く魔道具の基礎編では、生活魔道具を中心に講義を進めたいと思います。」
(うんうんっ♪)
ミリアーナは目を輝かせて講義を聞いている。
「では、生活魔道具という物にはどのような物があるのか、少し例を挙げます。
たとえば、このような火を起こす魔道具ですね。これは簡単なものですが――――
こうして普段目にする魔道具がいくつか紹介されてゆく。
「では、魔道具というのは、どのようにしてその現象を起こしているのか、その説明をしていきます。」
(ふんふん♪)
「魔道具には、動作させるのに必ず必要とされる物があります。それは、魔導回路と呼ばれるものです。
そして、現象を起こすのにもう一つ必要な物。それは魔力です。その魔力は、皆さんも多少持ち合わせている、人から出る魔力もありますが、魔道具の場合は、殆どの物に魔力の供給源として魔石が用いられています。」
(うん、うん♪)
「魔道具が動作するのには、その魔道具の目的、つまり、起こしたい現象に合わせて、それに見合った魔力の種類、すなわち属性魔力ですが、その魔力と目的が合っている必要があるのです。」
更に続ける先生。
「つまり、例えばですが、火を起こす魔道具の場合、そこに使用される魔力の属性は火でなければいけないのです。同じように、水を溜めるような魔道具であれば、使用する属性は水となり、風を送るようの物であるなら、使用するのは風の魔力となるのです。」
例を挙げて説明は続く。
「次に、魔導回路ですが、魔導回路の役目というのは何かというと、魔力を供給するところ、すなわち通常は魔石になる訳ですが、この供給部分と現象を起こす部分とをつなげる役目をしています。
この魔導回路も、起こしたい現象に合わせた物を組み上げて行かなければ、目的の現象を起こすことが出来ないのです。」
こうして講義は続き、授業の終了の鐘が鳴る。
カラ~ンカコ~ン カラ~ンカコ~ン ・・・・
「はい。では、授業はここまでとします。今日は魔道具がどの様なものなのか、大まかなところを説明しました。 次回は魔道具の構造について、簡単な物を用いてもう少し詳しく説明していきたいと思います。」
(たっのしかった~っ♪)
授業が終わり、教室がざわついてくる。
(終わっちゃった~・・でも、次の授業が楽しみだぁ~)
ソフィアとイザベラがやってくる。
「授業、終わりましたね。」
「うん。 でも、次が楽しみっ」
「ミリアーナさんの事だから、次も浮かれちゃうんでしょうねぇ~?」
「えへへ~ ♪」
今日もいつもの様にまっすぐ寮に帰れば、一日がいつもの様に終わるはずだったのだが。
二人が明日の日曜日はミリアーナの誕生日のお祝いをしようというので、少し街に寄って買い物をしてから帰る事にした三人。
そして夕方、商店での買い物を終え、市場の辺りを歩いていた時にそれは起きてしまった。
話をしながら歩いている三人に馬車が近付いて来る。
「買い物も済ませたし、帰ろっか?」
「そうですね。じきに暗くなるでしょうし。」
「今日の夕食はなんでしょうねぇ? ミリアーナさん、もう気になってるでしょ?」
「えへへ~ バレた?」
そこへ、ふざける様にして遊んでいる男の子二人組が。
「あっ、やったなぁ~っ」
「へへへ~っ」
「このぉ~っ、まてぇ~っ」
「あっ!・・・」
片方の男の子がミリアーナにぶつかってしまう。
「「あっ!ミリアーナさんっ!」」
「あっ・・」
声は上げるが、既にバランスを崩すミリアーナ。
そこへ運悪く馬車が来てしまった。
「あぶないっ!!」
ソフィアもイザベラも、惜しくも手は届かず・・、ミリアーナは馬車に撥ねられてしまった。
「大丈夫かっ!」
御者が状態を見に降りてくる。
イザベラやソフィアが懸命に呼びかけているが・・・
「ミリアーナさんっ!! ミリアーナさんっ!!」
「誰かっ! 誰か医者をっ!!」
「ミリアーナさん! しっかりしてっ!! ミリアーナさんっ!」
「うぅ・・・」
倒れたミリアーナは意識を手放してしまうのであった・・




