12 ~入学式っ~
今日は入学式である。
朝早めに起きたミリアーナだが、既にイザベラの姿はなく、急いで着替えて朝食を食べに行く。
そして食堂でイザベラを見つけると急いで同じテーブルに着く。
「おはよっ、イザベラさん。今日は入学式だねっ」
「そうね・・。」
「そ、そのあとはクラス分けの発表だねっ。 どんな子と一緒になるんだろうね?」
「さあ? どうでしょうね。」
(ううぅ・・・ なかなか話が・・・ でも、今日はまだ会って3日目よっ、諦めないもんっ)
仕方がないので、諦めて黙々と食べることにする。
「ごちそうさまでした。」
(あっ!?・・ 待ってくんないよぉ・・・)
イザベラは食べ終わると早々に食堂を出て行ってしまったので、慌てて食べ終え、追いかけて行く。
そして部屋に戻り、式に向けて身なりを整え、学園に向かう二人だった。
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入学式を執り行う講堂に入る二人。既に何人もの生徒が席に着いている。
そして指定された自分達の席を探し、座った。イザベラはミリアーナの斜め前の席だ。
しばらくすると、来賓やら先生方と思われる大人達も現れ、それぞれの席に着いた。
式が始まるようだ。
「では、これより入学式を始めます。」
様々な人から挨拶やらなんやらがあり、粛々と式が進められてゆく。
「ではここで、学園長から挨拶を頂きます。」
学園長の挨拶が始まるようだ。
「新入生の皆、入学おめでとう。 私が学園長のガブリエラ・サンアンドレーズだ。
君らを今日より、この学園の生徒として入学する事を認める。そして、認めたからにはこの学園の生徒として恥じぬよう、心して勉学に励んでもらいたい。
この学園のモットーは自由と自立だ。ここでは多くの学びを得る事が出来る。貴族平民を問わず勉学に努力を惜しまない者は能力を認められ、そして更なる高みへと目指せるのだ。
皆には是非、この学園でしっかりと学び、優れた人間となって巣立って行く事を望みたい。以上だ。」
学園長は最後に濃い碧色の目を光らせ挨拶を終えると、颯爽と戻っていった。そう、優雅に、堂々と。
(おぉ~~ なんか迫力あるカッコイイ挨拶だったなぁ~)
ちなみに学園長は女性であり、御年42歳。王族であり、幼くして学問の才に恵まれ、魔道具にも造詣が深いとか。また、剣術の才もあり、若き頃には戦場にも立ち功績をあげたとかなんとか。
まあ、スーパーな御方である。
このあとも恙なく式は進み、式は閉会し新入生が退場となった。
そして新入生の集まる控室に戻った二人。
周りの新入生がガヤガヤとしている。
すると、どこかで何か・・、あまり聞きたくない会話が。
ちょっと気弱そうな灰茶髪の少女が男子や女子の数人に囲まれ、馬鹿にされているようだ。
「おい、お前っ。たかが田舎の平民が何でここに来てるんだよ。」
「そうよそうよ。アンタみたいな平民は田舎の学校の方がお似合いなのよ。」
(ちょっと・・なんなの、あのひどい物言い・・・ ここは誰でも自由に学べる学校なのに・・・)
少女は怯え、何も言い返せないでいる様だ。
ミリアーナはどうやら貴族と思われる馬鹿にしている方の男女に向かって歩いてゆく。
あの物言い、態度がどうにも気に入らなくなってしまったのだ。
「ちょっと、何よ、あなた達。 ここは試験に受かれば誰でも自由に学べる場所でしょっ!
貴族だか何だか知らないけど、そのひどい物言いは何よっ!」
「なんだお前? こんな田舎者の平民に手を差し伸べるのか?」
「そうよっ。 こんな田舎者に手を貸すつもりっ?」
(なんなのコイツら・・・ あったま来るわね・・・)
思いの外に気持ちが熱くなるミリアーナ。こういう虐めが大嫌いだからだ。
どう言い返そうか考えていると・・・
「貴方達、最低ね。 弱そうな人しか相手に出来ないのね。」
イザベラである。
「なんだお前。お前もコイツの仲間か?」
「関係ないわ。私は貴方達の低俗で最低な態度を改めたくて言っているだけ。」
「はあ? 何言ってんだ?」
「貴女、そんなところで何しているの。 このような人達を構う必要はありませんわ。 行きましょう。」
イザベラは貴族の男子をスルーして少女に声を掛け、その場を離れようとする。
「おいっ ちょっと待てっ」
貴族の男子がイザベラの肩に手を掛けようとする。
「うわっ!」
イザベラはそれを絶妙に躱すと鮮やかにその男子の手を掴み、捻り倒してしまった。
「・・・・、 行きましょ。」
(うわ~・・ なんか、カッコイイ・・・ って、あっ、ちょっと待ってっ)
少女を連れてその場を離れるイザベラを慌てて追いかけるミリアーナ。
そのまま外に出て、学園内の噴水前にあるテーブル席に三人で腰を掛けた。
(まったく・・・それにしてもひどい子たちだったなぁ・・)
ミリアーナは今にも泣きだしそうな少女に声を掛ける。
「大丈夫? あんなの、気にする必要ないよ。どう考えたって向こうがひどいこと言ってるんだし。」
「はい・・・」
少女は泣きそうになりながらも、申し訳なさそうに答える。
「ねえ、あなたのお名前は?」
「ソフィア・・・ ソフィア・ビアンキ、です・・・」
「そっか。 ねえ、ソフィアさん。 元気、出して? もうあんなこと忘れてさっ」
「そうね。 あのように低俗な貴族の事は、気にする必要はないわ。」
ミリアーナはソフィアににっこりと笑って慰め、イザベラも声を掛ける。
「はい・・ 助けてくれて・・ありがとうございました・・・」
「うふふ。 もう、お礼なんていいからさ。
ねえ、 ソフィアさん。 私達、お友達にならない?」
「えっ・・・ いいの・・・?」
「もっちろんっ! ねっ? イザベラさんもイイでしょっ?」
急な申し出に戸惑うソフィア。
イザベラもなにやら驚いている様子。
「えっ・・ 私は、別に・・・」
「ほらっ、良いって! みんなでお友達っ! ねっ♪」
にっこりとウインクするミリアーナ。
「うん。 ありがとう・・」
「・・・仕方ないわね、わかったわ。」
ソフィアとイザベラは戸惑うものの、ミリアーナの勢いに流されて返事をする。
このあと、お互いに自己紹介などをしながらしばらく話を続けた三人。
ソフィアも同じ寮に入っている事がわかり、一緒に寮に戻る事に。
昼を少し過ぎたところだったので、途中、皆で昼食の為のパンなどを買って寮に着くと、夕食は三人で食べようと約束をして部屋へと別れて行った。




