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j.kローリング

作者: Coke!


 ハリポッターの世界にどっぷり浸かっていたのだと錯覚したのは映画館に行った数時間後のことだった。とにかく続きが気になった。この作品はシリーズ物ということで、後の話を期待感を募らせ、色々と想いに浸らせてくれた。帰りがてらモール内の喫茶店に入り、パンフレットを眺める。確か、本がもう刊行されているようだが、読む気がしない。 映画という媒体が好きだからこれはもう意地なのである。頼んでたコーラをストローで飲んだあとに、シュワシュワと回想してみる。

  あんな不思議な世界観が異世界に転生する訳でもなく、現代に潜んでいる。そして私たちはふとした瞬間に隣人が魔法使いであるかもしれないことを信じ込むのだ。嘘からでた真にならないが、嘘からでた願いだ。生きている実感を感じるほどに心地が良い。たまに世界が良いものであると錯覚させられるから不思議だ。

 でもね、現実は果たしてそうだろうか? 例えばね今喫茶店の入り口から裕太と取り巻き数人が入ってきた。裕太というのは僕の同学年の筋肉バカのことで、まぁはっきりいうと僕が死んでくれないかなと思っている人物だ。

 目線は下げたけど、向こうは僕の方に近づいて来た。

「おい、お前来てたのか。クズがこんなとこ来ても……あぁお前も観てたのか。ハリポッターと賢者の石、なんかトロールお前に似てたわ。おいトロール俺が退治してやろうか」

 この一言に数人は爆笑しながらトロールと囃し立ててきた。裕太は俺のコップを持って、俺の頭に被せる。クーラーがビンビンに冷えた室内ににちゃにちゃする液体が体に流れた。

「いい映画だったな。おかげで最後も楽しかったよ」

 ダドリーだ。もし僕がトロールだったならば、お前は意地悪な豚のダドリーだ。決してマルフォイとは言わない。お前をモブキャラにしてくびり殺してやる。彼らは大爆笑しながら俺から席を離れて行った。

 俺の元には誰も助けが来ない。ハリーならハグリッドが来てくれたのに。魔法学校で入学式が待っているのに。現実は恐ろしいスピードで全て壊しにやってくる。妄想を、夢を、憧れを、現実が壊しにやってくる。襲いかかってくる。スラム街の夜道を気にしながら歩く女のようにビクビクしなければならない。

 勇気がない。傷つくのも、主張するのも。弱者は弱者だ。おしぼりで拭くこともなく、濡れたまま会計に行く。店員はお忘れですよとパンフレットを差し出した。

「捨ててください」

 ハリーが僕に見せたのは何だったのか、人はあんなに素晴らしいものなのか、本当なのか、僕は騙された気分だ。選ばれなかったものの見る夢を見た。ハリポッターは酷い映画だった。j.kローリングの嘘つき野郎。

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