つよがり ? それとも?
ボクはある人を好きになった。
彼女は美人でみんなから人気があったんだ。
ボクは彼女の容姿だけじゃなくて、その優しくて暖かい人柄にも強く魅了された。
ライバルもいたが、ボクらしく等身大で彼女にぶつかって直球勝負した。
「私、貴方に恋してるよ」
ある日、彼女がボクに言ってくれた。
嬉しすぎてその日の記憶がないんだ。
繋いだ手の感触以外、ね。
それだけは忘れるはずないさ。
晴れて恋人になれたんだけど、ボクはまだ若くて舞い上がってしまったんだ。
逢いたくて逢いたくて、たくさんデートしたかった。
彼女が仕事で疲れていても電話したりした。
彼女の気持ちが少しずつボクから離れていく。
バカなボクは、その事に気づかない。
他にも、自分でも知らず知らずのうちに彼女を傷つけていた。
5月、ゴールデンウィークのある日。
ボクにすれば、彼女と楽しいデートの日。
意気揚々と出掛けたボクは知るよしもなかった。
彼女が大きな覚悟を持っていたことを。
その日、ボクはいつもながら彼女と一緒にいて幸せだった。ホントにお気楽だね。
家に着いた頃に彼女からLINEが来た。
今日も楽しかったね、そんな内容かな?
そう思いながら読んでみた。
「ごめんなさい。これからも貴方と恋人でいることは難しいです。理由はね……」
鈍感なボクにもハッキリ分かった。
青天の霹靂だった。いや、彼女にすれば我慢していたのだろう。
フラれた理由は思い当たる事ばかりだった。
彼女を好きすぎて完全に舞い上がっていたんだ。
いや、これも言い訳だな。
ボクはワガママで思いやりが足りない男だった。
大切にすべき人に対して自分勝手な気持ちを押し付けていたんだね。
「貴方の優しいところが好き」
恋人になれて間もない頃に彼女が言ってくれた。
でも、ボクは優しい男じゃなかったんだ。
今になってようやく分かったんだ。もう遅いよね。
「オレのせいで本当にごめん。キミを大切に想っていたつもりだったけど、独りよがりのワガママだった」
「これからは同じ時間を過ごせなくなったけど、遠くからキミの幸せを願っているよ」
彼女はボクの言葉を静かに聞いてくれた。
ボクの中にはまだ未練があった。
「ラストチャンスをもらえないか?」
このセリフが喉元から出ようとしている。
精一杯のツヨガリでしまいこんだ。
代わりに選んだセリフは
「恋人には永遠に戻れないけど、前みたいに友達になれるかな?やっぱり迷惑かな?」
「いいよ。友達なら大歓迎だよー」
彼女は言ってくれた。
ツヨガリと言うよりも未練がましいな。
ボクの中では彼女はやっぱり恋人だったから友達になれないな。自分から、友達って言ったのに……。
矛盾だらけの自分と彼女にちゃんとサヨナラしよう。
これはツヨガリじゃないよ。
未来に向かって歩いていくんだ。