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第九話
放課後・・・・。
「あの、麻木くん」
「ん?冬音、さん」
一瞬詰まったのは呼び捨てでいいか迷ったからだ。
「あの、呼びやすい呼び方でいいよ?冬音でも、桜でも」
転校2日目の女生徒を名前呼びするのはハードルが高い。
「ありがとう。じゃあ冬音、何か用か?」
「あのね!・・・・昨日もらったみかんのキャンディが美味しかったから何処のメーカーのかな〜、って思って。聞きたかったの」
あれは俺の魔法で出した物だから売ってないんだ・・・・・。
「あ〜、悪いな。俺も貰ったものだからどこのメーカーかまでは知らないんだ。でもまだ家にあるから、持ってこようか?」
「本当!?ありがとう!」
ぱっと花が咲くように笑顔になった冬音。
家に帰ったら適当な袋にキャンディを増産しなければ。
「じゃあ、悪い。バイトがあるから」
「あ、引き止めちゃってごめんね。いってらっしゃい」
なんとか魔法のことは伏せたままその場を後に出来た。
「あのキャンディの味・・・・もしかして」