第三十二話
「10年前から・・・・・?どういうことだ?冬音が転校してきて、それから数日の付き合いしか・・・・・いや、あれ?」
「私達、10年前に会ってるんだよ。私は一時的に引っ越してきて、迷子になったところを麻木くんに助けてもらったの。麻木くんだって知らなかったけど、あのキャンディの味は忘れられなかったの」
「いや、待て待て。多分俺も覚えてる。一度だけ泣いてる女の子にこの魔法で、はじめてキャンディを出して渡したことがある」
そうだ、この魔法を使えるようになってはじめての事だった。ゲームみたいなかっこいい魔法に憧れた俺が、この魔法でいいんだと思った時だ。
それが、冬音だった?
「だから、この島にまた来るの楽しみにしてたの。初恋の人がいるかもしれないって」
「冬音の言いたいことは、分かったよ」
「じゃあ!」
「でも。俺にとってはあの時の記憶は大事な思い出だけど、恋じゃなかった。俺にとっては冬音のことは転校してからのここ数日の姿しか知らない」
男女の違い、というものなのだろう。
冬音にとって初恋でも、俺にとっては思い出の一つでしかないんだ。
「そっか・・・・」
「ああ、その、ごめ」
「謝らないで!私が勝手に想っただけなんだから。ところでこれだけ聞きたいんだけど」
「なんだ?俺に答えられるならなんでも答えるぞ」
「今付き合ってる人・・・・ううん、好きな人はいる?」
「!? なんっ!・・・・いや、今は特にそういう人はいないけど」
「じゃあ、まだ私にだってチャンスはあるね」
「は?」
「まだ好きな人がいないなら、これから私を好きになってもらえばいいじゃない?だから、これから頑張る」
「・・・・」
言葉が出ない。
「覚悟しておいてね?」
冬音はそれはもうニッコリと笑った。




