【天然危険物】AI絵師というマヤカシ
黒崎 「今回は方々で燃えてる〝AI絵師〟さんに背中からこっそりガソリンをぶっかけてみようかと」
チロン 「ほー。どっちかとゆーと御主人がガソリンかぶって玉砕タックルかます感じでは、と疑いたくなる確率100パーなのですが」
黒 「まあ、それはそれで傍目には面白いかと」
チ 「例によっての焼身マーケティング、御苦労様なのです」
◆ ◆ ◆
黒 「本題の前に、画像生成AIの種類について簡単に触れておこう。
なお、分類の用語は僕様式なので、あしからず。
●無制限学習AI
ウェブ上のあらゆる画像情報を勝手にむさぼり喰って学習するタイプ。
現状、画像生成AIといえばコレのこと。
プロンプト(自然言語による発注文)を入力するだけでよいので誰でも簡単に操作できるが、思い通りの画像を作らせるにはそれなりの工夫が必要。
様々な画風に対応し、人気キャラの描写や人気クリエーターの模倣も可能。
ただし、学習ソースに版権画像が多数含まれているため、利用には訴訟リスクがつきまとう(実際、複数の国で裁判沙汰になっている)
●任意学習AI
提供された学習ソースのみを使っているタイプ。
こちらもプロンプトで操作する。
無制限学習AIより学習量が圧倒的に少ないため、描画力が若干劣る傾向があるものの、学習ソースにまつまる法的・道義的問題が生じないのが強み。
今後は、このタイプが主流になると思われる。
●指定学習AI
ユーザーが入力した複数の画像を解析し、その画風を真似た絵を作るタイプ。
比較的用途が狭く、他人の絵を勝手に使う悪質ユーザーが多発したこともあってか、この種の生成AIの開発は盛んではない。
上位互換となりうる任意学習AIに取り込まれるかたちで、消えてゆくのではないだろうか。
●加工AI(i2i)
指定された画像を様々に加工するタイプ。
生成AIというよりは画像変換アプリで、ペイントソフトのフィルタ機能をより高性能にした感じ。
特定のクリエーターの画風を本人の同意無く学習させたものもあるため、商業利用には注意を要する。
黒 「──と、こんなとこかな。それでは、ホザきモー
ドへと移行しよう」
チ 「らじゃ」
【AI絵師という幻想】
黒 「まず大前提として、〝AI絵師〟なんてものは存在しない、と真顔で言い切りたい」
チ 「うきゅ? でも、巷には絵師を自認するAI使いがウザいほどいるのです」
黒 「それは〝自分を絵師だと思いこんでる愉快な人〟にすぎない」
チ 「おー。それを言っちゃオシマイよ的なことをさらりと言いやがる御主人に今更ながらドキドキなのです」
黒 「AI絵師がらみの騒動の根底には〝絵師でないものが絵師としてふるまう欺瞞に対する嫌悪感や違和感〟があるように思うんだ。
なら、そこを避けては通れないさね。
てなわけで訊こう。
そもそも〝絵師〟とは、なんぞや?」
チ 「絵を描く人」
黒 「AI絵師は絵を描いてる?」
チ 「んー……そう言われると、確かに描いてはいないのです。作ってるって感じ」
黒 「うんにゃ、作ってもいない。作ってもらってるだけ。
たとえば二郎系のラーメン屋さんで「アブラマシヤサイマシマシカラメ」などと呪文を唱えれば、その通りの一杯が出てくるわけだが、そのラーメンは誰が作る?」
チ 「店員さんに決まってるのです」
黒 「そうさな。間違っても客ではない。画像生成AIも、それと一緒。絵を生成するのはAIであって、プロンプトという名の呪文を唱えた人ではない」
チ 「つまり、絵を描かせてるだけで描いてるわけではない輩が絵師を名乗るなんざチャンチャラおかしいぜファッキン詐欺野郎が、と」
黒 「まーな。とはいえ、いちいち〝絵師ぶる画像生成AI利用者〟とか呼ぶのは面倒だから、ここでも便宜上〝AI絵師〟と呼ぶけど、それが皮肉だってことを敢えて明言しておこう」
チ 「実際、AI絵師って呼び名は、ほとんど蔑称になってますしね……」
黒 「んじゃ、せっかくだがら駄目を押しちゃうか」
【AIが生成した絵は著作物ではない】
黒 「暫定的だけど、アメリカでは〝画像生成AIが生成した絵画は著作物ではない〟との司法判断が出てる。
著作権や特許などはアメリカのルールが事実上の世界標準になるケースが多く、おそらく本件も例外ではないだろう。
実はこれ、AI絵師にとっては死刑宣告なんだよね」
チ 「きゅきゅ? どうしてなのです?」
黒 「著作物でないものに著作権は発生しない。つまり、AI絵師に帰属する権利は何ひとつ無いってことだからさ。
その絵は自分の作品だ、と主張できる法的根拠が皆無なんで、AI絵師は〝作者〟たりえず、絵師と呼べる存在ではありえないわけ。法的にも、社会的にもね」
チ 「むー。存在そのものを法的にも社会的にも全否定されるなんて、素晴らしく御愁傷様なのです。なむー」
【AI絵師の終焉】
チ 「にしても、最近やけにAI絵師さんへの風当たりが強くなったのは、どうしてなのです?」
黒 「贋作AI絵師らによる〝実害〟が表面化し始めたから、だろうな」
チ 「実害?」
黒 「画像生成AIが現れた当初、一部の絵師たちは強い拒絶反応を示した。キャッチーな萌え絵を誰でも簡単に大量生産できるシステムは、同系統の画風のアマチュア絵師の創作意欲を打ち砕くだけのインパクトがあったし、下世話な言い方をするなら、自分たちのナワバリを土足で踏み荒らされる感じもするからね。
反面、絵師以外はわりと好意的だったように思う。べつにAIの絵でも構わないという消費者は少なくなかったし、新たなビジネスチャンスとして期待する声も多かった」
チ 「ふむふむ」
黒 「商機となれば当然、資金と人材が集まる。おかげで画像生成AIは加速度的に進歩しつつ普及したが──その速さに法整備やマナーの育成が追いつかず、なかば無法地帯になってしまった。
人気絵師の画風を堂々と無断借用するAI絵師が大発生したんだ。
その種のAI絵をTwitterに流してドヤるだけならまだしも、ほどなく贋作を売りさばく輩が現れた」
チ 「あう、盗人猛々しいのです」
黒 「だな。こうなると、パクられる絵師としてはさすがに看過しがたい。で、対策に乗り出した。
有名絵師さんが次々と、イラスト投稿サイトからの一時撤退を表明したんだ。
集客力のある有名絵師たちにソッポを向かれたら、確実にサイトの収益は落ちる。なので早速、多くのイラスト投稿サイトがAI絵師を締め出しにかかった。
人気の絵師たちが反AI絵師の姿勢を明確にしたことで、これまで比較的AI絵師に甘かった萌え界隈の空気が一気に反AIに傾いた感もあるかと。
今なお〝描いたのが人間だろうがAIだろうが関係ねーし〟という人がいるにはいるが、完全に少数派だ」
チ 「そーゆー反AI絵師の風潮に対して、当のAI絵師さんたちはどう言ってるのです?」
黒 「もちろん反発してる。じゃあ、彼らの主張のいくつかを挙げて、ついでに反証してみよう」
【〝絵師だって模倣してるだろ〟】
黒 「画像生成AIが著作物を情報解析して学習するプロセスは、人間が他人の絵を真似しながら画力を養ってゆくのと同じなのだから、AIだけ責めるのはおかしくね? って論法だな」
チ 「んー、なんか正論に聞こえるような……」
黒 「まぁね。ついでに言うと、著作物の情報解析は著作権法で認められてるんで、それ自体を咎めることはできない」
チ 「じゃあ、この主張はやっぱ正論?」
黒 「いや──AIの機械学習と人間の機会学習を同列に扱うのは、さすがに乱暴だよ。
他人様の画風を模倣した絵を機械に作らせるのと、好きな画風を真似て自分で描くのは、本質的にまったく異なる行為だもの」
チ 「うーん、言いたいことはなんとなくわかるけど──結局それって精神論じゃん? とか思ったりしないでもないボク様なのです」
黒 「うん、確かに精神論ではある。それは認めよう。
でも、人の思惟とか、心の様相とかいうものは、物事の価値判断の重要かつ普遍的な要素だと僕様は思うのだ」
チ 「とゆーと?」
黒 「たとえば、写経というものは肉筆で書くことに意義がある。他人が書いたやつをコピーしたり、パソコンで打ち込んで印刷したりしても、写経としては全くの無価値だろ?」
チ 「そりゃ、そうなのです」
黒 「なんで無価値なんだ?」
チ 「うきゅ??? ……なんでかな」
黒 「様式を無視してるからさ。〝一文字ずつ念いをこめて書き写す〟というのが、写経の写経たる様式。そうでないものは、もとより写経ではないんだ。
絵画だって、そう。
人が描いた絵画と、AIが生成した画稿は、表面的には同じような〝もの〟にみえようが、実はまるで異なる事象なんだ。AI絵師は絵師ではないと言ったのは、そういうことなのさ」
チ 「つまり、AI絵師は絵師としての様式を持っていない、と」
黒 「そう。なのに絵師としてふるまうのは虚偽だし、勝手な贋作で銭儲けしようなんざ、実にゲスい。
いまだ贋作AI絵師を擁護し続ける人は、彼ら同様、社会性や人間性に重大な機能不全があると思われても致し方あるまい」
【〝AI絵師がダメなら二次創作もダメだろ〟】
黒 「これまた贋作AI絵師の決まり文句。安手のどっちもどっち論だ」
チ 「これ、盛大に墓穴掘ってません?」
黒 「うん。自分たちの〝作品〟が他人の著作物の剽窃だと認めてるわけだからな。ブーメランで切腹してるようなもんかと。
他方、個人の趣味の範疇を超えた二次創作が著作権の侵害にあたることも確かだ。
推しキャラを描いて身近な友達に見せるぐらいなら全く問題ないけれど、同人誌の販売や二次絵の有償依頼等は〝個人で楽しむ範囲〟を超えてるし、不特定多数に披露するSNSでの二次創作も厳密には違法だ」
チ 「ふーん。そのわりに、ほとんど野放しですよね」
黒 「版権者にとって、二次創作には販促効果という利点があるからな。著作権侵害、作品性の毀損、商品価値の低下といった損害よりも販促効果の方が大きいとみて、よほど目に余るもの以外は黙認してるのさ。
ただ──これは推論だけど、AI絵師による二次創作に対しては厳しい態度をとる版権者が多くなるかも」
チ 「なして?」
黒 「ファンが時間と手間を惜しまず描いた二次絵は嬉しいが、カネ目当ての人間がAIに作らせた二次絵はムカつく、ってクリエーターは少なくないだろうからね。
それこそ、さっき言った〝様式〟の問題さ。
もとよりAI絵は二次創作の様式を満たさないのよ」
チ 「まさか……AI絵師には愛が足りない、とか言うつもりなのです?」
黒 「おう。その、まさかだ」
チ 「あじゃぱー」
黒 「事実、AI絵師にはコンテンツやクリエーターへの愛が無い。憧憬も敬意も無い。あるならAIに画風を盗ませたりするものか。だろ?」
チ 「言われてみれば、そうですね」
黒 「二次創作の原動力は、その作品や作者が好きな気持ちからくる創作意欲。
本当に好きなら、たとえ下手でも自分で描くほうが楽しいはず。憧れの絵師みたいになりたいと願うなら、その手で絵を描きまくるに違いない。
それが創作意欲ってもんだ。
創作意欲は、みずから創作することでのみ満たされる。他者に創作させても代償にはならない。
なら、AI絵師がAI絵師たらんとする動機は、創作意欲ではありえない。論理的にね。
その時点でAI絵師と二次絵師はイコールではないし、ニアイコールですらない。むしろ真逆の存在だ。
よって、二次創作を引き合いに出して自身を正当化しようとするAI絵師の理屈はナンセンスなのよ」
【〝絵柄に著作権は無い〟】
黒 「残念ながら、これは事実だったりする。絵柄、画風、画法といった絵の形式は、著作権法の保護対象ではない」
チ 「へー。じゃあ、コピり放題? 荒木飛呂彦の絵柄を完コピしてケモロリ娘が乳繰りあう18禁学園百合マンガとか描いても、お咎めなし?」
黒 「そのマンガは違う意味でお咎めを受けそうだが……著作権侵害にはならないよ。ただ──」
チ 「ただ?」
黒 「絵柄に著作権は無くとも、意匠にはあるのよね」
チ 「???」
黒 「キャラクター、コスチューム、メカなどのデザインは著作物だし、絵の構図も独創性があるとみなされれば著作物になりうるんだ。
絵柄に著作権はねーし♬ とナメくさって贋作AI絵を量産してると、いきなり訴えられたりするかもしれないし、刑事事件になることだって充分にありうる。
その場合は、より立件しやすい偽計業務妨害罪が適用されるかもな。また、AI絵師に贋作を依頼した人も、共同正犯に問われるおそれがある」
チ 「ふーん。あ、でも、AI絵師専門の支援サイトもありますよね」
黒 「ああ。しかし、AI絵師に特化したマネタイズ支援サイトは数えるほどしかない。何故だと思う?」
チ 「さぁ……」
黒 「AI絵師が訴えられた場合、活動拠点を提供したサイト事業者も巻き込まれるおそれがあるからだよ。だから、健全な事業者ならAI絵師の金儲けには手を貸さない。
まぁ、〝虐げられてるAI絵師に救いの手を〟みたいなボランティア精神でやってる人もいそうだけど」
【〝デジタルで描いてる奴はAI絵師と一緒】
チ 「これは、完全な言い掛かりですよねぇ」
黒 「ああ。ペイントソフトに〝全裸で御開帳してるケモ耳巨乳幼女を描いて〟と頼んだって、髪の毛一本すら描いちゃくれないんだからな」
チ 「例題がお下劣なのです」
黒 「イメージの視覚化を完全に機械任せにしてるAI絵師と、機械を画材として利用して自分で描いてるデジタル絵師は、まったくの別物だよ」
◆ ◆ ◆
黒 「さて、AI絵師さんの自尊心を踏みにじって御満悦な性悪プレイはこのぐらいにして──最後に僕様の心証を語って終わるとしよう」
チ 「ただでさえこのエッセイは長ったらしいんだから自分語りは手短にしとけよワレ、と心の中で祈るのです」
黒 「……声、出てますが」
チ 「いやん」
黒 「お察しの通り、僕様は贋作AI絵師が大嫌い。
でも、生成AIを嫌ってはいないし、危機感も敵愾心も無い。
むしろ便利な画材として利用する気でいる。
何故なら、お絵描きが好きだから。
AIには勝てないと絶望して筆を折ってしまうようなヤワな〝好き〟ではないし、画力はさておき創造性ならAIにゃ負ませんぜって気概もあるんで。
我々にとって便利なテクノロジーは犯罪者にとっても便利なわけで──画像生成AIにも著作権侵害、詐欺、ディープフェイクによる悪質なデマや児童ポルノの蔓延といった問題かつきまとう。が、その技術はこれからも進歩し、社会に馴染んでゆくに違いない。
そのうちに法整備が進み、悪用を阻止する技術も進歩するだるうし、さらに利用者によってマナーやエチケットが形成されれば、現状の課題の大半は解決に向かうことが期待できる。
なら、絵師の側もただ感情的にAIを毛嫌いするのではなく、界隈のルール作りに関わってはどうだろうか?
そんな思いもあって、このエッセイを書いてみたのでありました。
贋作AI絵師は、生成AIの未来にとっても邪魔でしかないしね。
もっとも、お絵描き野郎の一人としてわきあがる〝あいつらムカつく〟って憤慨が本作の主成分ではありますが──
──終劇──
いかがでしたか?
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ついでに他の拙作にも目を通してもらえると、もれなく感涙にむせぶのであります。
では、また。
いつか、どこかで──