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第6話:マギスとエミリー

 マギスとエミリーは、約一年もの間で辺境の地を旅して回った。

 エミリーに関しては見た目が完全に幼女と化しているので魔王エミリスタだとバレる心配はなかったが、マギスは違う。

 彼は見た目も何も変わっておらず、単に名前をラクスからマギスに変えただけで、身バレをしないようにしていることといえば目深にフードを被るくらいだ。

 とはいえ、辺境の村では手配書こそ回ってきていても、この場にラクス・マギラエンが現れるとは誰一人として思っておらず、多少顔を見られたとて追い掛け回されるなどということは一度も起きなかった。


「お主、人族の中では人気がなかったのか?」

「表立って人気を集めていたのは勇者や他の英雄たちだったからなぁ。僕は完全に裏方だったし、活躍も全部奪われていたんだよ」

「……不憫だのう」

「まあ、僕も面倒がって抵抗しなかったのが悪いんだけどね」


 そう口にしたマギスの表情は苦笑いだったが、すぐに真顔になって笑みを浮かべた。


「でも、そのおかげで今はこうしてエミリーと旅ができているんだから、昔の僕を褒めてあげたいかな」

「……ふ、ふん! そのようなことを言っても、我からは何も出てこないからな!」

「ん? それはそうだよ。だって、今の僕が昔の僕を褒めてあげたいだけなんだから」


 何を当たり前のことを、と言わんばかりの表情をされてしまい、エミリーはわなわなと震えながら大股で歩き出す。

 二人が今いる場所は辺境の森の中であり、魔王国のように荒廃した場所ではない。

 青々とした木々が視界を埋め尽くしており、時折野鳥の鳴き声も聞こえてくる。

 人族と魔族、お互いの国土が面していた場所はどこもかしこも戦場となり、今では雑草すら生えてこない死んだ大地になっている。


「人族の国土にこのような場所がいまだに残っていようとはのう」

「僕も驚いた。魔王国との国境線とは面していないけど、手前の山脈越えが厳しいからかな、人族の地図にも一切載っていない場所……未開地だったんだよね」


 マギスたちが暮らすここ、ライカール大陸には未開の地が多く存在している。

 それは人族の国土にも、魔族の国土にも存在しており、二人が歩いているこの森も未開地の一つだ。

 お互いに未開地の調査は国土を広げるためにも必要なことなのだが、今までは戦争のせいで後回しになっていた。

 だが、人族に関しては魔族との戦争に勝利したことで、今後は未開地の調査を最重要事項に持ってくることだろう。

 しかし、未開地には未開地である所以が存在している。


「おっと、話はまたあとでだね」

「また現れおったか。全く、面倒この上ない存在だのう――害獣(がいじゅう)どもは」


 茂みの奥から姿を現したのは、ソードウルフという名前の害獣だ。

 犬の姿によく似ているが、その体躯は全長二メートルを超えており、四肢はエミリーを押し潰せるほどの太さを誇っている。

 ソードウルフが一歩前に出るたびに、ズン、ズンという足音が響いてくるほどで、普通の大人であれば一目散に逃げだしているところだろう。


『グルルルルゥゥ……』

「さすがは未開地だよね。僕が今までに見たことのあるソードウルフは、二回りくらい小さかったはずなんだけどなぁ」

「我も同意見じゃ。ここに至るまでに遭遇した害獣も、開拓地の同個体と比べて明らかに大きかったからのう」


 しかし、マギスは腰に提げていた一般的な剣を抜きながら普段と変わらない口調で言葉を発し、エミリーもそれに答えるようにして会話を続けている。

 二人にとっては規格外の大きさを誇るソードウルフでさえも、逃げる対象とはなりえなかった。


『ガルアアアアアアアアッ!!』


 二人の余裕がソードウルフの野生の本能に火を点けたのか、強靭な四肢で地面を蹴りつけると、突風を巻き起こしながら突進してきた。

 ソードウルフの特徴は自らの意思で体毛を鋭利な刃に変えることができ、そうなれば自由自在に動き回る剣の塊と化してしまう。

 マギスが持つ普通の剣では切り結ぶこともできず、一撃で折れてしまうか、耐えられたとしても巨体に押し倒されて体中に穴を開けられてしまうはずだった。しかし――


「よっと」


 ――キンッ!


 鋭く振り抜かれた剣がソードウルフを捉えると、ぶつかり合うはずがするりと剣身が害獣を斬り裂いてしまった。

 勢いよく突進してきたソードウルフだったが、鋭利な刃に変わっていた体毛はだらりと下がり、全身から力が抜ける。

 そして、縦に両断されていた体がズルリとズレて地面を赤く染め上げた。


「いつ見ても見事な剣技じゃのう、マギスよ」

「お褒めにあずかり光栄だよ、エミリー」


 マギスの剣には血の一滴もついておらず、彼はいつもと変わらない笑みを浮かべながら鞘に戻していく。


「――きゃああああああああっ!!」


 しかし、そこへ突然の悲鳴が聞こえてきた。

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