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第3話:魔王エミリスタ・フォント・ダーク

「――久しぶりだなぁ、魔王国ライガモ。そして、魔都フォルスガング」


 ラクスが辿り着いた先は魔王と一戦交えた場所であり、魔王国の中心地だった。


「戦っている時には気づかなかったけど……うーん、だいぶ派手に戦ったんだなぁ」


 魔王との戦闘から一年が経過しているものの、魔都フォルスガングが修復された形跡はなく、この地に誰も足を運んでいない証拠でもある。

 人族から見れば魔王国の中心地ということで危険を伴うこと、そして魔族からすると事前に魔王から近づくことは許さないと言明されていたという理由があった。

 見渡す限り荒廃した大地が続く土地なのだが、ラクスは目的地を決めているのか一切の迷いなく歩き続けている。


「確かこの先に……あぁ、あった、あった」


 僅かに高台になっていた場所を上がると、そこは建物だけでなく、大地までもがひと際激しく陥没し、捲れ上がっている。


「……懐かしいなぁ。勇者に邪魔をされなかったら、どれだけ楽しい時間になったんだろうか」


 この地はラクスが魔王と激しい戦闘を繰り広げた場所であり、勇者によって魔王が倒された場所でもある。

 悔しさがないわけではないが、その気持ちを押し殺してでもラクスは踵を返してこの地をあとにした。

 何故ラクスは気持ちを押し殺してでもこの地を早々とあとにしたのか、その理由を見つけるために彼は戻ってきていた。


「それじゃあ――魔力感知」


 ラクスは一度立ち止まると、目を閉じて自身の魔力を広域に放出していく。

 薄く、長く放出された魔力は、ラクスを中心に広がり周囲の生物を探し始めた。

 虫の一匹も存在していないはずの場所で何を探しているのか、もしもこの場にラクス以外の誰かがいれば、バカだと口にしたことだろう。

 だが、ラクスは確信を持っていた。この地に探し人がいるということを。


「…………いた。あっちだね」


 魔力感知で何かを見つけたラクスが目を開けると、目的の場所めがけて歩き出す。

 その場所は魔王が倒された場所から数百メートルも離れていたが、ラクスは小さな笑みを浮かべながらわくわくした気持ちで向かっていく。

 そうして見つけた何かがあるだろう場所まであと少しと迫った時――目の前に漆黒の炎が噴きあがった。


「おっと! ……そこまで警戒しないでくれないかい?」


 ラクスが柔和な声でそう伝えると、漆黒の炎は僅かに揺れた直後、まるで意思を持っているかのように踊り出した。


「はは、僕が何者か分かったんだね。おっと、燃えちゃったら大変だから戯れるのはもう少しあとでね」


 漆黒の炎が躍りながら近づいて来ようとしたのを見てラクスがそう告げると、炎は残念そうに火力を弱めたが、すぐに移動を開始した。


「案内してくれるんだね? ありがとう、助かるよ」


 移動する漆黒の炎を追ってラクスが歩き出すと、そこには大岩の後ろに隠された小さな洞窟があった。

 漆黒の炎は明るさを増して洞窟内を照らしてくれたことで、ラクスは楽に進むことができた。

 不思議なもので、奥に進めば進むほどに岩肌が滑らかになり、地面も均されている。

 そしてついに、洞窟の最奥で目的の何かと相対した。


「お久しぶりです。魔王、エミリスタ・フォント・ダーク」

「やはりお主であったか。人族最強の男、ラクス・マギラエン」


 ラクスが見つけた何かとは、魔王エミリスタ・フォント・ダークのことだった。


「ずいぶんとかわいらしい姿になったんだね」

「ふん! 魂が肉体を構築してからそれほど時も経っておらんし、仕方ないのじゃよ」


 しかし、エミリスタの肉体は幼女と言っても差し支えないほどに小柄であり、その声音もかわいらしいものだ。

 今の彼女を見て、誰が人族を滅ぼそうとしていた魔王だと気づくだろうか。


「しかしお主、勇者が我を斬った時から魂は生きていることを見抜いておっただろう? どうして止めを刺さなかった?」

「はは、いきなり確信を突いてくるんだね」


 そして、エミリスタは気づいていた。ラクスが意図して彼女を見逃していたことに。


「うーん、そうだなぁ。強いて言うなら、あなたとの再戦を申し出たかった、というところかな」

「そういうことならば受けて立とう! ……と言いたいところだが、この体ではのう」


 エミリスタもラクスとの戦いに楽しみを覚え、そして勇者に斬られたあともどうにかして彼との一戦に決着をつけたいと思っていた。

 だが、今のエミリスタでは全盛期の百分の一の実力も出すことができない。

 このまま戦えば、過去の楽しかった戦いに泥を塗ってしまうと自分の体を呪っていた。


「お主がここに来たということは、我の存在が人族に知られたということであろう?」

「いいや、違うよ」

「ならばさっさと切って捨てるがよい。我は逃げも隠れもせん……ぞ……えっ?」


 自分はここで死ぬのだと思い込んでいたエミリスタは、ラクスが呆気なく放った否定の言葉に、美しい金眼を大きく見開きながら驚きの声を漏らした。

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