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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Pray to God

作者: 海座009

小説家になろうに登録して初めての投稿です。

どうぞお手柔らかにお願いいたします_:(´ཀ`」 ∠):

もう日常に疲れたーーーー。

来る日も来る日も同じことの繰り返し。何かに追われ続けて。

必死でそれをこなしたら、1日が終わる。

他の人に掛け合わなければならない仕事で連絡を入れても瞬時な対応は得られず、ましてや恋人に連絡を入れても返信はないまま。家族とも不仲なせいで連絡は取っていない。友達は一応いるが、親友と言えるほどの仲はいない。

こんな自分が死んだとしても仕事の代役なんていくらでもきく。誰もきっと悲しまない。そんな私に存在意義はあるのだろうか。そう問うて何年が経ったんだろう。

そう思ったとしても痛いのは嫌いだし、苦しむことも嫌い。だから自分で死のうとも思えない。

帰り道に通り魔に会ってうっかり刺されて死ねたりしないかな。踏み外した先が崖でフッと消えれないかなーーーー。


そういう感じで、毎日を嫌々ながら幽霊のように過ごしている。




ある日、昼休憩中に仕事の同僚が何やら楽しげに話しているのを聞いていた。

「ここから電車で5駅のことろに、絶対に願いを叶えてくれる神社があるんだってぇ〜!」

「えーホントに叶えてくれるの?そういうのってなんか胡散臭くなーい?」

「でもでも、SNSとかでこう願ったら叶いましたっていう投稿めちゃくちゃあるよ?

 ねぇ〜行こうよ〜」

「わかったわかった。信じてないけど叶ったらラッキーだし今日帰り行ってみよー。」


ああ、なんて馬鹿らしいんだろう。

こういうことを話している人は、基本自力で叶えられそうなことを願いに行くもんだ。

彼氏が欲しいとか、韓国アイドルみたいに綺麗になりたい、とか。

もう少し努力してから他力本願にするべきでは。


こういうひねくれた考え方を持つから、友人とかと深く関われないんだな、と実感した。


さて、やることやってさっさと帰ろう。帰って何をするわけでもないが。

そう思ってパソコンを勢いよく叩き始めた。




次の日。

昨日の同僚たちが他の人を交えて神社の話をしている。

「私は絵馬に1週間以内に彼氏が欲しいって書きましたぁ!」

「私はー、短期間でとびっきり痩せたいって書きました!絶対無理そうだけど!」


ほら、やっぱり。思った通りじゃん。


「そんな感じで軽く書いていいもんなの?前、調べてみたら、よく考えてそういうことを書かないと手段を選ばずに叶えるって書いてあったよ?」

「えーそうなんですかぁ?何も考えてなかったぁ」

「でも叶ったら叶ったで結果オーライじゃないっすかね?笑」

「もうやっちゃったなら仕方ないけど、これから気をつけなねー、本気でお願いしに行ってる人もいるんだから。」


へー、手段を選ばない、かあ。願い方を考えなきゃいけない、という神社は俄然珍しい。

興味が湧いてきた。

とりあえず、その二人の願いが叶うかどうかを見てからにしよう。


それから、3日間は普通の日常だった。

仕事をそつなくこなして、帰るだけ。あの神社の話もあがらなかった。




休みを2日挟んで出勤したら、あの同僚二人がいなかった。

ちょっと気になった。何があったのか。

「あのー、あの二人、休んでるみたいなんですけど、どうしたか知ってます?」

「二人とも、急に入院したみたいなの。あんまり詳しくは聞いてないんだけどね...」

「二人とも、同じタイミングで入院したんですか?なんとも不思議な...」

「そうらしいのよ、あそこの神社さんかしら。怖いわね。あなたも気をつけてね。」


不謹慎だろうがもっと詳細を知りたくなった。

まあでも、いずれ何で入院した、という噂が流れるだろう。


次の日。

出勤したての私に噂話のキンキンとした声が頭に響く、響く。

「一人は、階段を踏み外して足を骨折したそうよ。」

「もう一人は、拒食症になったって。急に恋人からお前は太ってるって言われ続けて暴力振るわれてたみたい。かわいそうに。」

「帰りにみんなでお見舞いに行ったほうがいいかしらね。」

「そうしましょう。急にこんなことになって心配だもの。」


なぜか見舞いに行く算段になっている。

でもまあ、二人の現状を確認するにはいい機会かもしれない。

仕事をこなそう。

いつもより気分がいいのが自分でもわかる。


そして見舞いに行く時間になった。

最近でこれほど楽しみだと思ったことがあっただろうか。

さてさて、ご対面と行こうか。

まずは骨折した方から。


「こんばんは〜お見舞いに来ました」

「大丈夫なの!?急に二人ともこんなことになって心配したんだから」

「いつ退院できるの!?」


矢継ぎ早に質問を受ける同僚が少しかわいそうだ。

彼女の隣に、なぜか男性の看護師がピッタリとついている。


「その看護師の方は、なんでずっといらっしゃるのかしら?」


おっ、誰かが私が思った疑問を聞いてくれたみたいだ。


「えーっと私ぃ、骨折してこの人と出会ったんですぅ。病院に運ばれて入院ってなった時に一目惚れしちゃってぇ。勢いで告白したらこの人も一目惚れしてくれてたみたいでぇ。」


キャーーーーーッ

ピンク色の歓声が、飛び交う、飛び交う。


「あの神社の話は本当だったのね!」

「確かに手段は選んでないわね」

「でもこれなら結果オーライよね!めでたいわあ」


手段を選ばない、とはこういうことか。不透明すぎてよくわからなかったが、よく理解できた。

でもまだ一人目。もう一人を見るまではまだ証拠が十分とは言えない。


次に拒食症の方。

「こんばんは〜お見舞いに来ました」


彼女はちらっとこっちを見てすぐ目線を下に向けた。返事はなし。

よく見てみると、彼女の顔はものすごいやつれており、全く覇気がない。

話す気力がそもそもないみたいだ。


「お、お大事に〜」

(こっちは来ないほうが良かったみたいね...)

皆が口を揃えて囁きだす。

お土産ここにおいていくわね〜、と言って皆そそくさと出て行った。私もそれに続いた。


病院の出口で解散となった。


ーーーーーーーーーーあの神社は、なんでも叶えてくれる。

これで確証ができた。

ふふふ。今度は、私の番だな。

気分がいい。この足でその神社に行ってしまおう。

向かう足取りのなんと軽いことか。飛び立ってしまいそうなほどだ。


電車に乗ろう。あの素晴らしい神社に行こう。




さて、神社についた。

絵馬を書いた後にそれを持って茅の輪を2回くぐるのか。よし。

願い事は...。

『私が楽に死ねますように。』

これを持って茅の輪を2回くぐるだけ。

よいしょ、1回。もう1回。よしっと。

チャリーン。パンッパン。

どうか『私が楽に死ぬことができますように。』


よし、帰ろう。これからが楽しみだ。



あの願い事をしてから、1週間は経った。特に何も変わったことはない。

なぜだ。私の願い方が悪かったのか。

そう思った矢先だった。会社の上司から、ちょっと、と言われ個室に呼ばれた。


「あなたのご両親が事故にあったみたいよ。さっき、あなたの地元の病院から連絡があって。」

え......なぜ両親が。なぜ私じゃないのか。


「その言いにくいことなのだけれど......」


その後の上司からの言葉がなかなか出てこない。


「ご両親にぶつかったのが大きいトラックで、運転手が居眠り運転してたみたいで。正面衝突だったらしいの。」

「お二人とも即死だったみたいで。」


私は上司に促されるまま帰宅した。

その話を聞いても、特にショックはなかった。

連絡を取っていなかった人たちが完全なる音信不通になった、という感覚だけ。

ただ、疑問なのは、どうして両親が死んだかということなのだ。願ったのは私が死ねますように、なのに。


一応、恋人にも両親が亡くなった旨を伝えた。

その30分後、急に恋人が家に来た。恋人が家に来ること自体、何年ぶりだろうか。

「大丈夫かな、と思って。」

「全然大丈夫。私が私の両親と仲悪いの知ってるでしょ。わざわざ来なくてよかったのに。」

「せっかく心配してやってんのに、なんだよその言い草。そんなんだったら帰るわ。」

「おー勝手に帰ってくれ、ろくに恋人に会いにこないくせにこういう時だけ一丁前に来るのかよ」

私が暴言を吐いた直後、ドアが乱暴な音をたてて閉まった。

素直にありがとう、と言えばよかったのだろうか。会うこと自体が久々だったのにちょっと悪かったかな、と後悔していた。後で謝りの連絡を入れておこう。


夜ご飯を作って食べて風呂に入り、ボーっとテレビのニュースを見ていた。

『今日の午後3時ごろ、電車で急な点検作業が入ったためダイヤが大幅に遅れており、最寄りの駅で大混雑がありました。その大混雑でたくさんの人が押し合いになり、最前列であった○○さんが線路に落ちたようです。その後電車は急ブレーキを押すことができず、電車に轢かれてしまったということです。こんな悲しい事実が.........』


あれ、○○って私の恋人と一緒の苗字だ。珍しい苗字なのに、他にもその苗字の人いたんだ。

そう思ってニュースを見続けていた。

被害者の顔が映し出された。

『〇〇□□さん。24歳でし...............』

待って待って。これは私がさっき会った顔だ。嘘でしょ?なんで私の周りでこんなことが多発しているんだ?

しかも今日に限って。

怖い怖い怖い怖い。これ以上誰かが死んだら自責の念に苛まれてしまう。

枕に突っ伏して声を押し殺して泣きに泣いた。また周りの誰かが死ぬんじゃないかと思って怖くてたまらなかった。


何時間経ったんだろう。泣き疲れてしばらく眠っていたみたいだ。

起きてすぐに電話が鳴った。寝ぼけたまま電話に出た。

「××さんのケータイでお間違い無いでしょうか。」

「ふぁい」

「私、△△●●の母です。高校の頃仲良くしてくださってたと思うのですが。」

記憶を寝ぼけた頭から引っ張り出す。

ああ、あの子か。高校の頃一番仲良かった子だ。

目がくりっとしてて女の子らしく、私たちの学年のマドンナだったなあ。

「はい、あの時は大変お世話になりました。今日はどういったご用件で?」

答えた直後に寒気が走った。

「●●は、大学に入ってからがんが見つかりまして入退院を繰り返していたのですが、ここ一年は体調があまりすぐれなくてずっと入院してたんです。さっき息を引き取りました。一応、ご報告をと思って。」

まただ。またなのか。私のせいなのか。

呆気に取られ、ケータイを手から離してしまった。


もう、無理。神様に願ったのは周りのことじゃなく私のことなのに。なぜ。

私に自分から逝け、ということか。わかった。思い通りにしてやる。

自分の部屋の窓を開けた。精一杯の助走をつけた。


ベランダの柵を目一杯飛び越えた。


落ちている間に思考が巡った。

今日で私の周りの人がこんなにもたくさん死んでいるのは、

私が死んだら悲しむ人がいなくなるようにするためだったと。

『楽に消える』というのは心を楽にして逝く、ということだったと。


自意識過剰かもしれないが、悲しんでくれそうな人はいたんだ。

まだ、生きててよかったのかもしれない。あの神社に行くまでは。



マンションの下に花火のような軽快な重低音とともに赤黒いバラが咲き誇った。



ーーーーーーーーーーーー願ったら最後。本当にあなたの願いはそれでいいですか?



どうでしたでしょうか。

もしよければ、こうしたらもっと面白くなる、ここがよかったなどのご感想をお待ちしております_:(´ཀ`」 ∠):

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