第07話:ギリギリの攻撃
放課後。琴葉と一緒に二人で帰った。琴葉の家の前(=5歩で俺の家の前)で別れる際、嬉しそうに手を振る姿が見えた。
家に着くと、姉ちゃんと風香の靴が既に玄関にあるのが見えた。俺が自分の部屋へ向かおうとすると、リビングから姉ちゃんが顔を出した。
「たくみんおかえりー」
「ただいま姉ちゃん。風香は?」
「部屋でお勉強中」
「そうか」
「ねぇ。今ちょっといい?」
「え?」
「私の部屋で、話したいことがあるのー」
「わかった」
そう言われ、俺はとりあえず姉ちゃんの部屋へと足を運んだ。
姉ちゃんが自分の椅子に腰掛けた。
「あー、そっか! たくみん座るとこないじゃん」
おめーの席ねぇから。そんなことを言いたいのか? あ、いや、冗談です。
「床に座っていいなら、俺は別に構わないけど……」
「いやいや、それは……あ、じゃあたくみん、私のベッドの上座っていいよー」
「そうか」
そう言われ、ベッドの上にフワリとお尻を落とした。うわっ。なんだ。凄くいい匂いがする。ヤバい。
「んでさ……」
「え!? あー。そういや話すことがあるんだっけ?」
「うん。あのさ、たくみんって、彼女いるの?」
彼女? うーん。琴葉は彼女と言えるか? そりゃー、あの時はカッコつけて「俺のもの」とか言っちゃったけど。
「いやまあそれは……」
「いないんだね!」
「えっあの……」
「じゃあさ、私と付き合ってよ!」
は? なにか聞き間違えたかな? 確認のため、問い直してみる。
「なんて言った?」
「私と付き合ってよ!」
えーと。整理しようか。俺の聞き間違いではなさそうだ。とすると、うーん。ますますどういうことだ?
「ちょっと待って、どういうこと!?」
「何言ってんのたくみん、そのままの意味だよー」
こっちが「何言ってんの」と言いたいわ!
「ちょ、急すぎるよ!」
「え? あー、そうか、急すぎるか」
「そうだよ。こういうのはまず、ある程度の時間を共に過ごして、それから一緒に色々な経験をしてからだって!」
「そうなの? じゃあ、経験してみる?」
そう言って、姉ちゃんはベッドの上に座っている俺を押し倒して、上から重なってきた。
「男の子はこういうのが好きなんでしょ?」
まずい。非常にまずい。このままだと収拾がつかなくなってしまう。
押し付けられた胸の柔らかさを楽しむ時間を惜しみ、俺は咄嗟に姉ちゃんを跳ね除けた。
「もう! どうしたの!」
どぉぉしてさっきから、こっちが言いたいセリフを先に言ってしまうのーー! ワザとか? ワザとだろ。
「おかしいだろ姉ちゃん! 特に順番が!」
「でも、私はたくみんともっと仲良くなりたいの!」
「それは、恋人としてか?」
「もちろんだよー」
ここで、俺によからぬ考えが浮かんだ。
「(ヤバいよー。ちょっとめちゃくちゃだけど、やっぱり姉ちゃんって可愛いな。胸も大きいし。まあたしかに琴葉は大切だけど、ちょっとくらいなら……)」
イエス! 二股!
「わかった。じゃあ、手始めに今度の休みの日に……」
「デート!?」
「……え? ああ、そうだな。そういうことだな」
問題ないはず。琴葉は、今度の休みは家族でどっかに行くって言ってたし。それに見つかっても、俺たちは姉弟だ。デートなんかじゃないということにすればいい。
さて、この軽い気持ちの揺れがあんな大きな問題を起こすことなど、この頃の俺は考えもしなかった。
お読みいただき、ありがとうございました。ほんのちょっとでも面白いと思っていただけたら、
・ブックマーク(スマホ左下,PC右下)
・評価(広告の下)
・感想(評価の下)
を、よろしくお願いします!
感想に関しては、「良い点」はもちろん「気になる点」「一言」でもぜひ。