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第04話:ギリギリの友達

 昼休みが終わり、午後の授業も終わった。俺は帰りのホームルームが終わった後、理科室へと向かった。


 「やあ佐々木さん」

 「待ってた、拓海君!」


 実は、俺は理科が好きなのだ。中でも天文学に関して興味を持っている。


 ある日、ふと俺が教室で「それ」関連の本を読んでいると、佐々木さんが話しかけてきた。


 「あの、拓海君でしたっけ? その本って……」


 そう言われ、俺は表紙を見せた。


 「天文学、好きなんですか?」

 「まあね」

 「その……実はあの、好きなんです!」

 「え?」

 「私もそういうの好きなんです!」

 「あー。そういうことね」

 「よければ貸そうか? もう読み終わる頃だし」

 「いいんですか!? ありがとうございます!」


 さっきまでお(しと)やかだった佐々木さんが、急にハイテンションになった。


 「そんなにはしゃがなくても。これくらいいいよ」

 「でも、嬉しいんです。こうして誰かとお話できること。ほら、理科って割とみんなから難しいって言われがちじゃないですか? とはいえ、ただ単に理系ってだけならそれなりにそういう人はいます。けど、天文学に興味がある人ってなると中々いないんですよね。それにそもそも、私ってこんな性格だからあまり友達とかいませんし」

 「そうか。それでそんなに嬉しそうなのか。じゃあこれからは、俺たち天文学友達だね」

 「友達!?」

 「ああ。そうだろ?」

 「いいんですか!?」

 「全然いいよ。でも、一つ約束してほしいんだ」

 「約束?」

 「友達になったからには、敬語はナシな?」

 「わかりま……わかった」

 「よし」

 「ではあの、友達になった拓海君に、さっそく頼みたいのですが……じゃなくて、頼みたい」

 「なに?」

 「今度の月曜日、放課後理科室で色々と話さない?」

 「いいよ。でも、何について話すの?」

 「前、理科室で借りた資料があって、ほらこれ。軽く目を通しておいてほしい。せっかくなら、返す前に拓海君とこれについて話したいなって思って。……ダメかな?」

 「ううん。全然いいよ。じゃあ、月曜日理科室でね?」

 「うん!」


 というわけで、俺は理科室に向かったのだ。


 「それで拓海君」


 佐々木さんは静かに、でも笑顔で話し始めた。


 「ああ。こないだの資料ね。俺が気になったのはこの位置の星座が……」

 「あー、えっと。それもそうなんだけど。その前に、一つ頼みたいことがあるの」

 「なに?」

 「私のこと、理奈ってよんでくれない?」

 「え。そんな急に」

 「この前拓海君言ったでしょ? 友達なんだから私に敬語で話すようにって。だから、これは私からのお願い」

 「……わかったよ、理奈」

 「ありがとう! 拓海君」

 「俺は君付けなの?」

 「それはいい」


 静かだが、確実に顔を赤くしている。


 「……そ、それじゃ、元の話に戻ろうか。この位置の星座だけど……」


 すると次の瞬間、俺に衝撃が走った。理奈が、別人かのごとく突然早口で喋り始めた。


 「はくちょう座α星デネブ、わし座α星アルタイル、こと座α星ベガは夏の大三角として有名だけど、七夕の時期の一更はまだ夏の大三角は昇ったばかりで、あと日本は温暖湿潤気候に当たり梅雨があるから曇や雨の日が多くて、よく見えないんだよね。旧七夕や月遅れの七夕に当たる8月上旬の方がよく見える。さらに、9月になると天の川も見ることもできるはずなんだけど、やっぱり街の灯りが明るすぎて見えないんだよね」

 「……ちょ、理奈?」

 「それからね、それからね……」

 「ちょちょちょちょちょ、理奈? 大丈夫?」

 「……ハッ!?」

 「息する間もないくらいのスピードで話してたけど?」

 「……あ、その、ごめん。私、夢中になるとつい……」

 「いや、いいよ。それに、すごく楽しそうだったし」

 「え?」

 「こんなに楽しく話してくれる人がいて、俺も嬉しいよ」

 「ほんと!?」

 「ああ。それよりごめん、(さえぎ)っちゃって。続けて」

 「あ、うん!」


 こうして、俺はちょっと変わった生徒と、有意義な時間を過ごした。

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