第03話:ギリギリの説明
次の日。週明けの月曜日なので当然学校に行くのだが、今までとだいぶ違う。姉ちゃんと風香は、同じ高校なら一緒に登校しようということになったのだ。よって、俺は朝から隣に美少女が二人という状況になった。
「(あー。琴葉にどうやって説明しよ……)」
そう思った矢先に、玄関を出て学校に向かおうとしたら、いた。琴葉が、いた。
「……よ、よう」
「……拓海あなた、その状況でよく『よう』とか何気ない挨拶できるわね」
琴葉は、俺にはそんな沢山友達がいるわけでないことを承知している。ゆえに、この状況に困惑していた。だが、俺だって二人と会って日が浅いんだ。ここでおかしな行動をとっても、勘弁してくれ。
「まあその、なんだ。これは偶然の連続ってやつ?」
「入学式の日にバナナの皮で滑って転んで意識失う以上の偶然がどこにあるってゆーのよ!?」
「まあまあ二人ともー。ケンカはよそうよー」
姉ちゃんが口を挟んだ。全く、誰が原因でこうなっていると思ってるんだ。
その後、カクカクシカジカした。関係ない話だが、もうこの「カクカクシカジカする」って言葉を動詞にしようぜ。一連の流れの説明が楽だから。
「……と、いうわけなんだ」
「フーン。まあ、大体はわかったわ。とりあえず、いつまでもここに居ては遅刻するわ。学校に向かいましょう。だけど、これは拓海と二人で話す必要がありそうね。今日の昼休み、大丈夫よね?」
「あ、大丈夫……だよ?」
なんだ。なにかマズイことを言われそうだ。そんな不安を抱えながら、学校に付いた。
「じゃ、たくみん、また放課後ねー」
「あとでね、お兄ちゃん」
姉ちゃんと風香はそれぞれの教室へ向かった。俺と琴葉も自分達の教室に入った。
「おはよう、拓海君」
真っ先にそう話しかけてきたのは、最近仲良くなった女子生徒だった。
佐々木 理奈。黒く長い髪の毛で、メガネをかけている。身長は、160cmくらい。
「おはよう」
「そうそう。先週貸してくれた本、すごく面白かった!」
「そうか。それはよかった」
「またオススメがあったら教えてほしい」
「そうか。じゃあ明日持ってくるよ」
「ありがとう!」
朝のホームルームが始まり、その後はいつも通り授業を受けた。そして、昼休みになった。俺は琴葉に呼び出され、誰もいない校舎裏へと足を運んだ。
「……で? 結局拓海は、あの姉妹のどっちかが好きなの?」
「え!? いや別にそういうのはないよ」
「じゃあ最近仲良さそうな佐々木さんとは何かあったんじゃないの?」
「そっちも何もないってば」
「ほんとにー?」
「な、なんだよ。第一、もし仮に俺が他の女子のことを好きになったって、琴葉には関係ないだろ」
「……それは、そうなんだけど。その……なんというか」
「なんだよ?」
「いやー。なんでもないなんでもない。でも、もし何かあったら私に相談してね」
「ああ。そりゃ、そうさせてもらうよ」
「うん」
「……えーと。話はそれだけ?」
「まあ。そうよ」
「あ、そう」
何か意味ありげだな。
と、この時少し思ってしまったことがある。というのも、俺の頭の中で一つの仮説が生じたのだ。自意識過剰なのは十分承知している。だが、それがどれだけおかしな事でも、どうか馬鹿なヤツだと思わないでほしい。俺はこの時、あの違和感を解決する解釈を他に持っていなかった。
琴葉ってもしかして、俺の事好きなのか?
自分で想像してしまったことに、直後に自身で恥ずかしがる。なんと言ういい加減な。ふう。冗談も休み休みにしないとな。
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