第一話 青色と海色の邂逅
青が煌めく世界――彩環鉱山の地下、『天青の間』。
巨大な青い結晶が夜の海のように静かに光を放ち、張りつめた空気だけが広がっていた。
七歳とは思えぬ落ち着きをまとい、アリヴィアは足音すら立てぬよう慎重に、その場へと踏み入る。
体の奥に潜む期待と不安が胸をざわめかせ、手足の先までひりつくように震わせていた。
その奥――水晶の影に、一人の少女が佇んでいた。
白銀にも見える瑠璃の髪が鉱道を抜ける微風にさらりと揺れる。
背筋はまっすぐに伸び、眼差しは透き通るように澄んでいる。
幼さを超えた気配に、アリヴィアの心臓の鼓動が不意に早くなる。
胸が締めつけられるような重圧に息が止まりそうになる。
「……誰?」
アリヴィアの海色の瞳に映る少女が問う。
その一言が、静かな空間にしんと響き、緊迫した空気をわずかに震わせた。
アリヴィアは一呼吸置き、胸の鼓動を整え、震えを隠すように声を落とす。
「私はアリヴィエール・リアネル。中央から来た使者」
「中央の……。私は、ミスティ・アース・ジュエル。この場所を守る者。親しい人はわたしのことを “ミスティア ”と呼ぶ」
少女は小さく瞬き、じっと見据える。
青い瞳の奥には、計り知れぬ力と淡い不安――微かな揺らぎと警戒が交錯していた。
その深さは、結晶の光さえ霞ませるほど澄んでいる。
「……やっぱり」
思わず漏れた言葉に、アリヴィアの胸が波打ち、体の芯までじんわりと熱が広がる。
不安と期待が混ざり合う複雑な感情――それでも、口元には自然に笑みが浮かんでいた。
「…………」
長い沈黙。
ミスティアの瞳に探りの色が灯る。
拒絶ではない――ただ、予想外に揺さぶられた戸惑いの色。
好奇心と警戒がわずかに混ざり合い、二人の間に張りつめた静けさが生まれる。
初めて互いの名を交わした二人。
互いの存在を強く意識しながらも、言葉はそれ以上交わらない。
交差する想いが、言葉にならず心の奥で響き合う。
やがて案内役としての役目を果たすミスティアに導かれ、アリヴィアは鉱山を後にした。
冷たい床の感触、湿った空気、背後に漂う微かな気配。
そのすべてがアリヴィアの胸の高鳴りを際立たせ、彼女はその残響を抱きしめながら歩みを進めていった。




