いざ、セイントルミズへ
アリヴィアの計らいを受け入れてセイントルミズに拠点を移した私とニア。
新しい生活を始めた私達は、いろいろとあってお姉ちゃんの働く『カフェ・スウィート』でメイドとして働くこととなった。
カフェでの仕事は、シフォン国が関係することや自身が必要とするときに、その席を自由に外して良いことになっている。
カフェ・スウィートの店長とアリヴィアは、仕事上の繋がりがあって旧知の仲だそうで、そのことも幸いして特別な配慮をしてくれているそう。
シャルロットの拠点については、アリヴィアからの提案通り残すことになった。西支部にも嘱託扱いで在籍を続けている――。
アリヴィアとの壮絶な戦いの後、私はリアンとも衝撃の再会を果たした。
天真爛漫で底抜けに優しかったあの日のリアンはもういない。
突きつけられた現実。それは……、感情を失ったまま生きる姿。
正に、心が壊れた屍そのものだった。
シフォンの光がアリヴィアだとすれば、その闇を引き受け、アリヴィアの立場を純白に保つことがリアンの役目。残酷の使者として、その壊れた心で無慈悲な粛清の執行を行う。
光を輝かせる為にだけ存在する無常の触媒に成り果ててしまった。
目下の現実に心を痛めるアリヴィア。
そんなアリヴィアからリアンの心を取り戻す手伝いをして欲しいと私とニアは依頼を受けるのだった。
アリヴィアの想いは私の想い。
私とニアは、アリヴィアからの依頼を二つ返事で引き受けた。
失った心、残っているかさえ分からないリアンの記憶。取り戻すことは絶望的に困難。
私の剥奪された夢のように二度と元には戻らないかもしれない。
それでも私達は、無に近い可能性に賭ける道を選んだ。
僅かな希望、それはアリヴィアが、科学研究都市ティラミスの研究者、ストローベリー博士が記憶に携わる研究をしているという情報を掴んでいたこと。
ティラミスは、南部大陸、学術国家ミルフィーユの首都。世界有数の科学機関と、その傘下の学校機関が集う都市。
ティラミス来訪は、魔導研究者を志す私のためにも有益になる。
そんなこんなで、前途多難が待ち受けているだろう私達の道は、このセイントルミズから新たな始まりを迎えた。
――と、思っていた矢先、その入口から波乱が待ち構えていようとは……。
第二部 ティラミス編 プロローグでした。
いよいよ次から本編が始まります。
ラクラス達の新たな冒険をお楽しみください。
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