第三十話 夢(エピローグ)
この世界、惑星スイーツには、大いなる大地が連なり、そこには多くの生命が育まれている。
人々は、何の変哲もない在りふれた日常の中でちっぽけな変化を創出しながら、今日も世界に新しい物語を紡いでいる。
この星で生を受けた全ての存在には、特殊な力が生まれながらに宿ることが古の時代より約束されてきた。
人々はこの定めに、
『――運命』
という名を与えた――。
自然や大気に宿る力の源を属性という。個々に与えられた特殊な力が、他人と違う個性を持つのは、この属性が影響するためである。
この固有の技能と属性の複合体こそが、約束された運命の正体なのである。
属性の扱いに優れる者は、ひとつの属性から異なる効果の複合体を幾つも生成することができる。今でこそ一般的に共通認識されている言語、多重能力の語源もここに由来する。
長きに渡る歴史の中、人々が宿す運命の力は、いつしか『魔法』と呼ばれるようになった。
そして、各々が宿す定められた属性についても、この世界に於いて『運命属性』と命名された。
人々は、魔法や属性を研究し、発達させた。そして、それらをあらゆる分野で応用し、現実と向き合いながら悠久の時を刻んできた。
その過程の中では、実験の名目で罪のない命が奪われたり、オーバーテクノロジーを得た国が戦争を起こし悪夢をもたらしたりするなど、破壊と創造が繰り返された。
その結果、現在の高度な文明と豊かな暮らし、束の間の平和が創り上げられたわけであるが、秩序と混沌の正しいバランスなんて誰も知り得ないことだけは確かである。
そして今日も世界は、どのような事情にも全く無関心で、何事もなかったかのように変わらぬ日常を、ただ淡々と静かに人々に与え続けている。
この世界は、謎に満ち溢れている。
例え、『科学』、『魔術』、『芸術』などのありとあらゆる分野の英知を集めたとしても、簡単には解くことが出来ないであろう謎に。
人々は、その未知の存在を、『奇跡』、『夢』、『希望』、『神秘』、『理想』などと呼び、それらを胸の内に秘め、心の糧にして、日々に活力を見出している。
第一部 夢探し編 完結です。
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