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愛してます

作者: 安岡 憙弘

愛しています

                        安岡 憙弘よしひろ


     <1>


 わたしは松林のなかを彼女とあるいていた。わたしは彼女にこうはなしかけた。「あなたはわたしを癒してくれます。あなたのしてくれたドイツの家庭料理のはなしや伝統工芸品の木ぼりのおもちゃのはなしがわたしにはわすれられません。あなたはとてもよい環境でおそだちになったのですね。うらやましくおもいます。距離はとおいですけれどもわたくしはいつでもあなたの祖国にあこがれをもっておりました。

 あなたのそのおちついたふんいきはどこからきたのでしょうか。子供の様に純真でこうしてこの林の中を歩いているだけでも森や木や小鳥や虫たちまでもがあなたをしたいあなたと調和し平和であろうとつとめているのが私にはわかります。大げさにきこえるかもしれませんけどそうでなければこんなにあなたのことをしりたいとはおもわなかったとおもいます。あなたとしりあえてほんとうによかったです。

 あの時あなたが一杯のワイングラスを私にさしだしてくれなかったならばこうして2人であるいていることもなかったでしょう。

 ”Ich liebe dich.”・・・わたしはそう言って松林におちていたまつぼっくりをあしでけとばし彼女のこたえをじっとまった。

          



  <2>


 「あなたは非常にうつくしい声をもっていますね。」とその時私は彼女に言った。「ロシア人女性はみなマトリョーシカのようにかわいらしいのですか。」とわたしはそんなはずかしい冗談まで口にした・・・

 わたしは彼女をアパートまでおくりとどける途中だった。夜道のひとりあるきをさせるには彼女はあまりにも可憐でたよりなげだった。しかし彼女にはつよい面もあった。瞳であった。彼女の瞳はけっして人形のそれではなくつよい意志をもった自立した人間のそれであった。わたしはその矛盾に興味をもち、しだいに彼女にひかれていることにきづいた。わたしはその秘密をさぐろうと彼女に次のような質問をした。「あなたはいったいどうしてそんなに強く生きられるのですか。わたしにはあなたのことがどうしてもわかりません。すると彼女はたどたどしい日本語で「二ホンハロシアトオナジクライウツクシイクニデス」とそう返事をした。彼女がアパートの階段のぼりきるまで私は見おくった。「おやすみなさい。 Я дюбдю вас(ヤ― リュブリュー ヴァス.)そんな言葉がなぜかしら口をついてでてきた。彼女はふり返って私の目を不思議そうに見つめた。


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