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後編

 ここしばらくは本当に穏やかで静かな毎日を送っていたんだ。こんな毎日だと本当によかったのだが。嵐の前というものは静かである、というのが決まりのようだからな。


 バタバタバタッ


「こ、こら。殿下は仕事中だ。入ってはならぬ……ごふっ」

「いくらレディ?とはいえ、約束がなければ……ぐふっ」


 ドゴォン、ドゴォン


「殿下、お下がりください」

「殿下、アレックスの後ろに」


 慌てて二人の後ろに避難するが、なんと恐ろしい。ちょっと油断すると色んなところから水が……。


「殿下、ベスですわ。あ、いえ、エリザベス・ホワイトですわ。入りますわね」


 バキィ

 ドゴオォォォォン


 扉はご、ごり……エリザベス嬢の膂力により沈められ、外には抜身の剣を持った衛兵が沈んでいた……。


「殿下。申し訳ございません。このような無様な訪問お許し下さいませ」


 華麗なカーテシーでの挨拶は本当に美しい。見事ではあるが、やはりゴリラはゴリラだ。


「わ、私、私、殿下にこ、婚約者ができたと聞きましたわ。……バーバラ・オルティース様と……。とても公明正大な方で美しい、身分も貴方様に相応しい……」


 わっと……エリザベス嬢が泣き出してしまった。前へ出ようとするがアレックスに止められてしまった。


「殿下、獣人は感情が昂っていると何をするかわかりません」


 アレックスが前に出ているが完全に庇われる形となった。エリザベス嬢の泣く姿は初めて見たが……きついな……。


「お……私だって剣の心得くらいはある!庇われてばかりでは……」

「私の仕事は、貴方をまもることです。後ろから出ないように」


 か、かっこいい……。惚れ直してしまいそうではないか!


「わ、私、貴方様を忘れようと努めてきましたが、無理でした。優しげな眼差し、考えているようであまり考えずに行動するところ、真剣にずれていることを言ったり、空気を読まなかったり……。私が支えなくてはいけないと思っておりました」


 クリスとアレックスが目配せをした。


「……どうする?」

「どうするも何も……」

「ホワイト嬢は殿下の正体を知っているぞ?」

「クリス様、殿下の意を汲んで下さい」

「意に沿わなくても殿下のためになるのなら何でもするさ。美人は三日で飽きるが……というだろう?」

「………不敬ですよ、クリス様」

「…………なんだ?身分、身分いうやつが貴族に逆らうのか?」


 アレックスとクリスの二人が睨み合い、一触触発の状態だった。


「おい、仲間割れしている時じゃないだろう!」


 私の言葉も届かず、アレックスとクリスの二人が睨み合いが続いている。


「殿下、これは殿下のための戦いです」

「口出し無用」


 それぞれに気迫を感じ、口出しできる状態ではなかった。


「ですから、私殿下と決闘致しまして、殿下が私に勝って下されば忘れられると思うんです…………」

「は?え?………何?」


 人間の私がごりらのエリザベス嬢に勝てと!?

 無理だろ………。


「私、こう見えても強くて、時々冒険者の方々のお手伝いをちょっとしたり……。おてんばだと思わないで下さいね。ちょっとしたリフレッシュなのですから。……私を決闘で打ち倒していただけたら、殿下には私は必要ないと思うことができます。そして次を向けることができるはずなのです………」

「そうか……。私は剣の腕に少々自信があるが………」


 考えろ!考えるんだ!!卑怯と、臆病となじられようが勝てば良いのだ!勝てば!!


「悲しいことだが、私は実戦に乏しい。貴方とは実力差がありすぎる。……我が近衛も戦力として参加してもいいだろうか」


 為政者としては時に堂々と相手と交渉せねばならない。卑怯者結構、臆病者結構。勝てば良いのだ。勝てば。


「3人でよろしいのですか?」

「………良い」

「では、早速参りましょう」

「う、うむ?アレックス、クリスついて来い」


 あの二人は相変わらず睨み合って……。全くこの非常時に。ついてくる分まだ良いか。


「……私冒険者組合でお手伝いさせていだだくと、皆様に大変喜ばれるんです」

「それはたいそうな活躍をされたからではないんですか?」

「コボルドの大群を打ち倒したり、リザードンの群れを壊滅したり……大したことをした覚えはありませんが……」

「……そうか」

「以前、私の力は騎士団一個中隊ほどの実力があるといわれましたが、近衛の方々に比べると大したことはないでしょう」

「…………そうか」


 一個中隊で約百人の部隊となる。その時の参加する人数によっては百人を切ったり、倍以上の人数になったりもする。


 あれか、このごりら、とうとう実力に訴えることにしたのか。そうなのか……。私は人間だから、勝ちは無理だな。あ、そうだ。負けたら逃げよう。逃げて廃嫡にでもなれば諦めるだろう。後継も優秀な弟妹達もいるから大丈夫だろう。私はなんて頭がいいんだ。



***



 エリザベス嬢は準備の良いことに騎士達の修練場の一つを借りていた。数日前に。しかも着替えまでしっかり準備しており、乗馬服のような動きやすい服装に着替えてきていた。


 何故か客席にはちらほらと観客が見える。多くは騎士だが、バーバラ嬢の姿も見える。このごりら。大人しくしていると思ったら、余計なことしかしない。


 作為を感じるが従ってしまった以上は仕方ない。ここで怖気ずくのもしゃくに触るしな。


「……殿下は浅はかという言葉をしっておりますか?」


 クリスが良い笑顔で言っているが、ここは気にしないことにしよう。


「……殿下、軽率でございます」


 アレックスまで。聞こえなかったことにしよう。


「………お前たちは仲直りしたのか?」

「何のことやら……」

「わかりません」


 仲直りはしていないようだ。


 エリザベス嬢は手に……随分とごついナックルをはめていた。一殴りで人間の頭が粉砕できそうな代物だった。


「私、ローザ様ほどではございませんが、力には自信がございます」

「決闘といいましたが、その内容はこちらで決めても良かったでしょうか?」

「まあ、クリス様。純粋な戦いだとこちらに分がございますからね。一勝したら、ということに致しましょう。私が勝ちましたら殿下、私を婚約者にして下さい。殿下が勝ちましたら潔く身を引きましょう」


 こ、このごりら……。さっきの殊勝な態度はどこいったんだ……。自信満々だ。勝つ気だな。


「でしたら、時間制限を設けます。制限時間は四半刻。それまでに殿下を捕まえたら貴方の勝ち、捕まらなかったらこちらの勝ち、いかがですか?」

「鬼ごっこみたいで、楽しそうですわね」


 アレックスが側に来て、エリザベス嬢の視界から私を隠すような立ち位置にいる。


「では、目を隠して十を数えて下さい。その間に逃げます。我々は逃げるために手段を選びません。攻撃もします。良いですか?」

「良いですわ」


 エリザベス嬢は目を閉じ数を数え始めた。逃げようと腰を上げるが、アレックスに抑えられ座らされた。


「殿下、良いですか。話してはいけません。動いてもなりません。息も静かにゆっくりと。私が合図をするまで息だけしかしてはいけません」


 口を手で押さえ、頭を上下に振り、わかったと合図をした。


「クリス様、準備はできました」

「おーぅ。じゃあ、お仕置きの時間だな」

「ご令嬢にあまり酷いことはしませんように」


 アレックスが私の肩に手を置く。


「に、逃げなくてもいいのか?」

「しーっ………大丈夫です。先程のこと覚えてますね」


 アレックスの細い指が唇に当たる。頭が色々と沸きそうになるが、抑えて頷く。


「じゅーう。もういいでしょうか?」


 エリザベス嬢が目を開けて辺りをみるが、こちらには気付いていないようだ。すぐ近くにいるのに。驚いてアレックスの顔を見るが、アレックスは悪戯が成功したような表情をするばかりだった。


「あら?逃げ足が早いですわね……。でもこんなところでは隠れるところなんて僅かしかありませんからね。すぐに見つけ出しますわ、殿下」

「それはどうでしょう、エリザベス嬢」


 抜身の剣をラフなスタイルで持ちながら、クリスがエリザベス嬢に話しかけている。


「私を倒さねば殿下は見つかりませんよ」

「まあ、まあ。それでは倒さねばなりませんね」


 拳を打ち付けてから、右のパンチをクリスに向けて全力で打ち込んでいく。それを流れるようにかわし、剣をエリザベス嬢の脇腹に叩き込もうとするが、水平にふった剣の刀身にエリザベス嬢が拳を打ち込み、綺麗に真っ二つになった。


「おお!?」

「まあ、私のか弱い力に耐えられないなんて………。近衛の持つ剣は大丈夫なんでしょうか?」


 ダンスを踊るかのようにステップを踏み、クリスに迫る。


「は、迫力あるなぁ……」

「ふふ、耐えて下さいね」


 そういうと、クリスの腹部を狙って拳を打ち込んできた。


「ぐふっ」


 苦悶の表情を浮かべ膝をつく。そのまま地面に倒れ伏してしまった。


「まあ、私の一撃で死なないなんて相当なものね。まあ、いいでしょう」


 アレックスを見るが、アレックスは落ち着いたまま表情を崩していなかった。


「でーんーか。今、貴方の花嫁が迎えにいきますわね」


 鼻歌混じりで決闘場内で人が隠れそうなところを探し回る、というよりも破壊して回っていた。隠れるところが全て破壊尽くした後、エリザベス嬢は倒れているクリスの元へやってきた。


「ねえ、あの近衛の女騎士が殿下を隠したのね。どこに隠れているのかしら?何の匂いもしないのよ」


 情け容赦なく、思いっきり足を後ろへ振り上げ、勢いそのままで腹部を蹴り上げる。クリスの身体はボールのように転がり、こちらから離れてしまった。さらにエリザベス嬢の逞しい身体に隠れて何も見えなくなった。


 アレックスはただだまって見ているだけで、もどかしくなってしまった。袖を引っ張ってみるが、アレックスは首を振るだけだった。もどかしいが、先程アレックスに言われたことを忘れる私ではない。私の将来のために、クリスには殉じてもらうしかない。


「あの女騎士、庶民の出なのよね。それなのに殿下の身を任せるだなんて烏滸がましい。実力不相応だからかしら?殿下と一緒に逃亡したのよね?近衛として不名誉極まりないわ。まあ、女性だから剣以外にも殿下の慰め役でもしているのかしら。私、これでも心が広いから側室の一人や二人、性別だって問わないわ。だから仲良く出てきなさい」


 アレックスは必死になって私を止めた。だが、私の侮辱なら幾らでも受けるが、アレックスへの侮辱だけは辛抱できなかった。


「……エリザベス嬢、今の言葉を取り消すんだ」

「まあ、殿下。すぐそこにいらしたのね」

「いくら私でも許されない言葉がある。自分が大切に思っている者のことを悪様にいい、その名誉を傷つけることは許さん」

「ふふ、殿下。可愛いですわね。私そんな殿下もお慕いしておりますわ」

「アレックスに謝罪をするんだ」

「しませんわ。私、ずっと殿下のことをお慕いしてきましたわ。殿下の隣にいる女性の存在なんて羨ましくて羨ましくて憎らしいわ」


 両の拳につけたナックルをがきんっとあわせると、そこに魔法陣が一瞬立ち上がり消えた瞬間に拳に雷が纏った。


「気をつけて下さいね。痺れますよ」

「…………っ」


 クリスは動かず、アレックスの姿も見えない。私が何とかするしかない。汗をかいている手に力を入れ剣を抜く。両手で構えるが、震える足に力を入れるだけで気力が削がれてしまう。明らかな実力差だった。


「殿下、優しくしまっ…………何?」


 エリザベス嬢の足元には魔法陣が浮かび上がっていた。その魔法陣に足を取られて動けないでいた。泥濘ができており、少しずつ沈んでいるようだった。


「な、な、何、抜けないわよ!?」

「………あーようやく効いてきた」

「……貴方!気絶していたんじゃあ!?」


 そこには腹を守る鎧が木っ端微塵になり、衣類も消し飛んでしまい割れた腹筋を見せているクリスが立っていた。


「エリザベス様の一撃が凄まじくて、結界が一気に剥がれちゃいましたよ」

「……結界ですか」

「実戦ならもうちょっと多重にかけますが、通常勤務なので適当に七つほどかけてたんですけど、一発で全て持っていかれましたよ」

「寝たフリをしていたのね」

「さあ?」

「ふふっ意地悪な方ね。私をここに留めおいてどうするつもり?」

「ご家族に引き取ってもらいますよ」


 エリザベス嬢は腰付近まで地中に埋まっていた。そこにさらに魔法陣が追加され、土がダイヤモンドに変わった。


「エリザベス様なら物理的にでてきそうですから念のため。……アレックス、もういいぞ」

「はい、クリス様」


 するとアレックスが私のすぐ後ろから出てきた。こんな近くにいたなんて、全く気がつかなかった。


「エリザベス様、残念ですが負けでございます。約束通り身を引いて下さい」

「あーもう、残念だわ。私、貴方方に勝って、殿下を公私ともに支えたかったのに……」

「残念です」

「本当に。………最初からわかっていたのね」

「………修練場借りた時点でクリス様と策を練っていました。貴方様は執務室で感情的になったふりをして、こちらの様子を見ていたのは感じていました」

「感じていたのね。隠していたのに……」

「近衛ですから。舐められては困りますが、油断してもらえるように小芝居はしていたんですよ」

「まあ!近衛なのに仲違いなんて……って思っていたところから策にはまっていたのね……もうっ」


 そう言いながらも、脱出を試みるエリザベス嬢はさすがの執念である。


「殿下、良い近衛ですわね。殿下を託すには安心ですわ」

「そうか。そなたにそういってもらえると百人力だな」


 エリザベス嬢が格好いいことをいうが、地面に半ば埋もれている姿は正直無様であった。だが、なんだか今までのことを思えば、この無様な姿をみていると胸がすく思いだ。とても気分が良い!これまでの私への振る舞いを考えたらこの位したってどうって……、ん?私は王太子だから、も、もしかして不敬罪とかで適当に謹慎させとけば良かっ……あ、だめだ。これは考えたらだめだ。とりあえず忘れよう。


「どうしましょうか?」

「ホワイト家に連絡しとくかな。そのまま夜勤と交代しますね、殿下」

「ああ、わかった」


 クリスはホワイト家に連絡を取るために手続きをしに行った。貴族への連絡は貴族からしたほうが何かと角がたたないからな。


 パンパン


 手を叩くと観客席の皆がこちらを見た。


「皆の者、そして騎士団諸君。今日はこの場を借りてちょっと騒々しくしてしまったが、楽しめただろうか?」


 客席から拍手が降ってくる。


「今回のことはちょっとした戯れだ。許せよ。後はここで聞いたことは内密に頼む」


 拍手が先程より少ないのが気になるが……。こんな下らないこと言いふらすわけだいだろうからな。まあ、多めに見とくか。


 

***



「それにしてもあの決闘という名の告白は見事でした」

「ん?」


 数日後、エリザベス嬢の騒ぎも落ち着き、バーバラ嬢との婚約破棄をしよう呼び出したところだった。先日のエリザベス嬢との決闘で……告白なんてしただろうか。


「『自分が大切に思っている者のことを悪様にいい、その名誉を傷つけることは許さん』なんて、愛してる、なんていうよりも素晴らしい告白でしたわ。今、城下もその話で持ちきりでしてよ」


 バーバラ嬢が楽しく話して聞かせてくれたのはあの決闘、というよりもそこでの会話が話題になっているという。……何故そうなったのか皆目検討がつかん。あれは近衛のアレックスに対しての思いであって、決して人前でそんな告白だなんて……。したことあったかな。


「……身分を超えた恋。しかも殿下が慕っているのは、ご自分を守る近衛騎士。身分を超え、性別を超え「ごぉほっごぼっげほっ」


 な、何?性別を、性別!?何だって!?


「す、すまぬ。話の途中で……。で、性別とは?その私の相手は誰なんだ!?」

「まあ、殿下。殿下ならお分かりでしょう?そこの彼ですわ。子爵家ですわね?最近事業が軒並み成功して、領民からも慕われていると聞いておりますわ」

「……そ、そこの彼?ク、クリスのことか?」

「そうそう。私、決闘場では会話はあまり聞き取れませんでしたが、近衛のクリス様が貴方様を庇われて倒れて、その後エリザベス様とお話しされていたでしょう?皆、貴方様が慕っているクリス様が倒れたからだと口々にいっておりましたわ」

「………そうか」

 

 アレックスは自身の力で気配を最大限消していたからな。そうか範囲は客席にまで及んでいたのか?アレックスではなくクリスか……。すっかり紅茶の味が頭から吹き飛んでしまった。よくわからないが、とんでもないことになっていることだけはわかった。……アレックスは誤解しないだろうか。


「私思いますの。本心は大切だけれど、障害がある場合には、それは時に邪魔になってしまう時もありませんか?時に偽り、時にさらけ出して時を待つのです」

「……まつ」

「性別は当人達の努力次第としておいて……。身分差はなかなか当人達が思うほど、実際のところはうまくいきませんわ。やはり同じ身分になるか、それを感じないほど、二人で遠くへ行くかしないと……蟠ってしまいますわ」

「………ふむ」

「蟠りは気づかないフリをしていると、徐々に大きくなってしまいます。気付いたらとても大きくて扱いに困ってしまいます。でも大きいから捨てられないし、抱え込むしかなくなってしまいますわ。ですから、それが無くしてしまうようにお互い努力しなくてはなりません。ね、アレックス?」


 いきなり話を振られたアレックスは、きょとんとした顔をして、返答に困りこちらを見たので頷いておいた。


「……は、はい」

「殿下は大変ですわね。思い人が鈍くて」


 アレックスはよくわかっていないのだろうが、仕方がない。身分差があるからな。バーバラ嬢の言うように、この噂を利用して結婚せずに数年王様やって、後は適当な理由で退位して優秀な弟妹達に任せよう。アレックスには結婚するなといっといたしな。


「私、結婚できるかはわかりませんが、もし次があるのなら、身分に問わずその人の本質を見て色々決めたいですわね」

「バーバラ嬢なら引く手数多だろう」

「まあ、殿下。お上手ですこと」

「騎士団や近衛にはいいのがいるからな。困ったらくるが良い」

「有り難幸せですわ」


 バーバラ嬢は婚約破棄の書類にサインをし帰っていった。


「これで平穏で静かな日常に戻るな」

「殿下の尻拭いの日々ですね」

「お任せください。エリザベス嬢のお陰でさらに処理能力はアップしました」

「……私はそんなに尻拭いさせていたか?」



***



 自分で思うほど優秀ではなく、ちょっと抜けてるがどこか憎めないこの国の王太子。ただ周りには非常に優秀な人間ばかりが揃い、皆が王太子を盛り立てるため、外からはとんでもなく優秀な王様が誕生した。


 ただ、口を開くと残念な王様。数年後には弟に玉座を譲り、自分は早々に王家直轄地を譲り受け、そこへ何人かの腹心とともに移り住んだと言う。


 その一生は独身だと言うが、側にはココア色の髪の女性がいたという。時々尻に引かれ、叱られていたが仲睦まじく、生涯ともに過ごしたといわれている。



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