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過去を追いかけて
「それでお前はガツンと、、」
西尾刑事の声が11月の冷たいコンクリートの壁に囲まれた取り調べ室に響いた。
「はい、、」
そう答える斎藤京子の声はどこか自信なさげではあったが、低くはっきりとしていたものであるということは特記しておきたい。
「なるほどな、でもよ、それで死んだお前の親父さんはそれで喜んでるんかねえ。」
どこか関西弁まじりの西尾刑事の尋問はこの調子でかれこれ半時間ほど続いている。
いったい、なんて答えればいいんだ、、
斎藤京子はずっとそればかり考えていた。先ほどからとりあえずイエスかノーかで答えているが、どうやらこの男は自分の意図した返答でなければイエスと言うまでこんな感じなのだ。
「喜んではないですかね」
もはやなんでもいい。とりあえずイエスにしておく。後は野となれ山となれとはこのことなのかもしれない。ああ、もう嫌だなぁ、そう思った時だった。
取り調べ室のドアを叩く音がして一人の男が入ってきた。小太りの50過ぎの白髪まじりの男だ。妙なえがおを浮かべている。そして、斎藤の顔を一瞥すると一言だけ言った。
「西尾、それぐらいにしてやれ。」
その男はそれだけ言うとまたツカツカと出て行ってしまった。
「まあもうええわ、おしまい。」
11月の取り調べ室は寒かった。




