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異世界を作った私がその世界で追放された冒険者と出会い、そして真実を知る

 あらゆる世界を作りだすことのできる存在、『テラーメイカー』。

 自分達の作り出した世界の中で、脅威となる存在を排除する偉大な冒険家『大英雄』を生み出すため、日夜自分の世界のパラメーターを調整しながらテラーメイカーは人々の紡ぐ歴史を見守ってきた。


 テラーメイカーの一人、ルルナ・ミティは「剣と魔法の世界エル・ティア」を創造しし、大英雄の誕生を心待ちにしていた。

 しかし、いくら立っても大英雄は現れず、上司のディモロス・ディリストエに指摘される。

「君は県と魔法の世界に拘り過ぎ、世界に生きる人々の真実を一切見ていない」


 本来ならテラーメイカーは己の作った世界に干渉するのは、後ろ指をさされる行為だ。

 しかし、自分の作った世界の歪みと向き合う事を諭されたルルナは、エル・ティアの光景を観察する。


 そこで目にしたのは、人と魔物が戦う世界で起きていた、「冒険者が冒険者」を見捨てていた光景。

 居ても立っても居られないルルナは自ら生み出した世界へと降り立つことにした。


 素性を明かさず、大英雄誕生のため自分の作った世界の真実を知るために動くルルナ。

 冒険者たちの突然の裏切りによって死を迎えようとしている男。

 二人が出会い、辿る道は、果たして大英雄誕生に繋がっているのか。

 地表全てが氷におおわれ、神と呼ばれる存在と冒険者たちが戦いを繰り広げる世界。

 科学文明が発達しすぎ元あった世界から自然を取り戻すためにに知識人達が旅をする世界。

 世界を覆い尽くす闇を払うため、魔物と呼ばれる邪悪な存在と戦い続ける世界。


 世界は多数に。無限に。星の数だけ存在する。


 ──私達、テラーメーカーが作り出した世界数だけ。



 私達はテラーメーカー。世界を根源から生み出せる存在。

 もしかして、創造の神とか大層な名前を付けられて、生み出した世界では崇められているかもしれない。

 (でも『世界を想像した神』とテラーメイカーそっくりの姿の存在が信仰対象になっていると、力量不足だって他のテラーメーカーに馬鹿にされるんですけどね)

 全てを作り出すことが出来る私達の目的は、唯一私達が作り出せない『大英雄』を自分の世界から生み出すこと。

 

 大英雄。

 邪悪なるドラゴンを打ち倒し、100年たっても尚吟遊詩人にその戦いを語られる者。

 世界が『作られてから』存在した不治の病を治す薬を生み出した者。

 自分達の作った世界の中で最も優れた功績を残した人物、大英雄。

 その存在の偉大さを見守り、彼等に祝福をそっと与える。


「というのが我々の役割である」

「……はい」

「大英雄が紡ぐ英雄譚を心行くまで目にし、耳にし、楽しむのが我々の苦労が報わる時。ところが、君の作った世界では」

 今、私の前に立っているのは長身で瘦躯、神経質な様子で明らかにこちらを見下している男性。

「……はい」

「ルルナ……君が作った『エル・ティア』で、大英雄の誕生の兆しはあったか?」

「……まだ、です」

「その『まだです』は何回目かね?」

「う……」

 100回目位のやり取りです。

 

 私ルルナがテラーメーカーとして作った世界、エル・ティア。

 空気中に漂う微量なエーテルと呼ばれる微量なエネルギーを魔石と呼ばれる石に蓄積しで火や水といった属性を持たせ、彼らが魔法と呼ぶ存在に変えることが出来る世界。

 他のテラーメーカーは蒸気や電気といった科学的な知識を作った世界で発見させているが、私は剣と魔法の世界が好きなのだ。

「正直、君の作ったエル・ティアに似た世界は俺も作った。農耕、宗教、文明……そして魔法学の発展までちゃんと彼らは体系化してくれた」

 目の前で指を折り数えながらこちらを憐れみすら感じさせる視線で、ディモロス・ディリストエ──私の上司はため息をつく。

「君の作った『魔石を産まれながらに体内に多数蓄積している魔物』の案はいいと思うよ」

「はぁ……」

「ドラゴンやらキマイラやらが色々魔物がいるのはいい。人々が倒すべき対象のバランスはとれている」

 大英雄には強い魔物を倒してもらおう。それが私の考えた大英雄、ヒーローだからだ。

「しかし、君の作ったエル・ティア。冒険に必要な外洋への進出のための技術、優れた金属類の加工技術、そして各国での解消されない軋轢。その解決は百年単位でも進んでいないよね?」

 何枚ものレポートを捲りながらディモロスさんは次々に口から矢を放ってくる。

「今度こそはっきりいおう。君の作ったエル・ティアは魔法に依存し過ぎ、他の要素に関してはぼろぼろな状態だ。そこに問題がある」

 ぐさ、ぐさ、ぐさ。ぐうの音も出ません。


 重たい空気の中、ディモロスさんは私の顔色が悪い事に流石に同情してくれたのかもしれない。

「これは他のテラーメーカーにばれたら笑い物にされるかもしれないが、いっそのこと」

「いっその事?」

「君、自分がテラーメーカーだと隠し、大英雄候補をサポートすればいいんじゃない?」


 え、え、ちょっとまって。

 それってつまり私が一から考えて生みだして、パラメータまで管理している世界に乱入しろってことなわけ?

「さ、流石にそれは……」

 直接テラーメーカーが自分の造った世界に降り立つなんていうのは、現地?の人からしてみれば『神の光臨』そのまんまなわけで、歴史が一気に変わってしまう。へっぽこのテラーメーカーとして生涯笑われ者になる。ましてや個人に干渉なんてした日には……

 テラーメーカーの歴史に残る『大バカ者』なわけでして。はは、はは……

「あのさ、もうすでに君は……一度世界の創造を中断して、研修からやり直したらどうかと話が来ている」

「うぇっ!?」

 時すでに遅しでした。

「だったらいっそのこと出来ることは全部試すべき。違うかね?」

「その通りです……はい」

「よろしい、なら話を続けよう。君がテラーメーカーとして作り出した世界、問題点は恐らくその世界に生きる人々に、生存のために理不尽な条件を突き付けたことだ」

 図星。戦うために魔法要素を作った後、正直剣の作成方法ですら人が考えてくれるであろうと放置していたのが私というテラーメーカーです。ごめんなさい。

「というわけで、まずはエル・ティアの適当な場所を視察し、世界へ降り立ってみるといい」

 ディモロスさんはテラーメーカーが創作物に干渉するための許可書にサインをする。一時的な観察であれば、これで『小時間、現地人との接触は原則認めず』可能になる。

「そして、自分の作った世界で生きる人々の真の姿を見て、大英雄の素質をある人間をサポートすればいい」

 豪華な装飾が施された椅子にディモロスさんは腰を下ろします。彼はテラーメーカーとしての実力第一主義?的な所があって、私みたいなへっぽこからしてみると怖いんであまり話したくないんですけど、流石に部下の私の不甲斐なさに最後の手を差し伸べてくれたのでしょう。

「我々テラーメーカーは、大英雄のため『乗り越えられる試練』と『目に見えない祝福』を与えるために動く」

「ルルナ・ミティ、君は少し、『世界』を勉強したまえ」


 ──こうして、私、ルルナ・ミティは「世界の創造主」から「世界の調査員」になりました。



 というのが先程までのお話。

 自分の部屋に駆け足で戻ってきた私は、早速テラーメーカー専用の『世界構成書』という本を開き、その上に水晶玉を置きました。

 世界構成書に記されているのはエル・ティアの全て。

 そして、水晶玉が映し出すのは──深い、日の差さない森林地帯。

(えっと……魔石の一大発掘地、キュエルを覆い尽くす迷宮の森よね)

 光の差さない森では体内の魔石から強力な魔法を発する魔物が跋扈し、何人もの冒険者が命を落としている。

 そして。

 

「えっ……」

 恐らく野営地が襲われ、ぼろ布と廃材に埋もれる場所に彼は倒れ込んでいた。

 

 全身にある切り傷は、恐らく風魔法による負傷の跡。

 もしかしたら魔獣に噛まれた跡もあるかもしれない。

 でも、彼の周りには治癒のために使われている白目石の欠片が全く無い。


「はっ、そうだよな……そんなことだと思ってた」


「勇者様も、治療師も、ここで俺を囮にすれば確実に森を抜けられるからな」


「用済みだ、といってくれりゃ良かったんだけどな……ははっ」

 彼が、命の灯が消えようとしている声が、響いている。


 私が作ったエル・ティア。剣と魔法で、魔物を倒す世界。

 なのに、どうして、人が人を見捨てる状況になっているの?


 私は水晶玉に手を当て、意識を集中させる。

 テラーメーカーとして、エル・ティアへの介入を始める。

 心に強く抱く思い。


 ──世界の調査、そして。

 彼を、助けてあげたい。


 そして私、ルルナ・ミティはエル・ティアの大地に降り立ちました。

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