六話~決心~
一か月空けてしまいごめんなさい。
目が覚めた、はずなのだが視界は暗いままだ。起き上がって首を回して視点を変えるが何も見えず、床に接していた後頭部や背中が妙に痛い。
意識を失う前の一番新しい記憶を掘り漁っていると徐々に思い出してきた。国王が俺に向かって盗賊と言った途端、神官衣装の人が何か喋ると俺は急な睡魔に襲われてしまったのだ。
それにしても盗賊って汚れたフード被って顔を隠して盗みとか人を襲ったりするあの盗賊だよな。俺一度も盗みとか働いた事ないんですけど…。
そんな事を思っていると目が慣れてきたのか、周辺が少し見えるようになってきた。足元を見ると寝るには明らかに少ない量の藁くずがあり、正面には鉄格子が張られていた。リカルド王が言っていた通り地下牢に閉じ込められたようだ。
かなりの時間が経ったが見張りの一人も来やしない。これはとてつもなくまずい。食料が無い。今はまだ大丈夫だがこのまま誰も来ないと考えると最悪餓死の可能性もある。
するとどこかで何かが開く音が鳴った。その後すぐに同じ音が鳴った。コツ、コツと足音が近づいてきた。俺が入っている牢屋まで誰か来るとそこで足音が止まった。
「あなたが神殿で捕らえられた人か?」
暗闇から女性の声が聞こえた。
「そうですけど。誰ですか?」
少しきつめの口調で答えて目を凝らして見るが暗すぎてはっきり見えない。
「暗すぎてよく見えないのか。すまない。
『来たれ光よ。我求むは照らせし光。【発光】』。」
彼女が急に独り言のようなことを言うと彼女と俺の間に光る球体が現れて俺が入っている牢屋が隅々まで光が行き届いた。暗闇に慣れた目にこの明るさは眩しすぎて思わず目を閉じてしまう。
「あら、ごめんなさい。少し眩しすぎたかしら。」
彼女はそう言うと不思議なことに球体の光が弱くなった。目が慣れて彼女を見ると緑髪に琥珀色の瞳の女性がいた。
「あなたは確かクロディーエの隣にいた…」
「私はニフヴェルに仕える魔法師エルメアです。あなたの名前は?」
エルメアと名乗った彼女は俺の方に顔を向けるが何故か目線がこちらに向いていないように見える。
「俺は柊夜だ。エルメアさんでしたっけ、眩しくないのか?」
エルメアは俺のいる牢屋まで暗闇の中、光無しで歩いてきてその後自分で出した光が出ても全く気にしてない様子だ。もしかしてと思って聞いてみたがすぐに答えが返ってきた。
「そのことですか。私は目が見えなくて。今は風魔法と聴覚強化で物や人の位置も表情まで分かりますよ。それと「さん」付けは不要です。私のことはエルメアと呼んでください。早速ですが、何故地下牢に閉じ込められたか分かりますか?」
「盗賊だから…としか分からないな。」
「そうですか。では簡単に説明します。そもそも盗賊とはーー。」
エルメアがこの世界の歴史を交えつつ盗賊について説明してくれた。途中俺の腹の虫が鳴ってどうしようと思ったが、エルメアがパンと水をくれた。フランスパンの形をしたパンは俺のいた世界とは違いとても柔らかった。
聞いた話の内容は壮大なものだった。
この世界は創造神、破壊神、双子の女神、平等神の五柱によって創世された。創造神がこの世界〈コアリア〉と生命を創り、平等神が全ての生命が安心して幸せに生きることができるように魔力や生命力、食物の分配、破壊神が害をなす敵や危険から〈コアリア〉と生命を守り、双子の女神が三柱の神の補佐をしていた。ある日破壊神は力が弱くなったため眠りに入った。その時を待っていたかのように平等神が女神の片割れと手を組み、世界を我が物にしようとしたらしい。平等神は創造神が創った生命力と魔力を自分に集中させ、創造神を殺そうしたが、創造神ともう一柱の女神に敗れた。創造神と女神は勝利したが、殆ど力が残っておらず平等神と片割れの女神を封印するしかいなかった。平等神は封印される時に残った力を使い、自分の力を〈コアリア〉のどこかに放った。その力を手に入れた一人が再び創造神と女神に殺そうとした。
この「神界盗り」と呼ばれた事件は過去に何度も起きてその度に創造神と女神の力は弱くなった。しかも挑んだ奴ら全員職業が盗賊だったらしい。そのため創造神は盗賊を見つけたら王族に渡すよう地上の人々に言って眠りに入った。今この国の脅威になっている魔族は平等神が放った力の一部が変異した姿だそうだ。
俺の扱いが酷いのもどうやらそのせいらしい。
エルメアは話し終えると立ち上がった。
「私はこの辺で失礼します。」
「なんでエルメアは俺に優しくするんだ?」
主であるリカルド王があれだけ嫌悪しているのだ。それなのにエルメアが優しくする理由が俺には分からなかった。
「そうですね…。シューヤさんが悪い人には思えないから…ですかね。」
「盗賊なのにか?」
「こう見えて私は人を見る目はありますよ。目は見えませんが。」
そう言うとエルメアは来た方へ戻って行った。エルメアが離れたことで光の球が消えて檻の中は再び暗闇に戻った。
(いつまでもこの檻にいる訳にはいかない、ここから出なければ。)
話を聞いた限りここにいたらその内殺される。しかし、睡魔には勝てない。固い地面で寝てたから中々疲労が取れていない。それに腹が満たされたおかげでとても眠くなった。今は寝よう。藁の上に横になるとすぐに俺は眠りについた。
強くなるのにもう少し話数が必要です。